ゾーン「勝つ」相場心理学入門 | 著者への感謝と追悼の書評

トレードで一貫した勝者になるために重大な意義を持つ心理学的アプローチをご存知ですか?
優れた知性や市場分析力を持つ最高のアナリストが最悪のトレーダーという例は珍しくありません。
「ゾーン」とは、恐怖心ゼロ、悩みゼロ、淡々と直感的に行動し、反応すること。
学んでみましょう!


「ゾーン」とは、恐怖心ゼロ、悩みゼロ、淡々と直感的に行動し、反応すること

私は、大学で心理学を専攻し、米国NLP協会認定NLPプラクティショナーでもあり、投資家心理の専門家を自認していますので、この書籍を読んで新たに発見できる知見や事実は、多くはないと思っていましたが、一度、自身のトレード体系を、心理学的側面から、第三者の視点(コーチング)でチェックしてみようと思い、本書を手に取りました。

本書に関する詳細は、パンローリング社のサイトで確認してください。(PR)

当時の私は

  • トレーディング心理の理論や経験則として理解しているはずのこと
  • 日々の相場における無数の意思決定が一貫したメカニズムで行われているか
  • 後日客観的に分析したトレード成績の自己評価
これらの事象間で、乖離や矛盾が少なくないことは、本書を読む前から、はっきりと認識していました。

著者マーク・ダグラスが「はじめに」で述べた「大半のトレーダーは、自分のトレードの問題点がその考え方、つまりトレード中の思考内容の結果であると信じようとはしない」という指摘が、心に突き刺さりました。

私が15年以上かけて練り上げた自身のトレード手法(ルール)には明確な優位性があり、このルールに従う限り、私はマーケットから無限に利益を勝ち取ることができるという確固たる自信もありました(あるいは、あると無理矢理思い込んでいた?)。

しかし、「トレーダーが自分自身ですべき自己洞察と自己理解」に関して、トレード中の意思決定で、本当に的確に生かされているのだろうか?

「まえがき」を読んでいる時点から、心が揺らぎ始めたのは事実です。

一貫した勝者になるために重大な意義を持つ心理学的アプローチ

一貫した勝者になるためには、「知性」が決定要因になるのではなかったのです。
最初に最も衝撃を受けた指摘でした。

「一貫して負け続ける人々の大半を占めているのは医者、弁護士、エンジニア、科学者、経営者、裕福な退職者、創業者なのだ。また業界最高レベルのマーケット分析者の大半が、思いつくかぎり最悪のトレードをしている。知性と優れた市場分析はたしかに成功に寄与する。しかし勝者とその他を明確に区別する要素ではないのだ。

最高のトレーダーは他人とは違った考え方をする。

勝者はある種の心構え(独自の姿勢)を確立し、逆境にもかかわらず規律と集中力、そして何よりも自信を維持できるのだ。

「私が発見したのは、トレードが逆説と矛盾でぎっしり詰まっていることだ。(中略)トレードの本質をまとめた言葉を一つ選ばなければならないとすれば、『逆説』になるだろう。」

「金銭的・精神的苦痛がトレーダーに共通するのは、日常生活ではまったく当然で、また非常によく機能する物の見方、姿勢、原理の多くがトレード環境ではまったく逆に作用するからである。(中略)しかし、彼らにはトレーダーになるという意味、必要な技量、そしてこうした技量を磨くのに必要なレベルについての理解が、根本的に欠けているのである。」

以上、「ゾーン」P37~P39から引用

一貫した勝者は「リスクテイカー」であり、リスクに対し恐怖を持ってはならない。

最高のトレーダーは、いつなんどきでも、淡々としてリスクを取るだけではなく、リスクを許容し、ネガティブな感情(恐怖、怒り、欲求不満、不安、失望、裏切り、後悔)と完全に切り離さなければなりません。

最上級者は何のためらいも葛藤もなくトレードを仕掛ける。そしてトレードが機能しなくても、同じくらい何のためらいも葛藤もなく、容易にその事実を認める。たとえ含み損で手仕舞っても、不愉快な感情は微塵も見せない。つまりトレードに内在するリスクで、自分の規律、集中力、自信を失うことはないのである。

「裏を返せば、不愉快な気持ち(特に恐怖心)でトレードをしているのであれば、トレードに内在するリスクを受け入れる方法を学んでいないことになる。これは大きな問題だ。なぜならリスクが許容できない度合いとリスクを避けようとする度合いは比例するからだ。そして避けがたいものを避けようとする試みは、トレードを成功させる能力に壊滅的な打撃をもたらすのだ。」

「どんなに努力しても、リスクを本当に甘受できるようになるのは難しい。(中略)死ぬことや講演会への出演以外に、一般的に最も恐ろしいものを考えてほしい。損失と間違いは、両方ともそのリストの上位に位置するはずだ。したがって、間違いとそのうえに被った損を認めるのには、かなりの苦痛を感じる。」

以上、「ゾーン」P41から引用

続いて、著者マーク・ダグラスは、下記のように述べます。

「リスクを完璧に許容できるように自分の売買行動を再定義する方法の習得」=「売買技術の習得」である。「しかし、その能力開発に注目し、時間を費やしてその習得に努力するトレーダーは滅多にいない。」

一貫した勝利者とその他大勢との差が『最高のトレーダーは恐れない』という点以外にあるとは思えない。

「犯しがちなミスのうちの九五%は、間違い、損失、機会損失、利食い失敗に対する自分の姿勢から生じる。これらを私は、トレードの四大恐怖と呼んでいる。」

以上、「ゾーン」P42~P44から引用

なるほど。

私が確固たるトレード手法(ルール)を確立しており、どんなことがあっても自信を失わない。そう思っていたのは、実は幻想だと思い知りました。

私が常に感じていた恐怖心

私は、過去20年以上、日本の商品先物、個別株式、株価指数、WTI原油先物など、様々な分野でトレードを行ってきました。現状は、ほぼFXトレードに集中しています。

ファンダメンタルズ分析は大好きで、テクニカル分析の的確さについても自信があります。

ほとんど、3大通貨ペアであるEUR/USD、USD/JPY、GBP/USD相場に限定してトレードを行うので、値動きの特性を熟知し、インターバンクの向こうにいる相場参加者の思考パターンも、ほぼ正確に読み取ることができると自負しています。

したがって、ほとんど負けません。最初から計画して2~3分割で入れたナンピンの最初のオーダーがマイナスになることがあっても、統合されたポジション全体では、必ずプラスにしてトレードを終えます。

したがって、一日の勝率100%という日もざらにあります

私は、相場は何が起こるか分からない恐ろしい世界だと常に警戒していて、「この相場の流れなら、ほぼ完全に勝てる!」そう思うときにしかエントリーしません。

私は完全主義者ではありません。いい加減さや不条理も受け入れて生活をしています。
しかし、トレードの世界で勝率100%が続いてしまうと、些細な負けトレードも受け入れがたくなってくるのです。
「完全にエントリータイミングを間違えた」と思ったときにも、何とかゼロベースに戻せないかと待っているうちに、戻って微益で逃げられることもあり、ロスカットの痛みをほぼ感じずにトレードを行っていました。

しかし、いつも完璧にリスクを避け続けることはできません。
自信満々で仕掛けたトレードが失敗することも稀にありますが、それが失敗であるとなかなか認めることができないのです。
本来、失敗トレードの可能性を感じた時点で、何の躊躇もなく、ポジションをクローズ(ロスカット)しなければなりませんが、私はロスカット慣れしていないので、ズルズルと引っ張り続けていたのです。

コツコツ、ドカーンの典型ですね。
例えば、1か月で100残した利益を最終日の最後の1トレードだけで40飛ばすとか、そんな月が年に2~3度あったと思います。
幸い、月間利益を全て飛ばすような愚か者ではありませんので、まあ60残れば十分なのかもしれません。そう思っていました。

しかし、本書を読んで、私は常に恐怖心に支配され、リスクを許容することが全くできず、一貫した勝者のメンタリティには程遠いことを初めて思い知らされました

当時でも、プロ為替ディーラーとして、十分な収益を残すことができていましたが、「ゾーン」という本に出合うことがなかったら、恐怖心に支配され、いつも不快な気分で、平日の大半を占めるトレード時間を生涯過ごすことになっていたと思います。

リスクを完璧に許容できるように、自分の売買行動を再定義する方法の習得

先述した本来的な意味での「売買技術の習得」に励む毎日が続きました。

「ゾーン」を購入したのは、2005年7月の第3版です。
購入時に読んだときには、内容が難しくてよく理解できず、通読しましたが頭には何も残らず本棚の肥やしになりました。

今回語っている体験は、2019年に再度読み直したときのことです。

「ゾーン」の書評として、前半で少し引用し過ぎた感もありますが、私にとって、そこで語られていた本質論が最も魂を揺さぶった部分であり、その教え(コーチング)なくして、現在の私はないといっても過言ではありません

「リスクを完璧に許容できるように自分の売買行動を再定義」という点につき提示された方法論も、もちろん参考にはなりましたが、もはや本質を理解できているので、自分の恐怖心を制御できる売買手法をトライ&エラーで、現在に至るまでアップデートを継続できています。

トレードに対する恐怖心はかなりなくなってきましたが、どんなロスカットでも、トレードのコストとして当然に受け入れ、微塵も落胆、動揺しないというメンタリティには、まだ辿り着いていないと思います。

相変わらず勝率は高いので、めったにないロスカットでは、2年前ほどではありませんが、多少の落ち込みを自覚しています。
一貫した勝者=最上級者は、本当に何とも感じないので、まだまだ私の修行は続く、一生継続しなければと思います。

一貫した勝者=最上級者は、一般の社会のモラルから逸脱した変人である。

人間という動物が、ある心理的インプットをされたとき、常人とは全く違う、相場に最適化されたアウトプットを出すように訓練を続けることが「売買技術の習得」なのです。
ロスカットで大金がなくなっても、何の喪失感も感じないように、心理的に完璧な制御回路を構築しなければなりません。

トレード以外でも、感情の起伏をなるべく抑えるようなメンタリティになるでしょう。
人間らしい感情を大事にして豊かな人生を送りたい人は、トレードには絶対近づかないことをお勧めします。

私はゴルフが趣味で、頑張ってはいるものの、なかなかハンディキャップ10の壁を超えることができません。
トレードで努力していることをそのまま応用できると考えていて、そのロールモデルは、世界ランク1位のダスティン・ジョンソンです。
私もDJの不惑不動のメンタリティに近づくことができるよう頑張りたいと思います。

トレードで生涯成功したければ、変人扱いされる覚悟をもって「ゾーン」を読もう!

ここまでの私の話に共感していただけた方は、「ゾーン」読破に挑む資格があると思います。

ここでいうトレードとは、一般人が行う資産運用の話ではないのです。他人任せにせず、自分自身の力(メンタル)のみで、不条理なリスクに溢れたトレードの世界で一貫した勝利を手に入れるいばらの道を歩む覚悟が必要です。

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「ゾーン」は読みにくい。

「ゾーン」の読みにくさを、翻訳者のせいにしている方も散見されますが、決してそうではありません

著者のマーク・ダグラスは、プロアマ問わずトレーダー個人のコーチングを17年間続けた経験から、ゾーンの本質を顧客に真に理解させたい、正しい行動を起こさせたいと企図した場合には、様々なアプローチで何度も繰り返し気づきの機会を与える必要があると考えていたのだと思います。

また、サービス精神が旺盛なので、気づかせる、行動させるためのコーチング手法のバリエーションを詰め込み過ぎてしまったのだと思います。「ゾーン」が名著であることに疑いはありませんが、この試みは残念ながら失敗していると思います。
対面のコーチングとは違うので、構成にもう少し工夫が必要だったと思います。結果的に読解のハードルが上がってしまいました。

翻訳者の世良敬明氏も、「訳者まえがき」にて下記のように述べています。

「ダグラス氏の論理は、まず結論とキーワードを記してから、かなり遠くのほうへ話題を飛ばし、少しずつ元に戻ってくるような展開をする。その距離が壮大なため、戸惑いを感じる方もいるかもしれない。」

まさしくその通りで、私は心理学に通じ、トレード経験も豊富だったにも関わらず、最初2005年に読んだときには、さっぱり意味が理解できませんでした。全334ページ読了するのに3日もかかったと思います。

しかし、2009年に読み直したときには、私のトレーダーとしてのレベルが格段に上がり、ちょうど私の悩みのツボとシンクロしたのか、数時間で読み切ることができました
誤解のないように言っておきますが、内容がプロ向けという訳ではありません。初心者でも恩恵を受けられる機会は多いでしょう。
読むべきタイミングを選ぶというか、彼のコーチングが必要な状況下で読めば、これ以上ない特効薬になるということです。

今では、常に手元に置いて何度も読み返し、今は亡きマーク・ダグラス氏のコーチングを受け続けています。

DVD 「ゾーン」 プロトレーダー思考養成講座

「ゾーン」という本は本当に読みにくいので、ベストセラーであるものの、本当の意味で、著者の真のメッセージを受け取れた人は少ないと思います。

本DVD講座は、「ゾーン」 の入門編としておすすめします。

その点、この講座では、2015年に亡くなったマーク・ダグラス本人から、6時間弱にわたるコーチングが受けられるのです。

どんなに難解な文章を書く人でも、講演になれば、リアルタイムで聴衆に理解してもらえるように、平易な表現を使っていちばん伝えたいコアのテーマをじっくり話すものです。

実際に、彼はとても饒舌に喋りまくります。セミナー参加者とのコミュニケーションを上手くとりながら説得力のある話を繰り広げます。「あれ?この人、こんなに喋りが上手いんだ」と驚嘆しました。

書籍とは違って、本当に話が分かりやすいです。同じ6時間使うなら、書籍「ゾーン」の10倍理解が深まると思いました。

「ゾーン」が334ページもの分厚い本で、「ゾーン最終章」はそれを上回る553ページもあるのは、彼が個人トレーダーに対し、いかに伝えたいことが多いのか、いや本当は、伝えたい本質は限られるが、様々な事例を挙げて説明しないと伝わらない、理解されないことを長年のコーチングの経験上よく分かっているから、そうならざるを得なかったのだと思います。

最上級のトレーダーなので変わり者であることは間違いないでしょうが、「あ、マーク・ダグラスって、いい人だなあ…」としみじみ感じ入りました。収録は亡くなる1年ほど前と思われ、65~66歳の彼の熱弁に引き込まれます。実年齢よりかなり若く見えます。

おそらく死期を悟って、自分が生きた証を残したい一心だったのかなと推察します。「ゾーン最終章」は死後、未亡人によって発表されましたが、最後の最後まで、いかに個人トレーダーに対するコーチングに熱量を注いでいたかが分かります
本当に惜しい人を亡くしました。心より感謝と尊敬の念を示すとともに、ご冥福をお祈りいたします。

まずは、こちらのDVD講座を受講されれば、「ゾーン」だけでく、「ゾーン最終章」も一気に読了できるだけの能力が開発されると思いますので、本当におすすめです。おすすめ度は過去ナンバーワンで間違いありません。

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ゾーン 最終章 トレーダーで成功するためのマーク・ダグラスからの最後のアドバイス

故マーク・ダグラスが書き残した原稿を妻であるポーラ・ウエッブが電子出版した“The Complete Trader”の邦訳です。

マーク・ダグラスの遺言とトレーダーで成功する秘訣
トレード心理学の大家の集大成!

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上野ひでのり