WTI原油先物は100ドル到達間近か?米国在庫が4年ぶりの低水準。地政学的リスクも継続中

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WTI原油先物は100ドル到達間近か?米国在庫が4年ぶりの低水準。地政学的リスクも継続中
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2月9日(水)発表 米国週間原油在庫

2018年ぶりの低水準

米国週間原油庫在庫(2/4時点)、前週比、単位:バレル

  • 原油在庫:−475.6万(予想:+150万、前回:-104.7万)
  • オクラホマ州クッシング在庫:−280.1万(前回:-117.3万)
  • ガソリン在庫:−164.4万(予想:+150万、前回:+211.9万)
  • 留出油在庫:−93万(予想:-150万、前回:-241万)
  • 精製設備稼働率:88.2%(前回:86.7%)

原油在庫、ガソリン在庫とも先週比で増加予想が、逆に大幅な減少で、大きなサプライズとなり、90ドル台を回復

ウクライナ問題が最大のリスク

ウクライナ問題で天然ガス価格急騰、割安な原油が代替に

EUは、天然ガスの輸入の4割をロシア産に依存しているが、ウクライナ情勢の悪化により価格が急騰している。
ロシアが、ウクライナ問題の駆け引きとして、意図的に供給を絞っているため、記録的な価格上昇を招いたと考えられる。

仮に、戦争が勃発すれば、欧米のロシアに対する経済制裁の報復として、さらに天然ガスの供給が滞る不安があり、その場合、価格は原油換算で200~250ドルまで達する可能性があるという。
EUでは、ロシア以外の調達ルート確保に躍起であるが、代替エネルギーとして、割安な石炭を買い入れる動きが加速している。
原油の需要も高まる見込みだ。

7年ぶりの高値圏にあるWTI原油先物の直近高値は93.14ドルまで達したが、現時点で既に天然ガス価格よりも割安水準であるという。
EUで、原油が天然ガスの代替エネルギーとされれば、世界の原油価格は10~15%上昇する可能性が高いとされ、WTI原油先物が100ドルを突破するのは、ほぼ確実である。

OPECプラスの生産量は目標を下回る

市場では供給懸念が広がる

石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの非加盟の産油国で構成する「OPECプラス」は、現行通り、増産ペースを3月以降も維持する方針を示したが、国際エネルギー機関(IEA)の推定によると、昨年12月の生産量は目標を下回ったという。
市場では供給懸念が広がり、原油価格を押し上げた。
米国の寒波の影響で、南部や中西部などの国内の生産が滞るとの見方も供給懸念に拍車をかけている。

世界経済に与える影響

  1. EUの電力、冬場の暖房コストが跳ね上がる
  2. 石油製品の原材料費が高騰し、物価高が加速する
  3. 燃料費の上昇で輸送コストが高騰し、供給制約に拍車をかける
  4. 欧米のインフレ率が高止まりして、中銀が引き締め姿勢を強める
ウクライナ問題で最も経済的な打撃を受けるのはEUであり、ユーロ圏のインフレがさらに加速し、今後の経済見通しも悪化するため、ECBのタカ派スタンスが強まる前に、強烈なユーロ売りが待っているだろう。

英国に関しては、北海油田を保有する産油国であるため、EUほど影響を受けないと考えられる。