【162円直前の急落劇】市場が恐れるベッセントの神通力と利上げ確率の低下

本日のテーマ

昨日のNY為替市場のドル円は、最近では珍しい乱高下を演じました。

序盤は圧倒的なドル高・円安トレンドに押し上げられ、
実弾介入の防衛ラインとして意識されている162円の節目へ突撃。
高値は161.922円に達し、
2024年7月の歴史的高値である161.945円の喉元にまで迫りました。

しかし、その直後に相場は急転します。

片山財務相がベッセント米財務長官とオンライン会談を行ったと伝わるや否や、
ドル円は猛烈な戻り売りに押され、
一気に161.066円まで87.9pipsも急落しました。

今回はアルゴリズムの誤作動(なんちゃって介入)ではなく、
日米トップによる本物の政治的牽制が相場を直撃した格好です。

今回は、為替市場を取り巻く「ベッセントの神通力」の正体と、
過熱する需給の裏で静かに変化し始めた
金利市場のパワーバランスについて解説します。

上野ひでのり本日の視点

1.片山財務相ではなく「ベッセント」を恐れる市場

今回の急落劇で完全に証明されたのは、
「マーケットが本当に恐怖しているのは、
日本の通貨当局(片山財務相)ではなく、背後にいるベッセント財務長官である」
という冷徹な事実です。

日本の単独介入であれば、これまでのメルマガでも指摘した通り、
日米の圧倒的な金利差の前に「焼け石に水」として処理され、
すぐさま絶好の押し目買いボタンとしてヘッジファンドに利用されていたでしょう。

しかし、今回は「ベッセント氏が動いた」
というファクトが市場の肝を冷やしました。

トランプ政権の財政規律を守るため「米国売り(国債暴落)」
を絶対に許さないベッセント氏ですが、
同時に「行き過ぎたドル高・円安」が
米国の製造業を破壊することも防がねばならない立場です。

日米財務相の会談によって、
162円から上の領域は「ベッセント氏の合意のもと、
日本政府がいつでも容赦なく巨大な実弾ハンマーを振り下ろす領域
(ベッセント・シーリング)」であることが明確になりました。

この神通力による人為的な蓋こそが、162円手前での急落の真相です。

2.冷静さを取り戻した金利市場:原油安と利上げ確率50.9%への急落

一方で、FOMC直後の「驚愕のタカ派シフト」に怯えていた米金利市場には、
急速に冷静さが戻りつつあります。

FedWatch Toolを見ると、一時は83.1%まで暴騰していた年内利上げ確率は、
昨日時点で50.9%にまで急低下しました。

市場が我に返った最大の要因は、原油価格の急落です。
米イランの戦闘終結に向けた覚書署名を受け、
WTI原油先物は72.85ドルまで下落しました。

これは過去の通常レンジの上限レベルです。
2月下旬から5月下旬までのわずか3か月間の原油高が、
米国のインフレを永続的に再燃させるほどの破壊力を持っていたのかと、
市場が冷静に計算し直した結果でしょう。

新議長を除くFOMCの「学者委員たち」がどれほどタカ派に傾こうとも、
この原油安の環境下での追加利上げは現実的ではありません。

よほどの突発的事象がない限り、
FRBの基本路線は
「3.75~4.00%のFF金利を長期に維持する(引き締め状態キープ)」
という地点に落ち着くのが妥当でしょう。

3.限界値に達した需給と、162円「即実弾介入」のシナリオ

しかし、ファンダメンタルズの冷静さとは裏腹に、
実需と投機のマネー構造は限界を迎えています。

ドルインデックス(DXY)は101.092まで達するドル全面高の様相を呈し、
円の総合的な強さを示すJXY(円指数)は61.76まで低下。

シカゴ投機筋のIMMポジションを見ても、
円の売り越し残高は15.01万枚(約1兆8,762億円)と、
2024年7月の巨額の実弾介入直前の水準をキープしたままです。

ドル円のテクニカル的な形状は、
ボリンジャーバンドのスクイーズ(収縮)からの
「上方へのエクスパンション(大爆発)」を明確に示唆しています。

通常であれば162円を突き抜けて一気に上値を追うチャートですが、
ここに前述した「ベッセントの蓋」が覆いかぶさっているのが現在の歪みです。

今後、161.945円の歴史的高値をブレイクして162.00円に到達した瞬間に、
10兆円規模の本物の実弾介入が牙を剥くシナリオは濃厚と考えます。

この過密な地雷原において、
ここからの高値ロング(追従買い)は極めてリスクが高い選択肢
と言わざるを得ません。

4.MOVE70乗せが示唆するドル全面高の不気味な黄色信号

さらに警戒すべきは、
昨夜、債券ボラティリティを示すMOVE指数が再び「70」の大台を突破し、
米10年債利回りが4.513%まで上昇した点です。

長期金利がここまで上昇してくると…

この続きは、有料メルマガでお読みください。
「上野ひでのり本日の視点」の続き、「相場概況」「本日のおすすめトレード」の記事が掲載されています。