下記の記事でこのように述べました。
パウエル議長はもともとハト派なので、記者会見のコメントの中に、つい甘さが出てしまうときがあるのですが、さっそく株価暴騰の資産効果を招いています。
これに慌てて、次回の公式コメントではタカ派的なコメントで鎮静化させようとすることも度々あったので、要注意です。
【FOMCで歴史的な転換点】2024年は資産バブルがやってくるか?
パウエルFRB議長が利下げ時期の検討を行ったことを認めるなど、想定外のハト派で驚きましたが、12月15日(金)にFOMCの副議長であるNY連銀のウィリアムズ総裁が下記のような発言を行ったのです。
「現在、利下げについて全く協議していない。3月利下げについて考えるのは時期尚早」
FOMC副議長は議長をサポートする立場で一枚岩のはずなのですが、いったいどうしたのでしょうか?
目次
パウエル発言によりNYダウが史上最高値更新で焦ったか?
FOMC後の記者会見でのパウエル発言により、ダウ平均株価は史上最高値を更新し、その後も続伸中です。
既述のように、パウエルさんはマーケットに対するコメントが甘い傾向があります。FOMC後の会見でつい本音をポロリと漏らすと、お調子者のマーケットはすぐに過熱しリスクオンになってしまいます。その後の発言で前言撤回まではいかないまでも、タカ派に引き締めてくる傾向がありました。
パウエル議長は弁護士でファンド経営者
パウエル議長が経済学者だと勘違いする人が多いのですが弁護士です。ECBラガルド総裁も同様です。
プライベート・エクイティ・ファンドであるカーライル・グループの元マネージングディレクターであり、歴代のFRB議長の中で最も個人資産が多い人物として有名です。
したがって、マーケットに対し理解があるというか、個人資産もマーケット次第というか、マーケットがクラッシュすると自分の懐も非常に痛むということで、マーケットへのリップサービスが多いのではと勘繰りたくもなります。
FOMCで反乱がおきている訳ではなさそう
議長が公式発言をした2日後に副議長が全否定する異例の事態は、FOMCの内部分裂をイメージさせますが、おそらくそうではないでしょう。
本来、パウエル議長本人がタカ派発言で引き締めるべきところ、ウィリアムズ副議長発言のスケジュールのほうが早かったので、そこで否定させたのではないかと推測します。
自分自身の発言を否定すると、一貫性のない人物と思われ信頼を無くしますが、他のメンバーからの発言であれば、「正式な議論ではなく、かつ意見が割れている」という意味で納得できなくもありません。
ウィリアムズ発言でも市場の動揺は一時的
その発言が伝わった瞬間には、米国10年債利回りは急騰しましたが、その後すぐに戻り売りに押されています。ドル相場もそれに連れて乱高下しました。
結局は、週末の米国10年債利回りは3.913%で引け、3.887%の安値からの戻りは弱い状況です。
ドル円の大引け終値は142.156で、安値140.954からの戻りはやはり鈍いです。
一方、ダウ平均株価の終値は37,305ドルで史上最高値で引けました。
マーケットの熱狂は今後も変わらない
パウエル議長の次の発言機会でも、タカ派な発言で引き締めてくる可能性が高いですが、それはいつものパターンです。
タカ派発言が伝わった瞬間には、ウィリアムズ発言と同様にリスクオフに傾くでしょうが、持続性は低いと思います。
【まとめ】FOMC要人発言より米国政府機関閉鎖で格下げのほうがリスク
新年度の2回目のつなぎ予算について、2024年1月19日、2月2日の2段階で期限がやってきます。
さらなるつなぎ予算を設定することが可能なのかは分かりませんが、永久に先送りにする訳にはいきません。
下院での与野党の分断、過半数を占める共和党内での分断が深刻で、簡単には予算が確定しそうもありません。
政府機関閉鎖となれば、ムーディーズがAAAの米国債格付けを引き下げるのがほぼ確実です。
「米国債下落=利回り上昇」となるので、ドル高・株安のリスクオフに転じる可能性が高くなります。