2023年10月6日(金)発表の米国雇用統計の非農業部門雇用者数が+33.6万人と大幅に上振れしました。下記の記事で万が一のケースとして警告していた事態となり、「米国金利(米国債利回り)高・ドル高・株安」で、10日(火)の日経平均株価の暴落が心配になったかもしれません。
【株価暴落警報】米10年債利回り16年ぶり高水準。ドル全面高・株安続く
「雇用者増が30万人~50万人の衝撃的なビッグナンバーが出てきた場合には、市場のショックは計り知れないと思います。」
しかし、【FEDウォッチツール】の読み方を覚えていただければ、現状はさほど心配する必要がないことが分かります。日経225先物(12月限)の夜間取引の大引けが31,330円、+310円(0.99%)だったので当然とも言えますが、もともとはFEDウォッチツールの動きを反映しています。
「米国金利(米国債利回り)・ドル相場・世界の株価」を動かすのは、今後のFOMCのFF金利(政策金利)の見通しが最大のファクターだからです。
FEDウォッチツールを毎日チェックするルーティンを確立すれば、今後の相場への取り組みの精度が確実に上がります。そのスキルは将来の大きな財産となるでしょう。
目次
FEDウォッチとはCMEグループ発表のFF金利の推移確率
今後開催される10会合分のFOMCで、FF金利の水準がどのような推移になるか確率で示したものです。計算の根拠は、FOMCの開催日に対応した限月の「FF金利先物」の取引状況であり、場中はリアルタイムで動きます。CMEとは、シカゴ・マーカンタイル取引所です。
最新のFEDウォッチツール(2023/10/06終値)
画像またはテキストをクリックすると、「FedWatch Tool」の公式サイトの当該ページが別画面で開きます。
あまりに強すぎる米国雇用統計を受けて、FEDウォッチツールの2023/11/01の利上げ確率が急騰し、米国債利回り・米ドルも急騰、米国株は急落となりました。しかし、米国市場3連休前の大引けに向けて、トレンドが反転して終わりました。
三連休前のポジション調整のリバウンドかもしれませんし、週明けは再びメイントレンド(金利高)に戻る可能性に注意です。
FEDウォッチツールを開くと最初に出てくるのは、直近のFOMC(2023/11/01)の結果に基づくFF金利の確率です。
- 5.25-5.50%(現状維持)が72.9%
- 5.50-5.75%(0.25%利上げ)が27.1%
上部のタブを切り替えることにより、今後10会合におけるFF金利の分布状況が確認できます。また現状の確率に対して、「前日・1週間前・1か月前」との比較を行うことができます。1か月前は現状維持の確率が53.1%(利上げ確率が46.9%)だったので、直近の米国債利回りの急騰を受けても、逆に次回の利上げ確率は下がっているという状況です。
今後のFF金利の推移についての確率
デフォルトのページで、左上の「Probabilities」のタブをクリックするとページが切り替わります。
ここで読み取れることは、下記の通りです。
- 2023/11/01から2024/12/18までのFOMC10会合で利上げは行われない。
- 5.25-5.50%(現状維持)がターミナルレートになる。
- 2024/06/12の会合から0.25%の利下げを開始する
- 3会合連続で0.25%の利下げを行う(ターミナルレートから0.75%の利下げ)
- 2024/12/18の会合では4.50-4.75%までFF金利が下がる
2023年9月20日のFOMCの経済見通しについて
下記のページで詳細をまとめてあります。
【2023年度版】FRBボードメンバー、FOMC利上げ予測と声明文・景気見通し・議事録まとめ
前回、2023年9月20日発表の「経済見通し」のドットチャートが示すターミナルレートは2023年末の中央値5.6%すなわち「5.50-5.75%」です。
2024年末の中央値は5.1%(前回6月時点で4.6%)で0.5%引き上げてきました。すなわち2024年中の利下げは0.5%であり、「5.50-5.75%」のターミナルレートで6会合連続据え置き、7回目(11月7日)、8回目(12月18日)で0.25%ずつの利下げで「5.00-5.25%」を見込むというシナリオが見えてきます。
FOMCの経済見通しよりFEDウォッチツールのほうが楽観的
- 2023年末で前者は5.50-5.75% 後者は5.25-5.50% 0.25%楽観的
- 2024年末で前者は5.00-5.25% 後者は4.50-4.75% 0.50%楽観的
FEDウォッチツールは金利先物相場の動きで自動的に生成されるものであり、市場の動揺により変動が激しくなることには注意が必要です。FOMCの経済見通しのように専門家が分析した結果ではないので、極端な数字が出るリスクがあります。
まとめ(金利高による株価暴落のリスクは低くなった)
前回の記事でも述べた通り、WTI原油先物が急落し、米国経済のマイルドな景気後退が視野に入ってきました。
WTI原油が13.5%の急落!インフレ加速回避の見込み
強すぎる米国雇用統計で大きな衝撃を受けた割には、市場はすぐに落ち着きを取り戻した訳ですが、景気の過熱感は徐々に収束している実感があるからでしょう。
現状では、米国債利回り(長短金利)の16年ぶりの水準までの急騰については、既に天井をつけた可能性が高くなり、金利高による株価暴落のリスクは低くなったと思います。