サヤ取り歴17年の専門家が教える【相関係数と確率分布】に基づいた具体的な方法論

サヤ取り

有料のスクリーニング検索ツールなしでも、簡単なエクセル表計算で優位性が高い株式の銘柄間サヤ取りができることをご存知ですか?
この記事では、13営業日のサヤ取りの実例、16万円の証拠金で4.6万円の利益を上げた手法を紹介します。
あなたにも再現できます。チャレンジしてみましょう!


サヤ取り(鞘取り)とは?


一般に「サヤ取り」とは、個別株式の銘柄間の「両外しサヤ取り」のことをいいます。
狭義のサヤ取りです。

同時に、値動きの相関の高いA銘柄を売り(空売り)、B銘柄を買い、売買両建てにすることで、相場全体の上下動に影響されず、AB銘柄間の価格の差(サヤ)が狙った方向(拡大あるいは縮小)に動くことで利益を発生させる手法です。
手仕舞いも同時に行うので「両外しサヤ取り」と呼びます。

一方、広義のサヤ取りは、個別株式には限定されません。

株価指数、商品先物、債券、金利などの限月間、年限間、銘柄間、市場間などで、突発的なミスプライスで発生する異常な値ザヤが解消されるように、反対売買を行って正常に戻す「裁定取引」が、ヘッジファンドが日常的に行うサヤ取りです。
英語では「Arbitrage(アービトラージ)」といいます。

異常値を裁定するだけで、けっこうなサヤを抜くことができるのですが、ヘッジファンドの高速、高頻度のアルゴリズム売買であっという間にサヤ取り終了です。

したがって、私たち個人トレーダーは、狭義のサヤ取りに挑戦することになる訳です。

個別株式の「両外しサヤ取り」とは?

売買両建てなので「暴落相場に強い」と言われますが、実際その通りです。

暴落相場では、空売り銘柄が利益になり、買い銘柄が損失になります。その差分(サヤ)が狙った方向に動けば、勝ちになります。

2020年2月~3月のコロナショックで日本株式暴落中にサヤ取りを行った結果を示します。

必要最小限の準備は、手書きの「サヤ場帳」に、日付、軸銘柄の終値、脇銘柄の終値、軸銘柄と脇銘柄の終値の差額=サヤという4つの変数を毎日記録するだけです。

しかし、この例のように、「4005住友化学6倍」などいう計算は面倒なので、エクセルなどの表計算ソフトを使ったほうが良いでしょう。

倍数が入ってくる理由は、サヤ取りに最適な2銘柄ペアの株価水準が異なる場合に、そのままだと値がさの株価の影響をもろに受けてしまうため、できるだけ価格を近づけて、売買両建てのポジションの重みを均等にするためです。

  1. 4005 住友化学  400円 ×6 =2,400円
  2. 4083 三井化学  2,400円

この作業を正確に行うと、暴落相場のリスクヘッジが万全になります。

同業種の上記2社の株価の相関係数は0.932であり、ほぼ完全相関です。
相関係数は、エクセルのCORREL関数を使えば、誰でも簡単に計算できます。

ほぼ完全相関の2社の株式を売買両建てで保有したら、全く損益が発生しないような印象もあるでしょうが、意外に毎日サヤの変化があり、特に暴落相場においては、効率よく利益に変えることができます

13営業日のサヤ取りの実例 約16万円の証拠金で4.6万円の利益

この画像は、パンローリング社の「チャートギャラリー」というWindowsアプリを使用していますが、必須ではありません。
見栄えのために使っています。

実際は、仕掛けも手仕舞いも、「寄付き成行」で行うのですが、チャート上の終値のレートと計算が合うように、便宜的に「大引け成行」でトレードを行ったとします。

両社の単元株式数(最低売買単位)は100株なので、ミニマムな仕掛けは計700株の売買になり、必要資金は469,700円です。

信用口座で3倍のレバレッジをかけるとすれば、156,600円程度の証拠金が必要です。

STEP.1
2020/02/28
仕掛け
大引け成行注文で
4005 住友化学6倍空売り(信用売り
4183 三井化学買い(現物よりも信用買いのようが手数料が安くおすすめ
同時出合い(どうじであい)で仕掛けます。
STEP.2
取引内容
4005 住友化学6倍空売り 終値 393円×600株=235,800円
4183 三井化学買い     終値 2,339円×100株=233,900円
必要資金計:469,700円
サヤ 1,900円(@19円
STEP.3
13営業日待つ
STEP.4
2020/03/18
手仕舞い
大引け成行注文で
手仕舞い(両外し)します。
STEP.5
取引内容
4005 住友化学6倍買戻し 終値 280円×600株=168,000円
4183 三井化学売り     終値 2,121円×100株=212,100円
サヤ ▲44,100円(@▲441円
STEP.6
損益計算
4005 住友化学6倍 235,800円(売り)-168,000円(買い)=    67,800円
4183 三井化学    212,100円(売り)-233,900円(買い)=▲21,800円
合計 67,800円-21,800円=46,000円

損益計算に関しては、サヤ取り本来のやり方は下記の通りです。

  • 2020/02/28 サヤ      1,900円(@      19円)
  • 2020/03/18 サヤ ▲44,100円(@▲441円)
  • 合計 19円-(▲441円)=460円
  • 460円×100株単位の仕掛け=46,000円

サヤの値幅の変化を軸に計算したほうが圧倒的に楽ですね。
「460円のサヤが取れた!」という着眼点が重要なのです。

「チャートギャラリー」では、このように「表形式」=「サヤ場帳」での表示も可能です。
仕掛けたときのサヤが19円ですが、順調に縮小し、13営業日で、-441円に達したことが分かります。

したがって、サヤ取りでは、2銘柄個別の銘柄の上げ下げは関係なく「サヤの値動きだけに注目しよう」と言われます。

このケースは、サヤがプラス方向からマイナス方向に縮小することを狙っているので、「縮小狙い」といいます。

さきほど示した「チャートギャラリー」の2銘柄サヤチャートは非常によく出来ていて

  1. 2銘柄の株価の値動きは、折れ線グラフ
  2. サヤの値動きは、+400円~0~-400円レンジのヒストグラム

で示されています。

個別の株価の値動きは、本当にどうでも良く、実際に両銘柄とも下落していますが、空売りした「4183三井化学」の下落のほうが大きかったので、利益が出たのです。

投資金額計:469,700円(信用取引の証拠金は約156,600円)に対して、13営業日で46,000円の利益というのは、かなり高いパフォーマンス(利益率9.8%)です。

暴落相場だから早く利益が乗って、手仕舞いできたと言えます。

上野式サヤ取りとは?

上野ひでのり著 「株式サヤ取り入門 ~確率論に基づく『上野式』でシンプル投資」

「上野式サヤ取り」とは、2006年に私が発表した確率論に基づく、全く新しいサヤ取りの理論体系です。

2008年4月には右記のような書籍も出版されました。

もう13年も前の書籍ですから、データの古さも目立ち、今から購入していただく必要は全くありません。

上野式サヤ取り理論は、株式トレードの中ではニッチな存在であるにも関わらず

1.2銘柄間の相関係数の高さに着目してペアを選定する
2.サヤの確率分布をボリンジャーバンドに表示する

この2点が評価されて、ブームを巻き起こし、模倣業者も多数出現しました(最近はかなり淘汰されました)。

上野式サヤ取りは、簡単なエクセル表計算で再現できる!

先ほど、「手書きのサヤ場帳だけでも十分サヤ取りはできる」と述べたのは本当です。

2銘柄間の相関係数(図中の赤い囲みで「0.932」と表示)は重要なので、できればエクセルなどの表計算ソフトで計算していただきたいところですが、手書きの2銘柄チャートをじっくり観察するだけでも、相関係数の値は、サヤ取りに支障がない程度の正確さで分かります。

赤いヒストグラムのサヤチャートを表示するのも、エクセル初級レベルで可能な技能です。

いずれにしろ、自分がお気に入りの2銘柄ペアのサヤの値動きのパターンが自然と刷り込まれてくれば、どのタイミングが仕掛けのチャンスなのか、即座に判断できるようになります。

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サヤ取り銘柄ペア探しのスクリーニング検索ツールは是か非か?

サヤ取り専門家としての率直な意見

私は、サヤ取りの専門家として、スクリーニング検索ツールは不要だと考えています。

私も、過去、投資助言業として、サヤ取りシグナルを配信しているときには、スクリーニング検索ツールを常用していました。
毎週末に、サヤ取りペアとして、5ペア10銘柄を選定し、毎週月曜日の寄付き成行で一斉に仕掛け、金曜日の大引け成行で手仕舞いというシステムトレードを提案していました。

なぜ「5ペア10銘柄」にしたかですが、「1ペア2銘柄」では、当たり外れが大きすぎるため、そのリスクを相殺するために、疑似的な株式ロングショート(5銘柄ロング、5銘柄ショート)の形にしたのです。

良好なパフォーマンスも出てお客様には喜んでいただきましたが、銘柄数が多すぎるため理想的には1,000万円程度の資金で運用していただく必要があり、大多数の個人トレーダーは対象となりませんでした。

なぜ、スクリーニング検索ツールが不要かと言えば、現在の相関係数の高さだけで抽出した銘柄ペアは、たまたま一時的にそうなっているだけであって、永続的なものでない可能性が高いからです。

例えば、日経平均が30年6か月ぶりに30,000円台を回復した2021年の相場では、本来は全く異なる値動きをする銘柄ペアが、過熱したブル相場が原因で相関を高めていると言えるでしょう。

私は、もともと異業種間のサヤ取りにあまり優位性はないと考えています。
一時的に相関係数の高さを利用してトレードすることは可能ですが、使い捨て銘柄ペアだと思います。

私が理想とするサヤ取りは

  • 同業種(セクター)の銘柄で
  • ファンダメンタルズ含め、対象の会社のことを深く理解した上で
  • 「サヤの動きだけに集中する」ことは確かにその通りですが
  • なぜそのサヤになっているのかよく考え
  • 個別のチャート分析も含めてトレードを行えば

より一層精度が上がると考えます。

今回例示した住友化学と三井化学のサヤ取りは、上野式サヤ取りを発表した当時からの定番、15年選手です。
このような定番ペアを、最低5種類10銘柄最大10種類20銘柄ほど持っていれば、ほぼ毎週仕掛けのチャンスはあります。

いくら短期トレードでも、あまり馴染みのない会社の株を売買するのは、心が落ち着きません。

長年取り組んでよく知っている業種と会社、合計10銘柄に絞れば、サヤのパターンが完璧に刷り込まれてきますので、大失敗は少ないのです。

手書きの場帳とチャートでも結構ですし、相関係数と確率分布を計算するためにエクセルの力を少し借りれば、それだけで十分だと思います。

サヤ取りは、あまりゴリゴリ攻めるものではなく、上記のような牧歌的にも思える取り組みが、結果的に長い期間での利益に貢献すると確信しています。

少し便利に取り組みたい方へ おすすめのサヤ取り道具2選

下記のツールをおすすめします。
繰り返しますが、必須ではありません。

しかし、買い切りで半永久的に使用できるものですから、月額費用を払ってスクリーニング検索ツールを使い続けるよりは、トータルでお得になります。
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サヤ取りは、やたらに銘柄ペアを変えて必死になって行うよりも、お気に入りの銘柄ペアを少しずつ増やして、長く続けていくのが王道だと思います。

上野ひでのり