ECBの利上げは2023年初まで後ずれ観測台頭。エネルギー価格インフレ継続の見通しで

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ECBの利上げは2023年初まで後ずれ観測台頭。エネルギー価格インフレ継続の見通しで
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ECBレーン専務理事の発言が豹変

2/23(水)には「ECBは早期の債券買い入れ終了」を示唆

レーン氏はECB専務理事兼主任エコノミストである。
ウクライナ開戦の前日の発言は、下記のページを参照
【ユーロドル見通し】ECBは年内利上げ体制を整えるも、ウクライナ問題がどの程度影響するか? ウクライナ開戦直前の短期金融市場の織り込みは下記の通り

年内2回の利上げ
7/21までに量的緩和終了を決定
9/8、12/15の2回の利上げを見込む
-0.50%の中銀預金金利をゼロに戻す

3/1(火)には一転して慎重な発言

レーン専務理事兼主任エコノミストの発言
戦争の影響を見極める前に刺激策を解除すべきでない。
ECBの早まった措置はユーロ圏の景気後退を招く。

ウクライナ開戦後の最も象徴的な現象

WTI原油先物は100ドルを大きく超えて上伸中

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2022年3月2日(水)の高値は、111.48ドルまで達した。

ロシア産エネルギー、穀物を中心にさらなるインフレが高進の見込み

欧州連合(EU)は2日、ロシアへの追加の経済制裁として同国2位のVTBバンクなど大手7行を国際的な資金決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除することで合意した。
ロシアには約300の銀行があるが、まず大手行を対象に国際決済から締め出す。
欧州のエネルギー調達への影響を抑えるため、最大手のズベルバンクとエネルギー部門に強いガスプロムバンクは排除を見送った。

参考 ロシア7銀行をSWIFTから排除 EU決定、最大手は対象外: 日本経済新聞日本経済新聞 最も心配されたウクライナ経由の天然ガスの供給の停止は現状でも確認されておらず、ウクライナ開戦後にはかえって増加しているとの情報もあった。
SWIFT排除からの除外措置により、欧州へのエネルギー供給という点で大きな支障がなさそうであり、インフレ率上昇に歯止めがかからず、スタグフレーション入り懸念は、多少和らいだ印象である。

年内利上げ遠のき、ユーロ圏消費者物価指数(HICP)にも無反応

短期金融市場では、2023年初に0.25%に利上げ開始まで見通し後退

前述の通り、今年9月、12月に0.25%ずつの利上げ織り込みからは、かなり後退している。

ウクライナ開戦がなければ、最注目の3/2(水)のHICPだったはずが…

3月2日(水)19:00発表 ユーロ圏消費者物価指数(HICP)前年同月比

  • 結果+5.9%
  • 予想+5.4%
  • 前回+5.1%
2/2(水)に発表された+5.1%という数字がECB理事会に大きな衝撃を与え、2/3(木)のラガルド総裁会見で急激なタカ派転換となった訳である。
今回は、それを遥かに上回る高いインフレ率であるが、ウクライナ開戦によるロシア産資源の供給制約の問題が、あまりに大きすぎて、今回は全く注目されなかった。

10日(木)のECB理事会は現状維持が確定的

インフレ率のピークが全く読めない状況

ウクライナ開戦がなければ、驚異的な+5.9%のHICPは、ECB理事会のタカ派的な決断を促したことが間違いない。
しかし、現状では、インフレ率のピークだけでなく、景気後退の可能性(スタグフレーション)リスクも台頭し、金融正常化の議論は完全に吹っ飛んでしまった。

ユーロドルは年初来安値を更新で弱気継続

10日(木)のECB理事会の金融正常化への出口議論により、ユーロ相場が強含む見通しは大きく後退。
2日(水)のロンドンタイム序盤には、ユーロドルは1.10588の年初来安値=2020年6月ぶりの安値を記録している。
1.1の大台割れも視野に入っている。