Part2で述べた通り、いちばん直近の為替介入(ドル売り円買い)は下記の通りです。
2022年10月21日(金)24時から5.6兆円、24日(月)早朝に0.7兆円、計6.3兆円規模
高値151.946⇒安値145.534で6円41銭(641.2pips)の押し下げ
同規模の押し下げ介入のタイミングに、ノーポジションかつトレード態勢を整えていたならば、1時間で2~3円抜くのも簡単でしょう。しかし、2022年より前のように「為替介入は東京タイム限定」とは決まってはいないので、巡りあわせ、運の良さも大きく関わってきますね。
Part3では私が想定する為替介入の水準と時期、トレード戦略をもう一段掘り下げて、あなたのドル円トレードのお役に立ちます。
もちろんドル円トレードだけでなく、連動して動く日本株(日経平均先物などインデックスの時間外取引を含む)の値動きとトレード結果にも大きな影響を与えます。ドル円急落中は、日本株も同期して急落します。
目次
3回連載記事の結論
1.ドル円150円以下での為替介入の可能性は低い。
2.2022年高値151.946を意識して、150円台乗せで初回の為替介入の可能性は高い。
3.155円に達した場合には、99%の確率で為替介入を行う。
⇒ 日銀金融政策と同期しない為替介入では、5円下落目途でドル円の押し目買いチャンス!
口先介入に気をつけながら150円到達まではロング主体でトレード
円安物価高がどれほど私たちの生活を脅かすかという生活者視点も大切ですが、ひとりのFXトレーダーとして考えたときには、為替介入の危険性が相当程度に高まるまではロング主体で攻めるべきですね。
特に、最後通告直前の口先介入で急落したときは、押し目買いの絶好のチャンスです。ちなみに、口先介入は日本のビジネスタイムに行われるのが確実(キーマンが海外にいない限り)なので、NYタイムまで何もコメントがなければ翌朝まで急落リスクはないでしょう。
可能性は低いと思いますが、財務省が150円未満で為替介入のトリガーを引いてしまったら、時間に関係なくドル売り円買いが巨大な規模で発動されるので、ストップ注文は必ず入れておきましょう(ただし、20~30銭以上の相当なスリッページが想定されます)。その後、高値から5円程度の押し目があれば再びロングで良いと思います。
150円到達が視野に入ったら利益確定して様子見が基本
今まで述べた通り、財務省の為替介入は神田財務官の戦略が緻密で、今までの常識に囚われない規模や時間帯で仕掛けてきます。そういう意味では値持ちが悪い(概ね145円以上で仕込んだ)ドル円ロングは寝ているあいだに大損、ロスカットの可能性もあります。
ともあれ、150円に接近したら、値持ちの悪いポジションは早めの利益確定が定石でしょう。
為替介入開始時にノーポジションの場合、超短期ショートで勝負できる
ドル円が5円幅で暴落中に、通常のポジションサイズの1/5くらいの超短期ショートで乗っかるのが効率が良いです。うまくいけば2~3円幅、タイミングを間違えなければ1円幅は余裕で抜けるでしょう。
ただし、条件があります。
1.タイミング(主にドル円の水準)と値動きの特徴から「為替介入」だと断定できるケースに限る。
2.高値から1~1.5円急落までにショート参入の決断をしたい。
3.2.5円以上急落したタイミングでは、あと2.5円下落するという保証はなく踏み上げリスクも覚悟する。
4.高値から5円も急落すれば猛烈な買戻しが待っているので、ショートの利益確定は早めにすべし。
その後、5円幅の押し目をロングで拾い直すことができれば最高だと思います。
ただし、日銀金融政策決定会合が近い時期は要注意
2023年の会合は3回残っています。下記の日程の正午近くに結果発表されれば現状維持、発表時間が遅れれば何らかの政策変更を伴うのが通例です。
9月22日(金)、10月31日(火)、12月19日(火)
唯我独尊タイプの黒田総裁は、どんなに危機的な円安になっても、ほとんど援護射撃することはなく、むしろ事態を悪化させてきました。しかし、植田総裁は、もともと異次元緩和には批判的な学者であったため、異次元緩和⇒通常の緩和(今ここ!)⇒正常化のロードマップを描いているのが明らかです。
ドル売り円買い介入が一服した後、ドル円の押し目はどうしても買いたくなりますし、戦略は間違いなく正しい訳です。しかし、そのタイミングで植田日銀がタカ派な政策を打ち出せば、もう一段の急落のトリガーを引きます。しかも、ファンダメンタルズを変える訳ですから為替介入よりも実質的な押し下げ効果は大きいのです。
それでは、そのタイミングでショートポジションを持てるかどうか?ドル円ショートのスワップポイントのマイナスはコスト負担としては非常に大きく、急落が継続すると確信できる局面以外ではオーバーナイトは避けるべきです。
155円到達では99%の確率で為替介入を想定
「2023年円売り祭り」の最後の打ち上げ花火として、155円到達もあり得ると思います。到達せずに反落すれば為替介入はないかもしれません。しかし到達すれば、99%の確率で大規模覆面介入が行われ、150円以下に叩き落されるでしょう。
2022年10月21日(金)から24日(月)のドル売り円買い介入の規模を遥かに凌駕する史上最大の作戦になるかもしれません。
155円到達以前なら5円幅の押し目をロングで拾い直す作戦が有効だと思いますが、このケースでは、もっと押し目が深くなる可能性があります。また、植田日銀がタカ派色を強めアシストする可能性もあり、慎重な見極めが必要でしょう。
日銀金融政策の変更を伴う場合、「2023年円売り祭り」の終焉であり、その後はドル円の下落が140円目途に加速すると思います。
上記トレードシナリオは、いつ頃までに実現しそうか?
投機筋の円売りがエスカレートしている昨今の状況を鑑みるに、年末までに示現する可能性が高いでしょう。
以上、「為替介入の水準と時期を大胆予測」と「トレード戦略」について、3回の緊急連載を行いました。
2023年も残り3か月半となりました。米国の利上げ最終局面、米国景気のソフトランディングの状況(主要経済指標)も気になるところであります。
円安物価高で苦しむ私たちにとって、ドル円の急騰は非常に大きな問題でもありますし、日々の状況の変化を捉えて、また当ブログで解説を行うとともに、トレードシナリオを提示したいと思います。
今回は現在見えている状況を織り込んだシナリオであり、状況が変わればシナリオを柔軟に変更する必要があります。
ドル円高値の為替介入は財務省が最強の為替トレード?
最後に余談です。
政府が保有する外貨(証券・債券含む)を売って為替介入の原資とする訳ですが、150~155円で売却できるなら、絶好の利益確定にになりますね。
介入後もさらなる円安が継続するならば得べかりし利益の損失になりますが、2022年10月24日以降のような暴落展開になれば、ドル円の押し目で再度ドル資産を購入すれば良いのです。ただし、ドル円レートを押し上げることになると本末転倒なので、あくまでも少額でゆっくり時間をかけてです。
うまくやれば、為替介入という為替取引で、外貨準備高はさらに増加するという結果になり、一石二鳥ではないでしょうか。