【シカゴ投機筋が15.2万枚へ円売り拡大】29日(水)FOMC、31日(金)日銀会合へのシナリオ

本日のテーマ

今週のドル円相場は一時163.988円を付け、
164円の節目に迫る高値圏での推移が続きました。

昨日は、中東情勢を巡る報道で一時163.644まで下押しする場面もありましたが、
基本的には「地政学リスクと原油高に伴うドル買い」が相場を下支えしています。

メディアや金融機関のアナリストは、
「日本の実質金利の低さ」や「日銀のインフレ対応の遅れ」を根拠に
「165円到達は不可避」と口を揃えます。

しかし、クオンツの視点から重要なのは、単一の方向性に賭けることではなく、
市場がどちらか片側のシナリオに傾斜しすぎているリスクを冷徹に見極めることです。

本日は、極限まで積み上がったポジションの現状と、
来週29日(水)のFOMC記者会見で想定される「2つのシナリオ」について整理します。

上野ひでのり本日の視点

1.15.2万枚の「シカゴ投機筋の円売り蓄積」と介入の力学

まず足元のポジショニングを確認しておきましょう。

7月21日(火)大引け時点のシカゴ投機筋IMMポジションにおいて、
日本円売りは15.21万枚(約1兆9,012億円)へ再拡大し、
直近の最高レベルに達しています。
市場のポジションは「円売り・ドル買い」へ極度に偏傾しています。

メディアは「介入を行っても効果はない」と報じていますが、これは半ば真実です。
過去のデータが示す通り、米国ドル自体の下落トレンドを伴わない介入は、
一時的に5円程度押し下げたとしても数週間で全戻しする
「時間稼ぎ」に過ぎないからです。

しかし、15.2万枚ものショートポジションが野放しになっている状態で、
仮に、「ドルの頭打ち(自律反転)」と「介入(実弾投下)」が重なった場合、
市場の流動性を巻き込んだ暴力的な踏み上げの逆回転(ショートカバー)
が引き起こされるテールリスクも存在します。

2.日米の「利上げ織り込み」の歪みと、29日(水)ウォーシュ発言の2シナリオ

では、その「ドルの頭打ち」はどこから来るのか。

現在の相場は、米国の金融政策に対する過剰な期待によって形成されています。
最新のデータで日米の利上げ織り込み度を比較すると、
現在の歪みがどこにあるかが明確になります。

日本(東短リサーチ):
10月会合で87%、12月会合で115%。
2027年前半までにおよそ2回の利上げを織り込み済み。

米国(FedWatch Tool):
9月会合で82.2%、12月会合で92.8%。
さらに2027年前半の追加利上げまでもが高い確率で織り込み済み。

メディアは「日銀の後手」を批判しますが、
データ上は日本側も相応の引き締めを織り込んでいます。

現在のドル高・円安の主因は、日本側の弱さではなく、
米国市場が「2027年の追加利上げ」というシナリオまで先走りして
ドルを買い上げている点にあります。

この過熱した期待に対し、
29日(水)27時半のウォーシュFRB議長記者会見では、
大きく分けて2つのシナリオが考えられます。

【シナリオA:ハト派的(利上げ過剰織り込みの剥落)】
原油高を「一時的な地政学ショック」として看過し、
インフレ抑制はQT(量的引き締め)を主軸とすると示唆するケース。
市場が勝手に織り込んだ「2027年までの追加利上げ期待」のハシゴが外され、
積み上がった15.2万枚のドル買いポジションの
急速な巻き戻し(強烈なドル安)が走るでしょう。

【シナリオB:タカ派維持(インフレファイターとしてのポーズ強調)】
「原油高やエネルギー価格の上昇による二次的影響を容認しない」とし、
市場のタカ派的な織り込みをそのまま肯定するケース。
この場合、164円台を明確に上抜け、
市場が意識する165円へのトライが現実味を帯びてきます。

3.リスク・リワードの非対称性をどう捉えるか

重要なのは、仮にウォーシュ氏がタカ派的(シナリオB)であったとしても、
164円台からの新規ドル買い・円売りは、
「すでに大半の利上げシナリオを価格に織り込み尽くしている」ため、
リスク・リワードの観点から妙味が乏しいという点です。

一方で、もしシナリオA(過剰織り込みの修正)が現実化した場合は、
15.2万枚の円売りポジションの解体が一気に進むため、
下方向への振れ幅(ボラティリティ)は非常に大きくなります。

さらに、31日(金)の日銀金融政策決定会合後に市場が、
「日銀のタカ派度が足りない」と反応して急騰(ボラティリティ・スパイク)
を起こした場面は、政府・日銀が実弾介入を打ち込みやすい特異点となります。

4.【結論】来週、ドル円相場を大きく動かす2つのドライバー

「165円到達」という合唱に流されるのではなく…

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