【PCEデフレーター】米インフレは予想の範囲内でドル相場がピークアウトの兆候

本日のテーマ

昨日のNY為替市場のドル円は、
162円台の大台をうかがう強気の展開が続き、高値は161.942までじり高。

実弾介入の想定防衛ラインは162.00と思われますが、
昨日は、2024年7月につけた歴史的高値である161.945の
まさに「あと0.3pips」に迫る緊迫した局面を迎えました。

しかし、その後に発表された米国の最重要インフレ指標の結果を受けて、
市場を支配していた「過剰な利上げの恐怖」に
冷や水が浴びせられることとなります。

今回は、FRBがインフレの公式ベンチマークとする
5月PCEデフレーターの結果、
そして「新議長ウォーシュ=タカ派一辺倒」という市場の盲点を鋭く分析。

ドル高のピークアウトと迫り来る「半期末の罠」について
クオンツの視座から解説します。

上野ひでのり本日の視点

1.公式インフレ指標「PCEデフレーター」が示した現実

昨日発表された5月の米個人消費支出(PCE)デフレーターは、
市場が最も警戒していた「インフレ再燃による即時利上げ」のシナリオを
否定するものとなりました。

多くのメディアは、先行して発表される消費者物価指数(CPI)
を大きく報じますが、
FRBが公式のインフレ指標として最重要視しているのは、
PCEデフレーターです。

CPIが特定の品目(固定された買い物かご)の価格変化を追うのに対し、
PCEは消費者が価格高騰時に代替品へ切り替える行動
(例:牛肉が高いから豚肉を買う)まで加味するため、
実態に即したインフレ指標として、
FRBの数理モデルの核に据えられているからです。

注目の結果は以下の通りです。

PCEデフレーター(5月)
前年同月比
総合:4.1%(予想4.1%/前回3.8%)
コア:3.4%(予想3.4%/前回3.3%)
前月比
総合:0.4%(予想0.5%/前回0.4%)
コア:0.3%(予想0.3%/前回0.3%)

数値そのものは前年比で加速しており、
高インフレを示す内容ではあったものの、
「警戒したほどではなかった(前月比は予想を大きく上振れず安定)」
との印象が広がりました。

これを受けて金利市場は即座に反応。米国債利回りは4.363%まで低下し、
FedWatch Toolでの追加利上げ期待は一歩後退。
年内の利上げ確率は81.7%へとやや低下し、
来年の追加利上げの織り込みはフェードアウトしました。

ドル指数(DXY)も101.305までやや低下し、
過度なドル高にようやくブレーキがかかり始めています。

2.「ウォーシュ=タカ派一辺倒」という市場のミスリード

市場はいまだ「年内利上げ確率8割」という高水準に怯えていますが、
現在のマーケットは新議長ウォーシュ氏の政治的ポーズに
「過剰反応」していると言わざるを得ません。

そもそも、デビュー戦のドットチャートの数理的な中身を解剖すると、
メディアの報道がいかに粗く、ミスリードであったかが分かります。

ウォーシュ議長が自らのドット提出を拒否したため、
提出されたドットは偶数の「18個」でした。

この場合、中央値は9番目(金利据え置き)と10番目(0.25%の利上げ1回)
の平均値となり、
正確な想定利上げ回数は「0.5回」です。
これをメディアが四捨五入して「年内1回利上げへタカ派転換」
と大騒ぎしたのが幻影の正体です。

さらにドットを正確にカウントすれば、「年内利上げあり」が9人、
「利上げなし(据え置き・利下げ)」も9人であり、
FRB内部の勢力は完全にハト・タカ拮抗しています。
しかも最もドットが集まった最頻値は「金利据え置き(3.625%)」なのです。

トランプ大統領から指名されたウォーシュ氏は、
民主党などから「大統領の操り人形」と疑われるリスクを背負っています。

だからこそ、立ち上がりの信認を勝ち取るために、
声明文で「物価安定」のみを強調する政治的プロパガンダ(タカ派のフリ)を
演じる必要があったという裏の力学を読み解く必要があります。

3.タスクフォースという「仕掛け」と、金利据え置きの長期化

さらに、ウォーシュ新議長が会見でぶち上げた
「5つのタスクフォース(作業部会)」の存在こそが、
年内利上げを阻む実務的なブレーキとなります。

中銀のコミュニケーションやインフレの見方を
根本から見直すこのタスクフォースは、
秋までに成果をまとめ、年末までに活動を終了する日程です。

緊迫したインフレの暴走が起きない限り、
自らが立ち上げたこの金融政策の新たな枠組みがおおよそ固まる
「年末」よりも前に、
FRBが利上げに動くことは制度論的にあり得ないと思われます。

中東情勢の緊迫化を脱し、
WTI原油先物はついに69.05ドル(通常レンジ内)まで下落して
インフレ要因は沈静化しつつあります。

11月の中間選挙という政治的リスクを避けるためにも、
FRBの実際の行動は、
「3.50~3.75%の政策金利を、中立金利の範囲内として長期間据え置く」
というシナリオが極めて濃厚であろうと考えます。

そもそも、年内わずか0.25%あるかないかの利上げ効果だけで、
この過度なドル高トレンドを永続的に維持することは困難であり、
マクロ的にはドル高のピークアウトが近づいていると見るのが妥当です。

4.結論:6月30日に向けた「半期末リバランス」の罠を警戒せよ

マクロの大きな潮目は…

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