ドル円為替介入の絶対防衛ラインは150円と判明

先週、為替介入に関する緊急連載を行いました。
「為替介入の水準と時期を大胆予測」と「トレード戦略」Part1
「為替介入の水準と時期を大胆予測」と「トレード戦略」Part2
「為替介入の水準と時期を大胆予測」と「トレード戦略」Part3

「ずばり最初の為替介入のターゲットは、150~151.946のゾーン」とお知らせしましたが、「150円に到達したら即執行」という臨戦態勢であることが今週明確化しました。
ニューヨークで国連総会が開催中であり、岸田首相と米国首脳との面談のチャンスも多い環境下で、イエレン財務長官が日本の通貨当局による為替介入に理解を示す発言行ったことが、口先介入の警戒度最高レベルであることを特に印象づけたと思います。

米財務長官、日本の為替介入に理解

(以下、Bloombergの2023年9月20日 7:21 JSTの記事抜粋)

イエレン米財務長官は19日、日本の通貨当局による円相場下支えの外国為替市場介入について、為替レートの水準に影響を及ぼすことでなく、ボラティリティーを滑らかにするスムージングが目的であれば、理解できるとの認識を明らかにした。ニューヨークで開催中の国連総会の場で記者団に語った。

日本の通貨当局が外為市場で円買い介入に動く場合、米財務省は容認するかとの質問に対し、イエレン財務長官は「大いに詳細に左右されるだろう。こうした介入について、われわれはいつも彼らと連絡を取り合っている」と答えた。

昨年行われた3回(実質2回)の大規模な為替介入について、覆面介入の手法を取り、実施後にはノーコメントで市場参加者に恐怖感を植え付けることに成功しました。今回は前回の成功を踏み台にして、最初のトリガーを引く前に、できるだけ脅しを効かせる作戦であろうと思います。
昨年の介入の原資は外国証券であったことも後に判明し、今回は「イエレン氏の容認を取り付けているならば、米国債売りの可能性も排除せず無尽蔵の介入資金がある」という強烈なプレッシャーを与えることに成功していると思います。

日銀会合結果発表直前に最後通告

9月22日(金)の早朝7時過ぎ、国連総会から帰国直前の岸田首相が下記のように発言しました。
「日本はいかなる選択肢も排除することなく必要な措置を講じる。過度な為替変動に対して高い緊張感をもって注視、各国間で緊密に意思疎通を図っている」

続く午前中の、鈴木財務相の発言は下記の通りです。
「為替変動に伴う介入効果について、過度な変動を安定化させる意義がある」
「イエレン米財務長官をはじめ海外通貨当局とは密接な意思疎通を図っている」
「過度な変動は望ましくないとの認識を共有している」
「急激な変動にはあらゆる選択肢を排除せず、適切に対応していく」
「引き続き高い緊張感を持って注視する」

前回の連載Part2でも言及した通り、この発言内容は、口先介入警戒度【7段階のバロメーター】の最高レベルであり、最後通告であると市場参加者は理解しました

したがって、11:52に日銀金融政策決定会合の結果発表の声明文が発表され、全くタカ派ニュアンスがない現状維持の決定に対しても、ドル円レートは50銭程度の上ブレ(147.69⇒148.17)に留まりました。予防的な口先介入がなければ、一気に149円台に乗せたかもしれません。

日銀植田総裁も危機感を共有し連携しているのは間違いない

前任の黒田総裁とは違い、日銀の責務である「物価の安定=年率2%程度の基調インフレ」を目指すために、過度な為替変動によりコストプッシュ型のヘッドライン・インフレを加速させる危険性を注視し、これを排除したい意向があります。
当然のこと、為替の水準に関して物申したり、金融政策で円安を抑え込むという立場にはありませんので、表立っては発言・行動はできないものの、財務省と150円の絶対防衛ラインについて危機感を共有し連携していることは間違いないところです。

15:30開始の記者会見でも、危機感を隠すことなく質疑応答に応えていました。
そういう態度から、「年内のゼロ金利解除もあり得る」という含みを持たせることに成功しています。実際には、賃金の伸びを抑制する可能性が高い政策を来年の春闘前に決定する可能性は低いのですが、日銀総裁が円安に危機感を持っていることは重みのある事実です。
市場参加者が本当に恐れるのは通貨当局ではなく、金融政策を司る中央銀行なので、現在の連携体制は効果的だと思います。

金曜日24時の恐怖

9月22日が金曜日であったことも、2022年10月21日(金)24時に開始となり、24日(月)早朝まで6.3兆円規模で続いた為替介入を想起させたと思います。規模的にも、実施時間帯としても異例中の異例の覆面介入でした。
週末のクローズに向けて、円売りポジションの値洗い益を大幅に悪化させるようなトリガーは引きたくないという心理が働いたことは間違いないでしょう。一日の変動幅は95銭に過ぎず、日銀金融政策決定会合の当日としては異例のボラティリティの低さでした。

しかし150円到達⇒為替介入実行は時間の問題

今週のドル円の高値は148.46で、150円の節目まで1円54銭(154pips)まで迫りました。大手投機筋がその気になれば1時間以内にでも到達できる水準です。

HFT(High Frequency Trading)つまり特定のアルゴリズムを仕込んだ高速・高頻度の自動売買システムを使い、下記のようなトレードも可能になります。
1.148台ミドルから大量の買い注文を入れる
2.相場が急騰する
3.150円近くで利益確定および大量の売り注文を入れる
4.為替介入と同期して売り玉の利益が膨らむ
5.145円を目安に利益確定
6.ドテンで大量の買い注文を入れる

実際に為替介入があるか否かは関係なく、他の市場参加者がそう思えば売りが売りを呼ぶ展開になるため、上記3.以降の戦略は有効になると思います。
私たち個人トレーダーがHFTの速い動きに完全に追従することは難しくとも、空売りで1~2円程度の利益を抜くことは可能だと思いますし、145円での押し目買いは指値を入れておけば全く問題なく執行できるでしょう。

という訳で、来週は臨戦態勢を整えておくべきかと思います。トレードにあたっての注意点はバックナンバーでご確認ください。

「為替介入の水準と時期を大胆予測」と「トレード戦略」Part1
「為替介入の水準と時期を大胆予測」と「トレード戦略」Part2
「為替介入の水準と時期を大胆予測」と「トレード戦略」Part3