結果を踏まえて、ポッドキャストで音声解説を追加しました。
上野ひでのり
目次
RBA理事会の結果速報 2022年2月1日(火)発表
インフレ率が2.6%とターゲットを超えたが、利上げは時期尚早
参考 フィリップ・ロウ総裁の声明:金融政策決定【メディアリリース】Reserve Bank of Australia 下記決定は市場の予想通り- 政策金利は0.10%に据え置き
- 量的緩和(債券購入プログラム)は2月10日で終了
インフレ率はRBAの予想よりも早く回復したが、他の多くの国よりも低いままだ。
総合CPIは3.5%であり、ガソリン価格の上昇、新築住宅の価格の上昇、世界的なサプライチェーンの混乱の影響を受けている。
インフレ率(コアCPI)は2.6%である。
供給制約が解決され消費活動が正常化するにつれて、インフレ率は今後数四半期で約3.25%まで上昇し、その後2023年には約2.75%に低下すると予測されている。
実際のインフレ率が持続的に2~3%の目標範囲内に収まるまで利上げは行わない。
インフレ率は上昇しているものの、それが持続的に目標範囲内にあると結論付けるのは時期尚早である。
供給制約が解決されるにつれ、インフレ率の上昇がどれほど持続するかについては不確実性がある。
賃金の伸びも緩やかなままであり、賃金の伸びとインフレ率の上昇速度が一致するまで、しばらく時間がかかる可能性がある。
RBAは、今後のインフレの進展を監視し、辛抱強く待つ準備ができている。
第1四半期のインフレ率発表の4月まで、RBAのスタンスに変化ない見込み
「インフレ率は今後数四半期で約3.25%まで上昇」と布石を打ち、賃金上昇が伴わなければ利上げを行わないと述べているので、少なくともあと3か月は、利上げ議論を封印したことになる。
豪ドル失望売り
ロウRBA総裁のスタンス声明内容は、ある程度予想されたことであり意外感はないが、もう一歩踏み込んだ(利上げに向けた)経済見通しを示すことを期待した市場は、失望売りで応じた。
2022年に複数回の利上げ期待が高まっている
RBA理事会の開催日程
1月を除く、毎月第一火曜日開催、年11回
金融先物市場では0.10%⇒0.75%の利上げを見込む
現状の政策金利は過去最低の0.1%
2022年末までに小幅利上げを計3回実施し、0.75%までの利上げを見込む。
5月までに0.15%の最初の利上げを、ほぼ100%の確率で織り込んでいる。
市場期待とRBAのスタンスのズレが大きく、コミュニケーションロス
後述するRBAの公式な見解では、2022年度の利上げの可能性は非常に低いと強調している。
利上げ期待の背景
雇用統計が絶好調。失業率4.2%
1月20日(木)に発表された豪州12月雇用統計で、失業率4.2%(前回11月は4.6%)が2008年以来の低さに改善した。
失業率が最後に4%を下回ったのは1970年代まで遡る。
パンデミック下の豪州経済の力強さが鮮明になっている。
消費者物価指数(コアCPI)が+2.6%で7年半ぶりの高い伸び
1月25日(火)に発表された2021年第4四半期のコアCPIは前年同期比+2.6%で、2014年以来の大幅な伸びとなった。
総合CPIは前年同期比+3.5%となった。
燃料や住宅価格を中心に幅広い分野でインフレ圧力が確認された。
コアCPI(RBAトリム平均値)は前期比+1.0%(予想+0.7%)、前年同期比+2.6%(予想+2.4%)
RBA目標レンジは+2.0~3.0%(中央値+2.5%)であり、これを上回ってきた。
前回2022年12月7日のRBAのスタンス
インフレ率について
インフレ率は上昇したが、コアインフレ率は前年同期比2.1%上昇(第3四半期)とまだ低い。
総合CPIは前年比3%上昇(第3四半期)であり、ガソリン価格や新築住宅の価格上昇、世界的なサプライチェーンの寸断の影響を受けている。
コアインフレ率は緩やかな回復が予想される。
フォワードガイダンス(金融政策指針)
インフレが持続的に+2.0~3.0%の物価目標の範囲内に収まると確信するまで、政策金利を引き上げない。
RBAの予想インフレ率
2021年末+2.25%、2022年末+2.50%
ロウRBA総裁発言
「コアインフレ率は低い水準で推移しており、インフレ圧力も他の多くの国に比べて弱い。特に賃金の伸びがわずかなためだ」
と述べ、フォワードガイダンスを維持した。
後日、12月16日の講演での発言
ロイター記事原文
2022年2月1日(火)12:30 RBA理事会の結果発表予想
市場予想
- 政策金利は0.10%で据え置き
- 2月中旬まで週40億豪ドルとしていた資産買入れプログラムを終了する
コアCPIの評価と利上げ時期の前倒しについて
前回までのように「ガソリン価格や新築住宅の価格上昇、世界的なサプライチェーンの寸断の影響」などの理由で、+2.6%のコアCPIを過小評価する可能性がある。
しかし、隣国NZは既に2回の利上げ実施、次回(2/23)も利上げ予想、カナダも3月からの利上げを織り込み、RBAのみハト派姿勢を維持することは難しいだろう。
豪州のCPIは、4半期に一度しか発表されないため、今回はいったん様子見スタンスが示されれば、次回4月発表のコアCPIの結果次第で、5月に利上げ方針を決定、6月から利上げ実施の流れが想定される。
RBA理事会後の豪ドル米ドル、豪ドル円の相場予想
ハト派維持で失望売り
前回の景気判断の現状維持はあり得ないが、利上げには慎重姿勢を見せることで、失望売りを誘う可能性が高いと考える。
世界同時株安で売り
資産バブル崩壊で、リスク資産通貨である豪ドルは売り
中国景気後退・人民元高抑制で売り
中国不動産開発大手の中国恒大集団の経営危機で明らかになった不動産バブルの崩壊など、中国景気の後退局面入りが明らかである。
これに呼応する形で、中国人民銀行(PBOC)は2021年12月9日に外貨預金準備率を7%から9%へ2ポイント引き上げると発表し、元高抑制に向けた政策を打ち出した。
国内市場のドルや他通貨の供給を事実上削減する動きで、人民元の下押し圧力になる。