【円安危機に2度目の神風】米国CPIが有意に低下で利上げ終了観測高まる

2023年11月13日(月)のドル円の高値は151.91で、2022年10月21日(金)の高値151.94に肉薄しました。
前者は年初来高値となり、後者は33年ぶりの高値(直後に為替介入)でした。ほぼ同水準まで達した後、151.20まで急落しました。

翌日の11月14日(火)22:30には米国消費者物価指数(CPI)の結果発表を控えて151.79まで上昇しましたが、ポジティブサプライズでドル円は150.15まで急落となりました。
11月1日(水)のFOMC後のパウエルFRB議長のハト派過ぎる発言に続いて、為替介入のトリガーを引く寸前で二度目の神風が吹いたことになります。

確かに利上げ終了はほぼ確実と言える状況です。FEDウォッチツールでは、12月13日(水)のFOMC会合での据え置き確率が94.5%まで上昇しました。
2024年5月1日の会合から利下げ開始という観測が強まっています。

そこで、今後のドル円相場について考察してみますが、円安危機が完全に払しょくされたとは考えないほうが良さそうです。

米国CPIの評価ポイント

11月14日(火)22:30に米国消費者物価指数(CPI)が発表になり、予想をやや下回る結果で、「CPIショック」となりました。
前年同月比で、総合CPIは3.2%(予想3.3%、前回3.7%)コアCPIは4.0%(予想4.1%、前回4.1%)という結果です。

前回と比べて原油価格が急落しているため総合CPIの低下は想定されたことでした。しかし、予想をさらに下回り、2%台に到達目前の3.2%ということで、2022年6月の9.1%と比べると隔世の感があります。
より重要なコアCPIは4.1%で高止まり予想でした。ここで0.1%下回ってきたことも有意にインフレが鈍化している証左となり、FRBの利上げ終了観測をさらに強めています。

特に、CPIの構成の3分の1強を占める住居費の伸びの鈍化が好感されました。住居費に含まれるホテル代が下落しただけでなく、持ち家を借家とみなして計算する帰属家賃も減速しました。
大手自動車メーカーのストライキによる生産減の新車価格も下落するなど、CPI構成品目の大半でピークアウトが確認されたことから、インフレ鎮静化はまず間違いないところだと思われます。

総合もコアも、予想から僅か0.1%の改善に過ぎませんが、内容がかなり良かったため、市場に安ど感が広がりました。FRBパウエル議長は事前に速報値を知っているはずで、マーケットが過度に楽観的にならないように、11月9日(木)のIMFの討論会でタカ派発言を行ったと思われます。

米国10年債利回りとドル円の反応


ローソク足が米国10年債利回り、黒い太線がドル円の日足チャートです。
画像かテキストリンクをクリックすると、より詳細なチャートが別画面で開きます。

米国10年債利回り(長期金利)は4.428%まで急落。10月12日の安値4.532%の重要なサポートを下抜いて、下落トレンドに転じた可能性が高くなりました。これに連動する形でドルインデックス(DXY)は急落、ドル全面安となりました。

円インデックス(JXY)も急反発し、ドル円は150.15までの急落となった訳です。しかし、押し目買い意欲は旺盛で、この原稿を書いている11月15日(水)15時時点で150.79まで値を戻しています。

ドル安でも円売り圧力は継続する見込み

欧米の大手金融機関の為替トレーダーは、11月22日(水)時点で2023年の成績が確定します。翌日からは感謝祭休暇、そしてクリスマス休暇と続きます。
あとちょうど1週間で店じまいというタイミングで、最後のリスクを取りにくるかどうか微妙なところではあります。

しかしながら、152円が神田シーリング(財務省の神田財務官の為替介入想定レート)であると広く認識されています。投機的な円売りについて、年初来高値151.91レベルまでは安全である可能性は高く、そこはしっかりと食らいついてくるはずです。
個人のドル円買いも活性化しています。150円台前半は明らかにバーゲンセールとなりました。

為替介入せずとも年末に向けてはじり安か?

2023年の締めを行うにあたり、最後の重要イベントは12月19日(火)の日銀金融政策決定会合です。
前週の13日(水)のFOMCの現状維持・ハト派を受けてドル安が継続する可能性が高いと思います。しかし、直近の日銀会合は例外なく円売りイベントになっているため、今回もそうなる可能性が高いでしょう。

152円のトリガーを引いて為替介入を発動させるならば、欧米トレーダーの残り時間の1週間以内(11月22日まで)であろうと思います。個人投資家の動向も無視できないボリュームになっていますが、神田シーリングに挑むほどの度胸はないと思います。
しばらくは150~151円台の保ち合いが続くと想定しています。

【まとめ】ドル円は高止まりの可能性が高くリスクオンの株高が続く見込み

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「Higher for Longer」の高金利も、2024年5月1日のFOMC会合から利下げに転じる見込みです。最後の利上げが2023年7月26日ですから、5.25-5.50%の高金利を9か月半継続ということで、過去の例からしても、ちょうど良い頃合いです。

NY株式市場の株高は、史上最高値を追いかけるレベルにあります。加えて、ドル円が150~151円台に高止まりするならば、日経平均株価もまた、バブル後最高値の33,772円を目指す可能性が高いでしょう。

前回述べた米国のつなぎ予算案は11月14日(火)に可決されました。2024年1月19日(金)および2月2日(金)に期限が到来します。これ以上、つなぎ予算を継続する訳にはいかないので、本当の正念場になります。
【米国債の格下げ⇒株価暴落リスクは続く】下院議長のつなぎ予算案正念場

史上最高値を追いかけるリスクオンの株高の賞味期限もそこまでという可能性があります。念のため最悪の事態も想定しておく必要があるでしょう。