この月報では、中央銀行のマネタリーベース比率だけを使い、4つの主要通貨ペアについて実勢為替との現在地を定点観測します。
実勢値は市場の為替レート、ソロス理論値は中央銀行のマネタリーベース比率によるモデル値、乖離は実勢値からソロス理論値を引いた差額です。
| 通貨ペア | 実勢値 | ソロス理論値 | 水準差 | 12か月変化 |
|---|---|---|---|---|
| USD/JPY | 157.40 | 97.77 | 1.61倍 実勢値>ソロス理論値 | 実勢 +6.41% 理論 -14.73% |
| EUR/USD | 1.1328 | 1.3883 | 1.23倍 実勢値<ソロス理論値 | 実勢 -3.46% 理論 +10.85% |
| EUR/JPY | 178.32 | 135.74 | 1.31倍 実勢値>ソロス理論値 | 実勢 +2.74% 理論 -5.47% |
| GBP/USD | 1.3262 | 1.2952 水準調整後 | 1.02倍 実勢値>ソロス理論値 | 実勢 -1.37% 理論 +1.12% |
目次
1. 総評|4通貨ペアから見る今月の構造
2026年9月時点の4通貨ペアを横断すると、USD/JPY、EUR/JPY、GBP/USDの3ペアで実勢値がソロス理論値を上回っています。
一方でEUR/USDのみ、実勢値がソロス理論値を下回る位置にあります。
12か月変化の方向に目を向けると、今月は方向が一致する通貨ペアが1つもありません。
4つの主要通貨ペアすべてにおいて、実勢為替とソロス理論値の前年比変化が逆行しています。
各国のマネタリーベース前年比は、米ドルが-0.51%、英ポンドが-1.62%と小幅な減少にとどまっています。
これに対し、ユーロは-10.26%、日本円は-15.17%と2桁の減少を記録しており、4通貨すべてが前年比マイナスの中でも縮小ペースに明確な差があります。
前月からの水準差の変化を見ると、USD/JPYとEUR/USDの2ペアで水準差が拡大し、EUR/JPYとGBP/USDの2ペアでは縮小しました。
米ドル絡みの主要ペアで倍率の開きが大きくなった一方、クロス円とポンドドルでは差が縮まる対照的な動きです。
今月もっとも特徴的な構造は、日本円とユーロのマネタリーベースが大きく減少するもとで、全ペアの12か月変化が実勢と理論値で逆向きになっている点です。
特に円絡みの2ペアでは、モデル上の円高方向への変化と実勢の円安方向の動きが対比される構図となっています。
2. USD/JPY|ドル円の現在地
USD/JPYの実勢値は157.40円、ソロス理論値は97.77円となり、実勢値がソロス理論値を59.63円上回っています。
両者の水準差は1.61倍であり、観測対象の4通貨ペアの中で最も大きな倍率差です。
12か月変化を見ると、実勢値が前年比+6.41%と上昇した一方、ソロス理論値は前年比-14.73%と大きく低下し、両者の方向は逆行しました。
水準の上下関係だけでなく、1年間の変化方向でも実勢とモデル値の違いが際立っています。
このソロス理論値の低下には、日米の中央銀行マネーの変化率の差が直接表れています。
FRBのマネタリーベース前年比が-0.51%とほぼ横ばい圏にあるのに対し、日銀は-15.17%と大幅に減少しており、比率の上で理論値を押し下げました。
単月の動きでは、実勢値が前月比-1.47%、ソロス理論値が前月比-2.56%とともに低下しました。
ソロス理論値の低下率が実勢値を上回った結果、水準差は前月から拡大しています。
現在のUSD/JPYは、日銀のマネタリーベース縮小を背景にソロス理論値が100円を下回る一方、実勢値は157円台に位置し、1.61倍の水準差を伴う構造にあります。
3. EUR/USD|ユーロドルの現在地
EUR/USDの実勢値は1.1328、ソロス理論値は1.3883であり、4通貨ペアの中で唯一、実勢値がソロス理論値を下回っています。
実勢値からソロス理論値を引いた差額は-0.2554です。
現在の水準差は1.23倍となっています。
前月比で実勢値が-2.49%と低下し、ソロス理論値が+1.55%と上昇したため、両者の水準差は前月から拡大しました。
12か月変化においても、実勢値が前年比-3.46%と低下したのに対し、ソロス理論値は前年比+10.85%と上昇しており、方向は逆行しています。
中央銀行マネーの前年比は、ECBの-10.26%に対してFRBが-0.51%となり、ユーロのマネタリーベース減少幅が米ドルを大きく上回っています。
この相対的な供給量の変化が、モデル上のユーロ高・ドル安方向への上昇として表れています。
現在のEUR/USDは、ソロス理論値が実勢値を上回る水準関係のもとで、単月でも前年比でも両者が逆方向へ動き、水準差が前月から拡大した状態にあります。
4. EUR/JPY|ユーロ円の現在地
EUR/JPYの実勢値は178.32円、ソロス理論値は135.74円となり、実勢値がソロス理論値を42.58円上回っています。
両者の水準差は1.31倍で、USD/JPYに次いで実勢値が理論値を上回る幅が大きいペアです。
12か月変化を見ると、実勢値は前年比+2.74%と上昇した一方、ソロス理論値は前年比-5.47%と低下しました。
他の通貨ペアと同様に、実勢とソロス理論値の12か月変化方向は逆行しています。
マネタリーベース前年比は、ECBが-10.26%、日銀が-15.17%と双方とも2桁の減少となっています。
ユーロ以上に日本円のマネタリーベース減少率が大きいため、比率から算出されるソロス理論値は前年比で低下しました。
前月比では実勢値が-3.91%、ソロス理論値が-1.05%とともに低下しました。
実勢値の低下率がソロス理論値の低下率を上回ったことで、両者の水準差は前月から縮小しています。
現在のEUR/JPYは、実勢値がソロス理論値を上回り12か月方向も逆行する構造にあるものの、単月の実勢下落によって前月より水準差が縮小した位置にあります。
5. GBP/USD|ポンドドルの現在地
GBP/USDのソロス理論値は、生のマネタリーベース比率と実勢為替の表示水準が大きく異なるため、長期的な変化を比較しやすくする目的で固定係数による水準調整を行っています。
固定係数による水準調整後のソロス理論値は1.2952、実勢値は1.3262です。
実勢値がソロス理論値を0.0310上回っており、水準差は1.02倍と前月から縮小しました。
変化方向に注目すると、実勢値は前年比-1.37%と低下した一方、ソロス理論値は前年比+1.12%と上昇しています。
変化幅はともに1%台と小幅ですが、実勢とソロス理論値の12か月方向は逆行しています。
中央銀行マネーの前年比は、BOEが-1.62%、FRBが-0.51%と、日銀やECBに比べて双方とも小幅な減少にとどまっています。
英ポンドの減少率が米ドルをやや上回ることが、ソロス理論値の小幅な前年比上昇に表れています。
また、前月比でも実勢値が-2.12%と低下し、ソロス理論値が+0.47%と上昇しました。
現在のGBP/USDは、米英のマネタリーベース変化がともに小さいなかで、実勢と理論値が逆方向へ小幅に動いている構造です。
6. 本レポートについて
「ソロス理論値」は、各中央銀行のマネタリーベースの相対量から算出したモデル値です。適正価格、均衡為替レート、将来の到達水準を示すものではありません。通貨ペアごとに実勢為替との関係は異なります。GBP/USDは長期的な変化比較のため、事前に定めた固定係数による水準調整を行っています。算出方法、長期検証結果、モデルの限界については研究ハブで詳しく解説します。
数値計算と検証はPythonで行い、検証済みデータをもとにLLMを文章化支援に使用しています。
最終的な分析内容の確認・監修および文責は上野ひでのりが負います。



