この月報では、円の実質的な対外価値が1980年以降の歴史の中でどの位置にあるのかを、毎月定点観測します。
| 項目 | 最新値 |
|---|---|
| REER(実質実効為替レート) | 66.61 |
| 前月比 | +0.91% |
| 前年比 | -7.25% |
| NEER(名目実効為替レート) | 69.49 |
| USD/JPY月末 | 157.40円 |
| 歴史的位置 | 1980年以降の月次REERで下位1.25% |
データは2026年9月まで
目次
1.今月の総評
2026年9月のREER(実質実効為替レート)は66.61となりました。
REERは、複数の相手国・地域に対する円の総合的な対外価値を、物価差まで調整して示す指数(2020年平均=100)です。
現在の66.61という数値は、1980年以降の月次REERで下位1.25%に位置しており、過去最低値に近い低水準にあります。
同月末のUSD/JPYが157.40円となるなか、円の実質的な対外価値は歴史的な低位圏での推移が続いています。
直近の変化率を確認すると、前月比では+0.91%と小幅に上昇した一方、前年比では-7.25%の下落となっています。
この12か月のREER変化は、最新値が69.49であるNEER(名目実効為替レート)の変動が主導する構造となっています。
単月の小幅な反発にもかかわらず、1年を通じた名目面の低下圧力が、円の実質的な対外価値を歴史的な低水準にとどめています。
今月は、この歴史的な現在地の詳細と変化の内訳を整理したうえで、現在点を起点とする中期的な条件付きシナリオを確認します。
2.円の実質価値はいま、歴史のどこにいるのか
1980年以降の長期データの中で現在地を検証すると、2026年9月の66.61は過去最低値そのものではありませんが、極めて低い位置にあります。
1980年以降の過去最低値は2026年7月に記録した65.23であり、現在地はそこから1.38ポイント(+2.12%)高い水準にとどまります。
3か月変化では+1.73%と上昇しているものの、2026年2月の66.82(現在値との差0.21ポイント)に近い水準で推移しています。
一方、1995年4月に記録した過去最高値の194.05と比較すると、現在の円の実質的な対外価値はピーク時の34.33%に相当します。
低水準での滞在期間を見ても、REERが80未満となった月は通算54か月であり、現在まで54か月連続で80未満が継続しています。
さらに70未満の月も通算14か月に達し、足元では11か月連続で70を下回る状態が続いています。
このように、直近3か月ではわずかな持ち直しが見られるものの、歴史的な分布の中では底値圏での滞留が長期化しています。
3.REER変化の中身|NEERと相対物価要因
REERの変動は、物価調整前の円の総合的な対外価値を見る指数であるNEERと、相対物価要因Qに分けて捉えることができます。
相対物価要因QはREER÷NEERで表され、REERの変化をNEER側と相対物価調整側に分けて見るための要因です。
対数変化(Δln)による1か月分解では、REERの+0.90%に対し、NEERが+1.49%、相対物価要因Qが-0.59%でした。
さらに12か月の対数変化を見ると、REERの-7.53%に対してNEERが-6.84%、相対物価要因Qが-0.69%となっており、12か月のREER変化はNEER主導であることが分かります。
過去1年間の円の実質的な対外価値の低下は、内外の相対的な物価調整要因よりも、名目上の為替レートの変動が大部分を占める構造となっています。
4.半年〜1年の中期シナリオ
ここでは、2026年9月末のUSD/JPY 157.40円、REER 66.61を起点として、半年〜1年の中期的な条件付きシナリオを確認します。
分析には、過去の6〜12か月変化で観測されたUSD/JPYと円の実効価値の中期的な共変動感応度であるβ=-0.80を用います。
このβ=-0.80は反応速度や将来予測を表す値ではなく、過去の共変動関係に基づく試算の前提です。
過去の観測変化幅の範囲内でUSD/JPYが円高方向へ動いた場合、150円ではREER 69.2、140円では73.2、130円では77.6が対応する目安となります。
ただし、過去の観測変化幅の境界であるUSD/JPY 129.43円より円高側は、過去に実際に観測した変化幅を超え、同じ関係が続くと仮定して機械的に延長した外挿領域として扱います。
例えばUSD/JPY 125円に対応するREER 80.1は外挿領域の試算値であり、過去の観測範囲内の数値とは区別して読む必要があります。
5.REER70・80の世界
本レポートで用いるREER70および80は、現在位置を説明するための参照水準であり、適正値・均衡値・経済的閾値ではありません。
指数基準である2020年平均=100も含め、特定の数値が円の正常な水準や目標を意味するものではなく、現在地からの距離を測るための目盛りとして利用します。
現在の66.61はREER70未満の領域に位置しており、参照水準である70までの距離は3.39ポイントとなっています。
もう一つの参照水準である80までは13.39ポイントの開きがあり、円の実質的な対外価値は80の節目から大きく離れた位置にあります。
6.今月のまとめ
2026年9月のREERは66.61となり、1980年以降の月次REERで下位1.25%という過去最低値に近い低水準に位置しています。
前月比では+0.91%と上昇したものの、前年比では-7.25%の下落であり、過去12か月の変化はNEER主導の構造が続いています。
USD/JPY 157.40円とREER 66.61を起点とする中期シナリオでは、過去の共変動感応度のもとでも、129.43円より円高側は外挿領域となります。
現在の円の実質的な対外価値は、名目為替レートの変動を主因として、歴史的な低位圏での推移が継続しています。
数値計算と検証はPythonで行い、検証済みデータをもとにLLMを文章化支援に使用しています。
最終的な分析内容の確認・監修および文責は上野ひでのりが負います。


