マルチタイムフレーム(MTF)分析の検証。意味ない訳がない【MT4講座】

マルチタイムフレーム分析

マルチタイムフレーム(MTF)分析は実際に役に立っていますか?
必須スキルとして礼賛される一方、「意味ない」と警鐘を鳴らす論者もいます。
全く無意味というのは言い過ぎですが、効果が出ない取り組みかたのトレーダーが多いのは事実だと思うので、この記事ではMTFの本質論を述べます。


マルチタイムフレーム(MTF)分析の基礎

全ての周期を同じ重みで分析してはいけない

MT4でマルチタイムフレーム分析をする場合に、対象通貨ペアの値動きの特性過去の歴史的な高値・安値が明確に頭に入っているのであれば、毎日、月足から1分足まで9周期のチャート分析を行う必要は全くありません。

ドル円を例にとれば、下記のようなポイントです。
ドル円の値動きの特性

  1. 株高のリスクオンで上昇しやすく、株安のリスクオフで下落しやすい
  2. 特に、地震、戦争、大規模テロ、コロナ渦などのリスクオフでは急激な円高が進む
  3. コロナ渦のようなリスクオフでは、有事のドル買いも進行するので、ドル高で急激に値を戻すこともある
  4. スワップポイントは売りでマイナス、買いで若干のプラスであることから、安値で買われやすい
  5. 日本人は円安を歓迎するので、買いに傾きやすい
  6. 当面、100円を割り込むリスクは低い
歴史的な高値と安値
  1. 2011年10月31日の史上最安値 75.564
    この日に為替介入が実施された
  2. 2015年6月5日の高値125.854
    アベノミクス、日銀異次元緩和後の最高値
  3. 2016年6月24日の暴落安値98.887
    23日に実施した英国国民投票でブレグジットが決定したため、一時的なリスクオフ
  4. 2016年11月9日の暴落安値101.183
    米国大統領選で、トランプ候補が当選確実になった瞬間
  5. 2016年12月15日の高値118.658
    トランプラリーのピーク
  6. 2018年3月26日の安値104.604
    トランプラリー後のボトム
  7. 2018年10月3日の高値114.549
    ボトム後の戻り高値
  8. 2019年1月3日の安値104.766
    日本の正月休み中のフラッシュクラッシュの暴落安値
  9. 2019年4月24日の高値112.400
    フラッシュクラッシュ後の戻り高値
  10. 2020年3月9日の暴落安値101.183
    コロナショックの暴落安値(4の暴落安値と全く同値
  11. 2020年3月24日の高値111.714
    コロナショックの暴落からの暴騰高値
この記事を書いている2021年6月25日の週末の終値が110.719でした。

今後1年以内に想定される高値は、9の112.400が最も意識されるレベルで、レジスタンスがかなり強くなります。
7の114.549まで戻す可能性は相当低いと思います。

3のブレグジット決定のような衝撃的な事件が起これば100円の安値を試し、瞬間的に割り込むこともありましたが、通常の危機レベルでは100円のサポートはテッパンです。

上記のドル円の特徴と高値・安値の推移が頭に入ってれば、日足で分かる足元のドル円の上昇トレンドも、そろそろピークに近づいていることが、どんな初心者にも推測できるでしょう。

上記の高値・安値が正確に頭に入っているトレーダーは少ないので、月足で確認することになります。

メインの日足に月足を加えたマルチタイムフレーム分析となります。
これは、長期ポジショントレードの例になりますが、それ以外の7周期について、時間をかけて分析しても、得るものは少ないでしょう。

9周期に均等の精力を傾けて分析するのはナンセンスです。
トレードスタイルに合わせて必要な周期のみ集中的に、メリハリをつけて分析を行いましょう。

日足が最も重要

なぜ日足が最も重要なのでしょうか?

  1. あらゆるチャート分析手法は日足をベースに発展してきたから
  2. 世界中のアナリスト、トレーダーの相場の共通認識が日足だから
  3. 債券(金利)、株式、コモディティ相場との相関を日足同士で比べるから
それでは、日足だけを見れば相場の全貌を把握できるでしょうか?
  1. スイングトレード(数日から数週間)であれば、ほぼ問題ない
  2. デイトレード以下の短期トレードの場合には、1時間足も見ておきたい
  3. 長期のポジショントレードの場合には、月足も見ておきたい
スイングトレードの場合、日足以外見る必要がないと述べている訳ではなく、1pipでも有利なエントリーと手仕舞いをするために、より短期のチャートが役に立つことは間違いありません。
トレード戦略(シナリオ)を考える上では、日足だけに集中していれば、大きな勘違いはないだろうという意味です。

分かりやすい日足チャートの例

「ディナポリチャート」をベースに、FXトレードに最適化したMT4版「上野式精密水平線トレード専用チャート」の日足です。


チャート画像をクリックするとフルHDの画面が開きます

このチャートを見て分かること

  1. 2021年の安値が1月6日の102.592である
  2. 2021年の高値1が3月31日の110.965である
  3. 押し目が4月23日の107.477である
  4. フィボナッチ・リトレースメントの38.2%の押し目107.767に対して、下ヒゲでしっかりサポートされてから反発している
  5. 6月24日に高値1をブレイクして、111.115の高値2をつけている
  6. 重要なプライスの節目が、111.250、112.500と水平線で示されている
  7. フィボナッチ・エクスパンションの3段階の利益確定レベルの第1段階(COP)が112.652である
  8. よって、今後の高値のターゲットは112.500~652のゾーンになる
    場合によっては、ひとつ手前の重要なプライスの節目111.250のレジスタンスを上抜けない可能性もある
先ほど、「今後1年以内に想定される高値は、9の112.400が最も意識されるレベル」と述べた通り、月足で分かる歴史的な高値のレジスタンスとも整合的であり、有能な市場参加者であれば誰でも意識するレベルを正確に把握するために、マルチタイムフレーム分析を行うのだとご理解ください。

デイトレード以下の短期トレードで重要な1時間足


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1時間足は、日足を24本に分解したものです。
白い水平線は当日の高値赤い水平線は当日の安値です。

MEMO
ダウ理論で最も重要な論点
トレンドは明確な転換シグナルが発生するまでは継続する

このチャートを見て分かること

  1. 直近の安値109.715をつけた6月21日を基準日とみる
  2. 3営業日連続で、高値ラインと安値ラインを同時に切り上げ、階段状に上昇している
  3. これをダウ理論では上昇トレンド(上げダウ)と定義している
  4. 週末には高値、安値とも切り下げて、下落トレンド(下げダウ)に転じる可能性がある
    明確な転換シグナルに発展するかもしれない
ここで述べる上昇トレンド(上げダウ)、下落トレンド(下げダウ)は、あくまでもデイトレード以下の短期トレードで認識すべき足元のトレンドです。

ローソク足が、ディナポリチャートの3本のDMAと一目均衡表の雲も下抜いているため、上値が重く、下落のモメンタムが強い状態です。

着目するのは、週末の6月25日の安値110.481のサポートであり、110.719の終値から、このサポートラインまでの売りを考えるという戦略がトレンドフォローの基本です。

ただし、いちばん重要な日足では、上昇トレンドが継続中なので、突っ込み売りは禁物110.481(110.500の節目)のサポート近辺からの急反発には要注意と考えるのも、マルチタイムフレーム分析の優位性です。

  • 日足と1時間足でマルチタイムフレーム分析を緻密に行う
  • 15分足以下の周期のチャートで、リアルタイムに仕掛けと手仕舞いのタイミングを正確に計る
実際に、デイトレード以下の短期トレードを行う場合、もともと狙う値幅が5~50pips程度(ドル円の場合は30pips程度が限界)と小さいため、当日内のミクロな高値・安値の把握が必須です。

1pip単位の利益も取りこぼさないように、15分足、5分足、1分足も積極的に活用して、仕掛けと手仕舞いのタイミングを計ることが重要です。
事前の分析は日足と1時間足で十分ですが、トレード中にリアルタイムの値動きを観察するためのマルチタイムフレームです。

長期のポジショントレードで重要な月足


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このチャートを見て分かること

  1. 過去の重要な高値と安値
    11か所の具体的なチャートポイントは既に述べた
  2. 2011年10月31日の史上最安値 75.564
    それより前の値動きは、当面気にする必要なし
    アベノミクスと日銀の異次元緩和が相場を大きく変えてしまったから
長期のポジショントレードにおけるマルチタイムフレーム分析は、日足と月足だけ緻密に行えば全く問題ありません

これ以上、チャート分析を細かく行ってもあまり意味はなく、米国の金融正常化にともなう米国債相場(米国10年債利回り)、株式相場、コモディティ相場の今後の動向、米中関係などのファンダメンタル分析に注力したほうが効果的だと思います。

日々のルーティン

【全トレーダー共通】日足のテクニカル分析に磨きをかける

世界最高峰のテクニカル分析が可能なディナポリチャートを使用したケースです。

  1. ローソク足と3本のディナポリDMAとの関係性でトレンドを認識する
  2. ディナポリMACDで強いトレンドを認識する
  3. フィボナッチ・リトレースメントで38.1%の押し目、戻りを推定して、最善のエントリーチャンスを待つ
  4. フィボナッチ・エクスパンションで今後の高値のターゲットを設定する

デイトレード以下の短期トレードの場合

  1. 上記の日足のテクニカル分析に注力する
  2. 1時間足で、ダウ理論による足元のトレンドを正確に把握する
  3. 仕掛け、手仕舞いの判断のため、15分足以下で、当日の高値・安値をミクロに把握しておく

スイングトレードの場合

  1. 上記の日足のテクニカル分析に注力する
  2. 数週間レベルの仕掛けの場合、日足だけに集中して構わない
  3. 2~3日を想定した仕掛けの場合、1時間足で、ダウ理論による足元のトレンドを正確に把握しておく
  4. 仕掛け、手仕舞いの判断のため、15分足以下で、当日の高値・安値をミクロに把握しておく

長期のポジショントレードの場合

  1. 上記の日足のテクニカル分析に注力する
  2. 月足に表示される歴史的な高値・安値を頭の中に刷り込む
  3. ファンダメンタル分析能力を磨く

マルチタイムフレーム分析(MTF)は必須だが、正しい方法で行おう!

【おすすめ】マルチタイムフレーム分析に最適化されたMT4チャートセット


チャート画像をクリックするとフルHDの画面が開きます

2021年6月25日終値のドル円チャートです。

1分足から月足までの9周期が全て搭載されていますが
デイトレードの仕掛けと手仕舞いのリアルタイム判断で最重要の 1分足が右半分のスペースを占めます。
左半分上段には、5分足、15分足が並び
左半分下段には、1時間足、日足が並んでいます。

30分足、日足、週足、4時間足は、左半分の4分割画面の下に回り込んでスタンバイしています(見えなくてもチャートはリアルタイムで更新しています)が、タブをクリックすると前面に表示されます。
1分足から月足までの9周期について全て、個別に全画面表示も可能です。

デイトレード以下の短期トレードに最適化されていますが、スイングトレード、長期ポジショントレードにも効果的なチャートセットなので、おすすめします。

参考 上野式オリジナルMT4チャート【上野ひでのりプロFX】ディナポリチャートを活用した上野式精密水平線トレード

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参考 【無料】全65ページのFXトレードマニュアル上野ひでのりプロFX
FXトレードにおいて、マルチタイムフレーム分析(MTF)は必須ですが、長期ポジショントレード、スイングトレード、デイトレードそれぞれで、重要な周期は異なります。
どんなトレードでも、日足が最重要なので、いちばん時間をかけて丁寧に分析を行うべきです。
自分のトレードスタイルに合わせた、日足の次に優先順位の高い周期を絞り、メリハリをつけたマルチタイムフレーム分析を行うことをおすすめします。

上野ひでのり