【FRBのリーク記事担当】WSJのニック・ティミラオス氏をフォローしよう!

下記の記事でも述べた通り、FRB要人が揃って「米国債利回りのタームプレミアムが利上げの代替になる可能性」つまり、10年債利回り(長期金利)がかなりの高水準となったため、FOMCで政策金利の利上げをしなくても済みそうだというニュアンスの発言をしています。
【基礎の基礎】米国政策金利(FF金利)と長期金利(10年債利回り)

2023年9月19日~20日開催のFOMC議事録が発表になる直前に、WSJ(ウォールストリート・ジャーナル)のニック・ティミラオス記者が、下記のようなリーク記事を書きました。

長期国債利回りの急上昇が持続すれば、米連邦準備制度理事会(FRB)の歴史的な利上げサイクルが拍子抜けするような終わりを迎える可能性がある。
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前回のFOMC会合では金融政策は現状維持でしたが、同時に発表された経済見通しやパウエルFRB議長の発言がタカ派過ぎたので、米国債利回りの急騰を招いた経緯があります。
そのままタカ派な議事録を発表してしまうと、場合によってはリスクオフに傾く恐れがあったので、念のためFRBの現状認識について記事を書かせたと思います。

市場との対話を重視する現代の中央銀行は、金融政策の変更でマーケットにサプライズや動揺を与える弊害を認識しています。そこで、「とりあえず2023年11月1日の会合では利上げはない」というメッセージをFRB要人発言とニック記者のリーク記事により、事前に織り込ませている流れです。
要人発言の後追いであり、新味はないので厳密にはリーク記事ではありませんが、FRB要人からの確たる情報があって、ニック記者は記事を書いたはずです。

FRBの要人発言は10月21日(土)以降禁止

FOMC会合の2週間前の土曜日から、「ブラックアウト期間」に入り、FRBの要人が金融政策についてのコメントを行うことが禁止されます。FRBからの公式コメントが途絶える期間ですが、FOMCの結果発表の前日まで7営業日(11日間)続きます。

ニック記者の重要なリーク記事は、ブラックアウト期間で行われることが多いのですが、今回は要人発言の重みを増すことが目的と思われます。10月20日(金)までFRB要人(FRB理事および連銀総裁)の講演での発言が続きます。

FRBの構成およびボードメンバーについては下記の記事を参照してください。
【2023年度版】FRBボードメンバー、FOMC利上げ予測と声明文・景気見通し・議事録まとめ

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Nick Timiraos(ニック・ティミラオス)
Chief economics correspondent, The Wall Street Journal • Author, “Trillion Dollar Triage”
ウォールストリート・ジャーナル紙チーフ経済記者。著書「1兆ドルのトリアージ」

例えば、7営業日(11日間)の空白期間に、想定外のマーケット環境変化が起こり、11月1日(水)に0.25%の利上げを行う可能性が高まった場合には、ニック記者にリーク記事を書かせるはずです。彼以外に、同じ役割を担うメディアや担当者がいるのかという疑問をお持ちでしょうが、現状のところ、FRBは彼のルート1本に決めているようです。

FRBの市場との対話のスタンスは分かったとして、日銀のスタンスはどうなのでしょうか?

黒田日銀の金融政策発表は密室的なサプライズ型

黒田総裁はサプライズ好きだったので、異次元緩和を決めたときにも一切の事前情報を与えませんでした。日銀金融政策決定会合の結果(声明文)発表について、時間は決まっていません。正午前後に発表されれば現状維持の可能性が非常に高く、時間が遅れれば遅れるほど重要な政策変更の可能性が高まるので、待たされる市場参加者は軽いパニック状態になります。

植田日銀のスタンスは欧米に近い市場との対話型

植田総裁のスタンスは明らかに異なり、市場との対話を重視していますので、市場で織り込み不足の金融政策については、リーク情報でギャップを埋める考えのようです。2023年4月に就任して以来、4月28日、6月16日、7月28日、9月22日と4会合を行いましたが、既に2回リーク例があります。

このようなメディアの使い方は、黒田日銀時代にはなかったことであり、植田総裁はFRBを始めとする欧米の中銀のスタンスを踏襲しているようです。

7月28日 日経新聞(電子版)

7月28日の会合では、10年債利回りの「許容変動幅±0.50%」を「目途とする」と柔軟化し、事実上+1.0%程度までの利回り上昇を容認するスタンスを示しました。
比較的大きな決定ということもあり、日経新聞(電子版)に下記のリーク記事を書かせています。

日銀、金利操作を柔軟運用 上限0.5%超え容認案
決定会合 きょう議論

記事が掲載されたのは、深夜2時ということでNYタイムの相場に大きなサプライズを与え、ドル円急落、連れて日経225急落となりました。

9月9日 読売新聞朝刊

9月22日の会合の直前、9日付読売新聞朝刊の独占インタビューに応じました。
賃金上昇を伴う持続的な物価上昇に確信が持てれば、マイナス金利の解除を含めた金融政策の変更に踏み込む姿勢を示し、「年末までに判断できるデータがそろう可能性はゼロではない」とも述べたことから、早期修正観測が浮上しました。

【まとめ】ニック記者の動向と日銀の今後のスタンスに注目

FEDウォッチャーとしては、ニック記者の発言をフォローすれば万全です。

日銀については、2024年からゼロ金利の解除、YCC(イールドカーブコントロール)の廃止、量的引き締めなど、金融正常化の道筋を歩むはずです。それぞれが非常に重要な決定事項であり、植田総裁は市場との対話を重視していると思われるので、事前にリークされる情報も増えるでしょう。

リーク情報が出た瞬間に相場は即反応します。私のほうから、適時情報を公開しますので、見逃さないようにしてくださいね。
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