トルコリラより弱い日本円?閑散相場でメディアが語る的外れな妄想

本日のテーマ

本日の東京市場も、
ドル円は159円を挟んだ極めて狭いレンジで、
まさに「開店休業状態」が続いています。

相場が動かないと、どうなるか。
経済メディアが
「無理やり相場を語ろうとして、トンチンカンな記事を書き始める」
のがお約束です。

本日の日経電子版には、
まさにその典型とも言える「日経らしい記事」が2本掲載されていました。

本日は、この2つの記事を題材に、
閑散相場でメディアが陥る罠と、
現在の相場のリアルな構造について解説します。

上野ひでのり本日の視点

立ちすくむ「ミセス・ワタナベ」という幻想

1本目の記事は、
『立ちすくむミセス・ワタナベ 動く株価と対照、円相場を覆う不透明感』
というものです。

記事では、1週間以上にわたって値幅が1円にも満たない膠着相場の中で、
FXの個人投資家(通称ミセス・ワタナベ)が方向感を見失って立ちすくんでいる、
と論じています。

しかし、そもそもこの令和の時代に、
プロの機関投資家やアルゴリズム(HFT)が支配する為替市場において、
日本の個人投資家を「ミセス・ワタナベ」などと一括りにして、
相場を動かす主要プレーヤーのように語る感覚自体が化石レベルです。

彼らは「ミセス・ワタナベが動かないから相場が膠着している」
かのような見出しをつけていますが、現実の因果関係は逆です。

同記事内で紹介されているQUICKの5月外為月次調査では、
「150円を超えるような円高進行」に
市場関係者の88%が否定的な見解を示したとされています。

つまり、下方向には米国のインフレと高金利があり、
上方向には政府・財務省による為替介入警戒という分厚い蓋がある。

この「ファンダメンタルズと政治的圧力の板挟み」こそが、
相場を膠着させている真犯人であり、
個人投資家のマインドなどは関係ありません。

トルコリラより弱い「最弱通貨・円」という詭弁

さらに酷いのが2本目の記事です。

『日本円、「最弱」トルコに見劣り 購買力の低下に原油高が拍車』
という衝撃的な見出しです。

米国のシンクタンクの研究者がX(旧Twitter)で
「実質実効為替レートで、ついに日本円がトルコリラを下回った」
と指摘したことを取り上げ、
円の信認低下や、高市政権の積極財政による
「日本売り」の危機を煽っています。

これもプロから見れば、完全に統計の「数字遊び(詭弁)」です。
「実質実効為替レート」という指標は、
相手国との「インフレ率(物価上昇率)の差」を計算式に組み込みます。

トルコのように、中央銀行が機能不全に陥り、
異常な高インフレが続いている国の通貨は、
この計算式に当てはめると、国内物価の上昇分がプラスに働いてしまい、
見かけ上の「実質化されたレート」が強制的に上振れしやすい。
よって、通貨の信認比較にそのまま使うと強いミスリードが生じます。

「数字の計算上、トルコリラより下になったから日本円が世界最弱だ!」
と卑下して危機感を煽る。

日経新聞の論調は、
財務省の「財政緊縮(増税)路線」と親和的に見えますが、
市場の実態(流動性や信用力)を無視した暴論だと、私は感じています。

たしかに、イラン情勢を背景とした原油高による
「実需の円売り(貿易赤字の拡大圧力)」は存在し、
円の重しになっています。

10兆円規模の介入観測が、
159円台の重しになっている可能性は高いと思います。

しかし、相場の方向性を決めるのは、
メディアが煽る「最弱通貨論」でも
「ミセス・ワタナベの動向」でもありません。

6月に控える日米の中央銀行の会合(FOMCと日銀会合)に向けて…

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