【円相場IVの暴騰】逃げ惑う投機筋とクジラが引き起こす9月リバランスの激流

本日のテーマ

昨日のドル円相場は、まさに荒波そのものでした。

東京タイムで一時152.883まで急落したかと思えば、
ロンドンタイムで154.417まで反発し、NYタイム後半には再び153.443へと急落。

そして本日の東京タイム早朝から、
再度152円の直近安値更新を目指す激しい下値追いの展開となっています。

強い米雇用統計やFRB関係者のタカ派発言といった「明確なドル買い材料」
があるにもかかわらず、円高が止まらない現状に対し、
市場関係者やメディアは「異例の展開だ」「理解不能だ」と首を傾げています。

しかし、大衆が表層的な金利差やイベントのヘッドラインだけを見ているから
「異例」に見えるに過ぎません。

クオンツとマクロの視点から相場の深層を覗けば、
現在の円急騰は極めて論理的であり、
起きるべくして起きている「物理法則の帰結」です。

上野ひでのり本日の視点

1.クオンツの真実:IV(予想変動率)の急騰が破壊する「円キャリー」

今回の円急騰を駆動している最大のメカニズムは、
「IV(インプライド・ボラティリティ:予想変動率)」の異常な跳ね上がりです。

現在、円相場の1か月IVは年率換算で10.1%に達しており、
これは7月末に政府・日銀が実弾介入を行った直後すら上回る警戒水準です。

いわゆる円キャリートレードは、本質的には日米の金利差を狙う一種の「サヤ取り」です。
サヤ取りというものは、
対象の価格変動が一定のレンジに収まる(ボラティリティが安定している)ことが
大前提となります。

相場の変動率(IV)がここまで暴力的に跳ね上がると、
数パーセントの金利差(サヤ)など、為替差損によって一瞬にして吹き飛んでしまいます。

つまり、現在の相場は「日米金利差が縮小するから円が買われている」
という悠長な段階はとうに過ぎています。

IVの急騰そのものが、為替ヘッジなしの外債投資(円ショート)を
保有不可能(強制アンウィンド)にする致命的なトリガーとなっているのです。
含み損に耐えきれなくなった投機筋は、いまポジションを手放して逃げ惑うしかありません。

2.不可避の激流:クジラ(生損保・GPIF)が引き起こす9月リバランス

このIVの暴力によって追い詰められているのは、短期のヘッジファンドだけではありません。
相場の決定的な大勢を決めるのは、
日本の巨大機関投資家(生損保やGPIFなどの年金基金)という「クジラ」たちの動向です。

この急激な円高によって、
彼らが保有する巨額の外債ポートフォリオの含み益は凄まじい勢いで削り取られています。

9月の半期末決算を目前に控えた今、彼らはリスク管理の社内規定からも、
為替ヘッジ比率の大幅な引き上げや、
外債を売却して利回りが3%〜4%に達した国内債へ資金を移す「リバランス(ポジション調整)」
を余儀なくされています。

投機筋のショートカバー(買い戻し)は一過性のものですが、
一度動き始めたクジラたち(リアルマネー)の巨大な実需のうねりは、
そう簡単に止まるものではありません。

3.今後の展望:CPIとFOMCは巨大なトレンドの「さざ波(ノイズ)」

11日(金)に発表される米CPI(消費者物価指数)や…

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