株式サヤ取り(鞘取り)の応用。NT倍率取引の実例と収益

NT倍率取引、日経225とTOPIXのサヤ取りの難易度が高い、勝てないと言われる本当の理由をご存知ですか?
この記事では、NT倍率が拡大しっぱなしになるメカニズムを明らかにし、それが分かっていれば拡大狙いで簡単に勝てるという事実を明らかにします。
ぜひ挑戦してみましょう!


株式サヤ取りは個別株式だけが対象ではない。

株式サヤ取りと言えば、個別株式だけが対象だと思っている方がほとんどでしょう。

個別株式の「両外しサヤ取り」の具体的なトレード方法については、下記のページで紹介しました。
サヤ取り サヤ取り歴17年の専門家が教える【相関係数と確率分布】に基づいた具体的な方法論

私は株式サヤ取りにスクリーニングツールは不要だと思っており、長期の相関が安定しているお気に入りの銘柄ペアを5~10種類(10~20銘柄)持っていれば、ほぼ毎週仕掛けのチャンスはあるので、十分だと思います。その銘柄ペアの中で、絶対外せないと考えるのは、今回ご紹介するNT倍率のサヤ取りです。

サヤ取りは、やたらに銘柄ペアを変えて頻繁にゴリゴリ行うよりも、お気に入りの銘柄ペアを少しずつ増やして、長く続けていくのが王道だと思います。

相場が停滞しているときは大きなサヤは取れないのですが、2021年現在のような高めのボラティリティがあれば、短期間で収益化できるという例を紹介します。

NT倍率 日経225とTOPIXのサヤ取りとは?

日本を代表する株価指数同士のサヤ取りです。

先物同士を組み合わせて行うこともできますが、個別株式と同様に売買できるETF(上場投資信託)で行うのが、簡単で良いと思います。

NT倍率とは?

日経225(日経平均株価)をTOPIX(東証株価指数)で割ったものです。

1990年代後半から2012年にアベノミクスが始まる前までは概ね10倍から12倍程度で低位推移していましたが、2018年8月に13倍台に乗せてから拡大が加速し、2021年2月終値で15.54倍の高値を記録しました。

NT倍率推移 月足終値ベース

NT倍率がデータとして算出できる1976年以降、上記のグラフで確認できる2005年10月末の9.42倍が史上最低2021年2月末の15.54倍が史上最高になります。

なぜ、NT倍率が拡大を続けているのか?

日経平均とTOPIXの計算方法が異なり、株価上昇局面では、日経平均のほうが強く反応するからです。

日経平均は、日本経済新聞社が選定した225銘柄を加重平均した株価指数ですが、TOPIXは東証一部上場銘柄の浮動株基準の加重平均で計算されます。

かみ砕いて言えば、日経平均は流動性が高い値がさ株、TOPIXは時価総額が大きい株のウエイトが重くなっています
よく問題になるのが、9983ファーストリテイリングは日経平均株価で約10%の重みがあり、TOPIXでは1%未満であるということです。

TOPIXでは3%台で最もウェイトが大きい7203トヨタ自動車は、日経平均では1%台に留まります。
トヨタは時価総額が大きいので株価が変動しにくいのに対し、ファストリの株価は上昇バイアスが強いので、日経平均上昇の貢献度が高くなります。

日経平均が30年6か月ぶりに3万円台に乗せたといっても、当時ファストリ等の新興企業は存在していなかったので、大きく内容が異なります。

しかし、日経平均もTOPIXも、日本経済の実態を示すベンチマークとしては非常に有益であり、それぞれの特性(構成銘柄とウエイト)を理解した上で、相場判断を行うことが重要です。

という訳で、個別株式の「両外しサヤ取り」の手法を使って

  1.  1321 NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信(日経225ETF)
  2.  1306 NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信(TOPIX ETF) 15倍
のサヤ取りの優位性を検証してみます。

なぜTOPIXのほうを15倍するのか?」ですが、売買両建てにするときに、(単元株式数の制限の範囲で)できるだけ均等な金額で仕掛けることにより、全体的な相場の騰落の影響を排除し、純粋に銘柄間のサヤの動きに集中するためです。

「NT倍率がこんなに上昇バイアスが高まっているときに、サヤ取りができるのか?」と疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。
しかし、NT間の相関係数は過去2年で0.957、直近3か月で0.982と、むしろ完全相関に近づいています。

どこかで保ち合いが確認できるようになるまで、サヤ取りとしては拡大狙い(NT倍率の押し目を待って上昇方向)で仕掛けるほうが優位性が高いと言えそうです。

13営業日のサヤ取りの例 約20万円の証拠金で9,450円の利益

パンローリング社の「チャートギャラリー」というWindowsアプリで表示しています。

下記の売買シミュレーションは、便宜的に大引け成行で仕掛けたという前提です。実際には寄付き成行で仕掛けるのが原則です。

単元株式数(最低売買単位)について、「1321 日経225ETF」が1株、「1306 TOPIX ETF」が10株なので、ミニマムの仕掛けは下記ようになります。
1:10の比率なので、@サヤを10倍すると、サヤ取りの収益が簡単に計算できます

STEP.1
2021/02/04
仕掛け
1321 日経225ETF買い(現物よりも信用買いのようが手数料が安くおすすめ
1306 TOPIX ETF15倍空売り(信用売り
同時出合い(どうじであい)で仕掛けます。
STEP.2
取引内容
1321 日経225ETF買い      終値 29,230円× 10株=292,300円
1306 TOPIX ETF15倍空売り  終値 1,941円× 150株=291,150円
必要資金計:583,450円
サヤ 1,150円(@115円
STEP.3
13営業日待つ
STEP.4
2021/02/25
手仕舞い
大引け成行注文で
手仕舞い(両外し)します。
STEP.5
取引内容
1321 日経225ETF売り   終値 31,150円× 10株=311,500円
1306 TOPIX ETF15倍買い  終値   2,006円×150株=300,900円
サヤ 10,600円(@1,060円
STEP.6
損益計算
1321 日経225ETF     311,500円(売り)-292,300円(買い)= 19,200円
1306 TOPIX ETF15倍 291,150円(売り)-300,900円(買い)=▲9,750円
合計 19,200円-9,750円=9,450円

損益計算に関しては、サヤ取り本来のやり方は下記の通りです。

  • 2021/02/04 サヤ   1,150円(@   115円)
  • 2021/02/25 サヤ 10,600円(@1,060円)
  • 合計 1,060円-115円=945円
  • 945円×10倍単位の仕掛け=9,450円

サヤの値幅の変化を軸に計算したほうが圧倒的に楽ですね。「945円のサヤが取れた!」という着眼点が重要なのです。

「チャートギャラリー」では、このように「表形式」=「サヤ場帳」での表示も可能です。
仕掛けたときのサヤが115円ですが、順調に拡大し、13営業日で、1,060円に達したことが分かります。

したがって、サヤ取りでは、2銘柄個別の銘柄の上げ下げは関係なく「サヤの値動きだけに注目しよう」と言われます。
このケースは、サヤがプラス方向に拡大することを狙っているので、「拡大狙い」といいます。

さきほど示した「チャートギャラリー」の2銘柄サヤチャートは非常によく出来ていて

  1. 2銘柄の株価の値動きは、折れ線グラフ
  2. サヤの値動きは、+1,000円~0~-500円レンジのヒストグラム
で示されています。

個別のETFの値動きは、本当にどうでも良く、実際に両銘柄とも上昇していますが、買いの「1321 日経225ETF」の上昇のほうが大きかったので、利益が出たのです。

投資金額計:583,450円(信用取引の証拠金は約194,500円)に対して、13営業日で9,450円の利益というのは、悪くないパフォーマンス(利益率1.6%)です。

上野式サヤ取りは、簡単なExcel計算で再現できる!

「チャートギャラリー」は便利ですが、Excelのようなスプレッドシートで十分代用が可能です。

上記のツールは私のお手製で、「日付」「日経225終値」「TOPIX終値」の3列のデータをテンプレートに張り付けるだけで、ここまで分析できます。

2銘柄間の相関係数(図中の赤い囲みで「0.982」と表示)が最重要ですが、CORREL関数で簡単に計算できます。
赤いヒストグラムのサヤチャートや2銘柄チャートを表示するのも、Excel初級レベルで可能です。

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NT倍率取引は、サヤの動きが分かりやすく、低リスク・ミドルリターンなので、サヤ取り初心者にもおすすめです。
ただし、NT倍率の低下を待って拡大狙いを基本と考えましょう。

上野ひでのり