【日銀速報】マイナス金利解除は早くて2024年4月26日の見込み

2023年最後のビッグイベントである日銀金融政策決定会合は、タカ派への踏み込みは一切なく、現状維持を強調したイベントとなりました。

2023年12月19日(火)正午前に発表された声明文は下記の通りです。
当面の金融政策運営について 2023年12月19日 日本銀行

経済環境の現状分析が丁寧に記述されている印象であり、金融正常化を目指す意欲は行間から伝わってきます。
しかし、正常化に踏み出す時期や条件などは不明であるため、15:30開始の植田総裁会見が今までになく注目されました。

12月7日(木)の参議院財政金融委員会で、植田日銀総裁は今後の政策運営への抱負を問われ「チャレンジングな状況が続いているが、年末から来年にかけ一段とチャレンジングになるというようにも思っている」と述べました。その上で、情報管理を徹底しつつ、丁寧な説明、適切な政策運営に努めていくとしました。

今回の会見は「チャレンジング」の意味を改めて問い直す会見となりました。

チャレンジングとは今後の仕事の取り組み一般について

植田総裁の回答は、金融政策自体がチャレンジングになるのではなく、「就任2年目にかかるところなので、一段と気を引き締めてというつもりで発言」とのことでした。

「チャレンジング」発言前日の6日(水)に日銀氷見野副総裁が、大分市内で開いた金融経済懇談会で「日銀が金融正常化に踏み切った際の経済への悪影響は比較的少ない」との見方を示し、「状況をよく見極めて出口のタイミングや進め方を適切に判断する」と述べました。

これが伏線になり、「チャレンジング」発言が、今回の会合でのマイナス金利解除を意味すると拡大解釈された訳です。
しかしながら、今回の会合が現状維持であることは、その後のリーク記事で明らかになっており、そこでも失望感を与えて円売りになりました(戻り高値は146.592まで)。

FOMCでのパウエルFRB議長発言が神風に

12月13日(水)のFOMCの経済見通しにおいて2024年末までに3回の利下げ(計0.75%)を示唆し、終了後のパウエルFRB議長の記者会見で、(早期)利下げの議論があったことを認めたことにより、米国10年債利回りが急落、急速なドル安が進行しました。
歴史的なハト派会合となった訳です。

この流れでドル円は140.954の安値をつけており、7日(木)のフラッシュクラッシュの安値も下抜くことになりました。
もし、FOMCがハト派でなかったならば、日銀会合は145円~147円で迎えることになった可能性が高く、150円台到達の可能性もありました。

事前に、年初来高値151.911⇒140.954まで約11円(1095.7pips)の調整を経験したことにより、日銀会合前の発射台が低めに設定されたのは幸いでした。

145.00レベルで強い戻り売り圧力あり

仮に、145.00レベルを簡単に上抜くことになれば、マーケットの失望感が非常に強いということで、2024年にも円安トレンドが継続してしまう可能性が高まります。
150円台への再チャレンジも警戒すべきでしょう。

とは言え、米国10年債利回りは依然として4%の大台を割り込みじり安傾向なので、これが踵を返し急反発することが基礎的条件となります。すなわち可能性は低めということです。

植田総裁発言の主旨(筆者上野の意訳)

マイナス金利解除(金融政策正常化)の条件は、単独のイベント(指標)で判断できることではなく総合的な判断が必要
賃上げ(2024年3月15日が春闘の集中回答日)が昨年を上回り、その効果が基調インフレ率の押し上げ効果を発揮するのを確認したい
米国の早期利下げがあったとしても、日銀がマイナス金利を解除しにくくなることはない。慌てて解除する必要はない

【まとめ】2024年4月26日の会合が最短のスケジュール

2024年は1月23日、3月19日、4月26日と会合が予定されていますが、最短で3回目の会合でのマイナス金利解除が妥当なところと思います。
この会合では、「経済・物価情勢の展望(基本的見解)」が合わせて発表になるため、賃上げ率も3月に確定し、2%の物価目標への寄与度についても、ある程度踏み込んだ表現がなされる見込みだからです。

この会合よりも前倒しでマイナス金利解除がなされるとすれば、2023年に苦しんだ円安が再び襲ってくることが条件になります。
日銀は為替レートに対する評価もコメントもしないのが建前ですが、輸入物価の高騰によるコストプッシュ型インフレは避けたいところなので、1ドル150円を超える円安を嫌がっていることは明らかです。

そこまで追い込まれれば、早期解除もあり得ることと思いますが、ドル安基調も続くので、いくら円安がエスカレートしても、上記水準までは達しないと思います。