【11日1日(水)FOMC利上げ確率0%】パウエル議長のタカ派発言でリスクオフ進行か?

今回のFOMCの結果自体は無風通過が確実のため、取り立てて述べることはないと思うものの、パウエル議長の記者会見での発言には要注意です。
後述するように、年内の利上げ確率が19.8%に留まる状況について、タカ派な釘を指す可能性が高いと思われるからです。

現状の5.25-5.50%の政策金利がターミナルレート(利上げの終着点)になることがほぼ確実視されています。利下げ開始時期について、2024年5月開始の確率が37.9%、6月開始の確率が60.9%です。

マーケットは「Higher for Longer(より高く、より長く)」で高金利を織り込んでいるはずだったのが、少し楽観的になり過ぎているかもしれません。
にも関わらず、10月27日(金)の米国株は続落、S&P500指数は7月の高値から10.9%もの下落となり、5月以来の安値を示現しました。

米国10年債利回り(長期金利)は、10月23日(月)の高値5.021%から27日(金)の安値4.830%まで、3.8%の割合で下落しています。
短期金利(政策金利)も長期金利も下がる見込みなのに、株価が急落しており、イスラエル・ガザ戦争の悪化だけが原因ではなさそうです。

パウエル議長は元来ハト派でした。しかし、2022年6月の消費者物価指数9.1%(前年同月比)の失態を招き、当初のインフレ見通しが甘かったと批判を浴びた苦い経験が彼のスタンスを変えました。それ以降、マーケットの楽観的な見通しには必ずタカ派で応える態度が定着しています。

政策金利の変更もなく現状維持が間違いない会合です。しかし、パウエル議長のタカ派発言でマーケット心理が悪化し、崩れかかっているリスク資産相場がクラッシュする可能性には注意すべきでしょう。

FEDウォッチツールによる政策金利の見通し(確率)


2段重ねの上のチャートが11月1日(水)の会合、下のチャートが12月13日(水)の会合です。
2023年10月27日(金)の週末大引け時点のデータに基づきます。

FEDウォッチツールの読み方については下記の記事を参照してください。
FOMCのFF金利見通しが相場を動かす【FEDウォッチツール】毎日確認しよう!

  • 11月01日(水)会合は、現状維持が99.9%、利下げ0.1%の確率
  • 12月13日(水)会合は、現状維持が80.1%、利下げ0.1%、利上げ19.8%の確率
すなわち、年内の利上げはほぼないという見通しです。
パウエル議長が黙って追認することはなく、「さらなる利上げの可能性は十分ある」と釘を刺してくるはずです。マーケットは必ず反応し、12月以降の利上げ確率は程度問題ですが上昇するでしょう。

長期金利のタームプレミアムが利上げの代替になることの説明


記者会見の中で、必ず質問があり、議長が説明することになると思います。
直近の10年債利回り(長期金利)の急騰の原因は、不健全なタームプレミアムが乗り過ぎていることです。

参考記事
【米長期金利が株価暴落のトリガーになる?】有事でも金利上昇!不健全なタームプレミアムとは

もとはと言えば、コロナ対策で米国債と住宅ローン担保証券(MBS)を市場から買いまくることにより、過剰流動性を供給してしまったことが原因です。FRBのバランスシートが過去最大(約9兆ドル)に急拡大したため、2022年6月から量的引き締め(QT)を続けています。

米国債の償還に際して再投資しないことで毎月600億ドル(MBSは350億ドル)の資産を圧縮しています。米国債の最後の買い手であるFRBが買わないので、債券市場が軟調となり、利回りが上昇するという相場が続いています。
米国債の需給悪化は今後も継続するので、長期金利は高止まりか、もう一段高もあり得る状況です。

「長期金利が上昇しているので、政策金利を引き上げる必要がない」というFRBのロジックですが、QTの規模を近い将来に縮小する議論があれば、長期金利は下落に向かうでしょう。
長期金利が市場原理で決定することは間違いありませんが、実際にはFRBの政策を色濃く反映しているのです。

今後は長期金利の上昇が市場を苦しめる

イスラエル・ガザ戦争のような有事では、安全資産である米国債は買われるのが通常で、米国債利回りは低下します。しかし、現状その傾向が非常に弱いのは、需給面の悪化が大き過ぎるためだと思われます。

パウエル議長の記者会見において、QT継続と長期金利上昇の因果関係について質問が飛ぶと思われます。月間950億ドルのフルサイズQTを当面継続する見込みであれば、さらなる長期金利高がマーケットを苦しめることになるでしょう。
政策金利(短期金利)の利下げ開始のタイミングより、長期金利にネガティブな影響を与えているQT縮小のタイミングのほうが、より重要であろうと思います。

【まとめ】政策金利現状維持、ターミナルレート到達だけでは安心できない

今回のFOMCは、金融政策をさらなる引き締め方向に変更せず現状維持という結果自体は最初から分かっているので、無風通過と冒頭で述べました。
しかし、パウエル議長の記者会見でのタカ派スタンスが、政策金利の見通し(FEDウォッチツール)の悪化のみならず、長期金利上昇につながる可能性は十分あり得ると思います。

今回のFOMCをなめてかかると、痛い目に遭うかもしれませんね。株式相場は急落の可能性がありタイトロープが続きます。パウエル議長の発言ひとつでマーケット環境は大きく変わってくるのです。