【FRBタカ派の幻影と運命の雇用統計】ドル円大幅反落の可能性に注目

本日のテーマ

米独立記念日の3連休を控え、
本日7月2日(木)21:30に前倒しで発表される「6月米国雇用統計」を前に、
為替市場の緊張感が高まってます。

昨夜のNY為替市場では、一時ドル売りの動きが優勢となり、
ドル円は162.288まで値を落とす場面が見られました。

市場を動かしたのは、ウォーシュFRB議長の発言です。
議長は新体制の規律(フォワードガイダンス廃止)に従い
金利の具体的な先行きについては明言を避けたものの、
「過去4週間でインフレリスクは低下している」との認識を表明。

この一言に市場は敏感に反応しました。

一部の市場関係者からは
「政府の介入がなければ165円、場合によっては170円まで上値余地がある」
といった極端な円安論も飛び出していますが、
それは単に一本調子のトレンドの先を盲信している偏った意見に過ぎません。

今回は、過熱する「年内利上げ確率84.8%」という数字の裏にある
ウォーシュ議長の本音と、
今夜の雇用統計がもたらすゲームチェンジの可能性について解説します。

上野ひでのり本日の視点

1.「インフレリスク低下」を指摘するウォーシュはタカ派ではない

結論から述べれば、
ウォーシュFRB議長の本質は決して「タカ派」とは言えません。

デビュー戦のFOMCで見せた強烈な物価安定への姿勢は、
何度も指摘してきた通り、新議長としての信認を早期に確立し、
市場のインフレ期待をへし折るための
高度なポリティカル・アクション(政治的演出)です。

実体経済のデータを見れば、賞味期限が切れつつあることは明らかです。
イラン和平による原油価格の急落を背景に、
議長自身が「過去4週間でインフレリスクは低下している」と明言しました。

マクロのインフレ見通しが完全にフラット、
あるいは低下方向に向かっているこの状況下で、
FRBがさらに利上げを強行する合理的理由はどこにもありません。

昨夜、米10年債利回りは4.501%まで上昇した後に反落し、
FedWatch Toolによる年内利上げ確率は84.8%と未だに高止まりしていますが、
これは市場が議長の「タカ派のフリ」という幻影から
未だに目を覚ましていない証拠です。

実際のFRBのスタンスは、
現在の3.50~3.75%という十分に引き締め的な政策金利を、
長期間にわたって据え置く方針であると見るのが妥当だと思います。

2.ADP雇用者数とISM製造業が示唆する雇用統計の悪化

金利引き締めの根拠とされてきた米国の「強い労働市場」にも、
明確な綻び(減速)が出始めています。

昨夜発表された前哨戦となる米経済指標は、
市場予想を裏切る弱い結果となりました。

先行指標であるADP雇用者数、およびISM製造業景況指数が
いずれも事前予想を下回ったのです。

先行指標の下振れドミノは、
今夜21:30に発表される本番の米国雇用統計にも波及する可能性があります。
昨夜のADP下振れを受けてもなお、
市場の事前予想値は、下記の通り、据え置かれたままです。

【今夜21:30発表:6月 米国雇用統計・事前予想】
・非農業部門雇用者数(NFP):予想11.4万人 (前回:17.2万人)
・失業率:4.3% (前回:4.3%)
・平均時給(前月比):0.3% (前回:0.3%)

すでに予想の段階で、前回の17.2万人から「11.4万人」への
大幅な減速が織り込まれていますが、
NFPが10万人を割り込むようなさらなる下振れサプライズや、
失業率が4.4%台へ悪化するシナリオも十分あり得る状況です。

もし今夜、米国の雇用悪化がデータとして突きつけられれば、
「インフレリスクの低下」と相まって、
FRBの金利据え置き(利上げ見送り)の蓋然性はより一層高まります。

それは、市場が盲信してきた年内利上げ確率84.8%
という巨大なハシゴが一気に外されることを意味します。

3.【クオンツ的視点】170円論の盲点と、近づく下落方向へのバイアス

こうしたマクロの転換点が迫っているにもかかわらず、
足元では「165円・170円論」といった
極端な一方通行のトレンド追随意見が闊歩しています。

しかし、クオンツ的な確率分布の見方からすれば、
このような時こそ最も危険な局面です。

現在のドル円は、テクニカル的な上昇のエネルギーが限界まで絞り出された
「バイイング・クライマックス」の様相を呈しています。

上下どちらにも確率は分布していますが、
「どちらかと言えばここからは、
下落方向(ドル急落)への警戒を最大化すべき局面が近づいている」
というのが、数理モデルが弾き出す冷徹なアラートです。

なお、本日の正午過ぎには日本の10年物国債の入札結果が発表されます。
もしこの入札結果が悪く、日本の長期金利が急騰するような場面が仮にあれば、
一時的に日銀への不信感から円が売られる(ドル円が上を試す)
突発的なフローが出るかもしれません。

しかし、それはあくまで日中の局所的なノイズに過ぎません。
本日の本丸は、夜の米国指標です。

4.【結論】今夜21:30、相場のルールが変わるか

今夜の米国雇用統計は、
これまでの「全面ドル高・タカ派FRB」という相場のゲームのルールを…

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