【サルでも分かる】サヤ取りの基礎中の基礎

サヤ取りを理解するためには、2つの概念図(チャート)をご覧いただければ一発です。このデイリーBLOG連載のために、プロの図解屋さんに発注して描いてもらいました。
今後、サヤ取りの話が出てきたときに、すぐにイメージが思い浮かぶように刷り込んでくださいね。

個別株式のサヤ取りが最も分かりやすいと思うので、国内個別株式の中で、銘柄A(青)を「東京海上ホールディングス(8766)」、銘柄B(赤)を「SOMPOホールディングス(8630)」とイメージしてください。同業種で単元株式数も100株で同じです。

あなたが通常行っている片張り取引


銘柄A(青)の東京海上の株価が押し目をつけたときに買い、目標株価に到達したときに売ります。上昇した株価×株式数が利益となります。
このとき現物を買うのが通常ですが、信用取引の買いでも問題ないです。信用取引で約3倍のレバレッジをかけることができますが、それを推奨している訳ではなく、売買手数料が安いからです。

銘柄B(赤)のSOMPOについて、直近の高値をつけたため、今後は下落すると判断できるとします。「空売り」の経験がない個人投資家の方は多いと思いますが、1週間かけて上昇した値幅を1日の急落で失うようなケースはザラにあり、短期トレードに徹するのであれば、空売り(ショート)の優位性が高い局面は多いと思います。
空売りは信用取引で実現するトレード手法ですが、証券には貸株制度があり、あなたは証券会社経由で株を借りて売ることになります。SOMPO株を所有していなくても今後下落するという確信があれば空売りし、下落した値幅×株式数が利益になります。決済時には借りた株を返却するというオペレーションが裏側で自動執行されます。

サヤ取りのモデルケース


銘柄A(青)の東京海上と銘柄B(赤)のSOMPOの株価が、平常時には同水準にあると仮定します。
ところが東京海上の株価が何かのきっかけで急落したケースをイメージしてください。SOMPOは通常の株価水準を維持しているとします。

このときに、もちろん「東京海上買い」だけでも問題ありません。しかし、日経平均株価が高水準にあり、米国株の急落と同期して大きく値を崩すことが心配な局面もあるでしょう。押し目買いのつもりが、結果的には底はもう少し深かったというケースですね。

このとき、「SOMPO空売り」を同時に仕掛けます。売買両建てで急落のリスクヘッジを行いながら利益を上げる手法を「サヤ取り」といいます。
両社の株価が通常5,000円だとしましょう。空売りのSOMPOは5,000円のまま、買いの東京海上は4,500円とします。図解中にある「乖離」状態です。
単元株式数が両社とも100株なので、前者空売り50万円、後者買い45万円の仕掛けになります。信用取引を使う前提で、証券会社に50万円程度の資金があれば十分です。売買両建てでリスクヘッジが万全なので、両建て分の資金は必要なく、片側の現物を買う資金と同程度で良いでしょう。

2週間ほど経過して、心配していたような日経平均株価の急落は起こらず、両社の株価とも上昇し、いつもよりも株価水準が切り上がり、5,500円でピタリと一致したとします図解中にある「収束」状態です。「5,000円-4,500円=500円」という乖離(値ザヤ=サヤ)が、「0円」に収束したということです。
収束狙い(サヤ取り用語では、拡大したサヤの「縮小狙い」)が成功したことになるので、利益確定します。利益額は「500円×100株=50,000円」です。

「SOMPO空売り」・・・5,000円-5,500円=▼500円 100株で▼50,000円
「東京海上買い」・・・5,500円-4,500円=△1,000円 100株で△100,000円
∴50,000円の利益

サヤ取り特有の計算方法は、「△500円×100株=△50,000円」

サヤ取りに便利なサヤチャート

上は単純な株価チャートですが、下は両社の株価の差分(サヤ)をヒストグラム(柱グラフ)で示したものです。
図解中START時のサヤは500円、GOAL時のサヤは0円です。この場合は、拡大したサヤの「縮小狙い」なので「500円⇒0円」で利益となります。
狙いが外れてさらなる乖離(サヤが拡大)してしまったら失敗となり、サヤが逆に動いた分が損失となります。

今回の例で、銘柄A(青)の東京海上と銘柄B(赤)のSOMPOの2銘柄を選んだのは、株価の相関が高いからです。どちらも3メガ損保の一角であり値動きが連動しやすいのです。相関係数を計算すると+0.9以上の非常に強い順相関となります。
+0.6以下の相関が弱めの銘柄間では、サヤ取りの精度はかなり落ちると考えられますので、事前に相関係数の高いペアを選んでくることが重要です。

今回は「縮小狙い」を例に説明しましたが、今回のように全体の株価が上昇している局面でも利益になりますし、仮に暴落中であったとしても利益になることはあります。相関係数が高い2銘柄を売買両建てにしてあるので、株価が暴騰しようが暴落しようがリスクヘッジは完璧であり、サヤが狙った方向にさえ動けば利益になるという非常にユニークなトレード手法がサヤ取りなのです

したがって、両社の株価は差分(サヤ)の計算上必要になりますがトレード成果には直接関係なく、純粋にサヤの動きだけで損益が発生しますので、サヤ取りはサヤチャートだけ見ていればできるということになります。

ちなみに、サヤが「500円⇒0円」は単純で分かりやすいので例としました。「⇒100円」「⇒50円」でも「⇒-50円」でも利益になります。500円よりもサヤが縮小すれば必ず利益になるということです。

なかなかユニークな考え方だと思いませんか?
次回は「どれくらいサヤが拡大したら(縮小したら)仕掛けのチャンスなのか」という定量的な視点で論点を深めていきたいと思います。

【上野式サヤ取り】不朽の名教材をスーパー廉価版で提供中!

教材の詳細ページはこちらからすぐにご覧ください。