目次
本日のテーマ
昨夜のNY為替市場では、
米新規失業保険申請件数が市場予想を下回ったことをきっかけにドル高が再燃。
ドル円は一時162.541円まで急反発する展開となりました。
米軍による対イラン攻撃の再開やホルムズ海峡の緊迫化に伴う原油価格の高止まり、
FRB複数の委員による利上げに含みを持たせるタカ派姿勢、
そして巨大IT企業(ハイパースケーラー)による巨額のAI設備投資。
これら「年後半に向けたドル高3大要因」が
足元のドルを下支えしていることは事実です。
しかし、今週発表されたCPIやPPIが
明確なディスインフレ(鈍化)トレンドを示している以上、
これらのドル高要因がこの先も「持続的なリスク」として
相場を支配し続けられるかは大いに疑問が残ります。
実は、足元でドル円が162円台に踏みとどまっている本質的な理由は、
米国の強さにあるのではありません。
日本市場に深く染みついた「惰性の円売り」、
そして水面下で台頭し始めた新たな政治的テーマにあります。
本日は、この歪みの深層をシンプルに整理して解説します。
上野ひでのり本日の視点
1.【ファンダメンタルズの真実】消え去った「構造的円安」の根拠
長年、日本円の歴史的安値を正当化する最大の拠り所とされてきた国際収支などの
「構造的な売り圧力」は、足元で潮目が大きく変わっています。
(1)貿易収支の黒字化:
2022年に20.3兆円という巨額の赤字を記録した貿易収支は、
2025年には2.9兆円まで縮小。
2026年に入ると、2月以降は、
月次ベースで黒字が継続する状態へと劇的に改善しています。
(2)サービス収支の相殺力:
いわゆる「デジタル赤字」こそ6.7兆円規模へ拡大しているものの、
インバウンドの「旅行収支」と「知的財産権等使用料」の黒字が、
合計11.4兆円にのぼり、デジタル赤字の存在を完全に帳消しにしています。
(3)実質政策金利の急浮上:
日銀の政策金利1.0%から最新5月のCPI(1.5%)を差し引いた実質政策金利は、
マイナス0.5%まで浮上。
マイナス2%以下に深く沈んでいた2025年までとは完全に様相が異なっています。
マクロ経済の基礎的条件(ファンダメンタルズ)に照らせば、
為替需給のフロー面における円売り圧力は大幅に低下しており、
いつ円安トレンドが円高方向へ転換してもおかしくない段階にきています。
それにもかかわらず、ドル円相場が下落しないのは、
市場参加者の間に「とりあえず円売り」という思考停止のコンセンサス(惰性)
が染みついてしまっている違和感の現れです。
2.浮かび上がる「高市円安」という思惑と、財政規律への問いかけ
構造的売り圧力が低下した先で、
現在の162円台前半の膠着を無理やり支えているのが、
市場が強く意識し始めた「高市円安」という政治的思惑です。
外為市場関係者を対象とした最新の7月月次調査では、
高市首相が掲げる「責任ある積極財政」が円安要因になっている
との回答が83%に達しました。
さらに、日銀の利上げ遅れや将来の財政規律緩みを懸念する見方が
85%にのぼっています。
高市氏自身は「そういう話ではない」と否定しているものの、
市場はこれを「低金利の長期化と将来のインフレ懸念」=「格好の円売り材料」
として利用しているのが実態です。
ここで冷徹に対比すべきは、今週、対円で18年半ぶりの高値をつけた
英国の「英ポンド」の動きです。
英国では、次期政権の財務相に
財政規律派とされる人物が就く見通しとなったことで、
財政懸念に伴うポンド売りが一気に巻き戻され、強烈なポンド高を誘発しました。
英国が「財政規律への信頼」によって通貨高を勝ち取った事実を踏まえれば、
日本がこの思惑主導の円安モメンタムを脱却できるかどうかは、
政権が積極財政の「責任」を明確にし、
日銀が実質金利をプラス圏へ転換させる覚悟を
市場に示せるかどうかにかかっています。
3.【クオンツデータ】クロス円で「CAD/JPY」が全体1位に決壊
今朝、会員向けに公開した最新の「kiwamiクオンツ・レポート」のローデータは、
このドル一強体制のきしみと、
蓄積される歪みの正体をまざまざと証明しています。
現在のドル円(USD/JPY)単体のエクスパンション・スコアは
平時の無風状態(通常監視)にあるのに対し、
決壊ランキングのトップには大きな変化が起きています。
【CAD/JPY(カナダドル円)クオンツ判定:優先度「高」】
エクスパンション・スコア:5.178 (全19銘柄中1位)
上昇方向へのボラティリティ・ブレイクアウトの可能性が高まっています。
ドル円自体には動意がないものの、
中東情勢緊迫化による原油高の恩恵を受けやすいカナダドルなどの
「クロス円セクター」において、
投機筋による「円売り・他通貨買い」の歪みが
極限まで濃縮されて溜まっている証拠です。
まだ、爆発的なボラティリティ拡張こそ伴っていないものの、
数理モデル上はいつでも上方に吹き飛ぶエネルギーが
充填された状態として整理されます。
4.【結論】徐々に高まる円高マグマ噴出の可能性
目先の米指標や原油高を材料にした162.50円近辺へのドル高の戻りは…
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