目次
本日のテーマ
今週の為替市場ではドル円が163円台へと上伸し、
1986年以来およそ39年7か月ぶりとなる歴史的な安値水準を更新しました。
中東情勢の緊迫化と原油相場(WTI)の88ドル台への再上昇を受け、
メディアや金融機関のアナリストたちはこぞって
「163円台を固めれば次は165円が視野に入る」
といった威勢のいい解説を繰り広げています。
しかし、こうした「目盛りを伸ばすだけ」の片側リスクに偏った議論は、
クオンツ・プロの視点から言えば完全な思考停止と言わざるを得ません。
メディアが大騒ぎする局面こそ、
蓄積された「過剰な織り込み」が逆回転を始める絶好の条件が整うからです。
本日は、相場の表層で躍るノイズを冷徹に削ぎ落とし、
来週29日(水)27時半のFOMC記者会見で訪れかもしれない
「相場の真の転換点(天地返し)」のメカニズムを解き明かします。
上野ひでのり本日の視点
1.原油高の「虚実」と165円コンセンサスの罠
まず足元のファクトを正しく整理しておきましょう。
確かにイラン情勢の悪化と米軍の攻撃継続を受け、
WTI原油先物は88.61ドルまで上昇し、
市場ではFRBによる追加利上げ期待が根強く残っています。
FedWatch Toolを見ても、9月利上げの確率は78.0%、
年内2回利上げの確率も43.2%まで跳ね上がっています。
しかし、有事初期に原油価格が110ドル台の最高値を付けた局面と比較すれば、
現在の水準は明らかに過熱感が低く、
株式市場もパニック的な崩壊を見せてはいません。
市場は決して「暗黒の悲観ムード」にあるわけではないのです。
それにもかかわらず、
「163円を超えたから次は165円」という一本調子のシナリオを真に受けるのは
極めて危険です。
現在市場に充満しているのは、
地政学リスクと原油高を根拠にした
「過剰なドル買い・円売りポジションの傾き」です。
一方のリスク(ドル高)だけに着目して資金を張り詰めた時、
突如として襲いかかる急落・手じまいの巻き戻し圧力(テールリスク)
に対応できなくなります。
2.29日(水)27時半のウォーシュ発言という「勅言(天の声)」が引く引き金
では、この過剰に積み上がったドル高のハシゴを外す
「真の決定打」はどこから来るのでしょうか。
私は、31日(金)の日銀金融政策決定会合や政府の動向ではなく、
29日(水)27時半(日本時間30日午前3時半)に開始される
ウォーシュFRB議長による定例記者会見こそが、
相場の重力を一変させる「天の声(勅言)」になると見ています。
簡素な声明文(プレスリリース)の行間を読む時代は終わりを告げました。
フォワードガイダンスの放棄を掲げるウォーシュ体制において、
彼が会見の場で口にする一言一言のニュアンスこそが、
世界中の資金フローを決定づけます。
会見では、以下の構造転換が浮き彫りになる可能性が高いと分析しています。
基調インフレ重視と地政学ショックの看過:
ウォーシュ議長はインフレに対する断固たる姿勢を示しつつも、
足元の原油高については「一時的な地政学ショック」として看過(look through)し、
エネルギーを除いた「基調的なインフレ」の落ち着きを強調するでしょう。
「金利据え置き」の正当化とQTへの軸足移動:
「インフレの抑制はQT(バランスシートの縮小)によって継続的に行うため、
これ以上の追加利上げは必要ない」というロジックを展開する公算が大と考えます。
現在市場が前のめりに織り込んでいる
「9月利上げ(78%)」や「年内2回利上げ」という期待に対し、
ウォーシュ氏が会見で強烈な冷や水を浴びせた瞬間、
積み上がっていたドルの買い持ちポジションが一気に巻き戻され、
強烈なドル安・円高方向へのボラティリティ・スパイクが
引き起こされることになるでしょう。
3.日銀会合と為替介入は「受動的な局所イベント」
一方で、31日(金)の日銀会合や植田総裁の会見、
そして片山財務相らによる実弾の為替介入(ドル売り円買い)については
どう評価すべきでしょうか。
結論から言えば、
これらは主因(ドルの重力)によって引き起こされる
「受動的な局所イベント(副作用)」に過ぎません。
日銀がどれだけタカ派的な姿勢を見せようと、
あるいは政府が介入を実行しようと、
それ単体でドル高トレンドの根本的な向きを変えるパワーはありません。
ただし、29日のFOMC通過後に市場のボラティリティが跳ね上がり、
163円台後半などで高値圏に張り付いていた場合、
日銀会合後のタイミングを狙った実弾介入が
「強烈なボラティリティの増幅器」として機能する可能性は高いと考えます。
4.【結論】ウォーシュ勅言のすさまじい破壊力
世間の「163円到達」「さらなる円安」というコンセンサスに流され…
この続きは、有料メルマガでお読みください。
「上野ひでのり本日の視点」の続き、「相場概況」「本日のおすすめトレード」の記事が掲載されています。



