「為替介入の水準と時期を大胆予測」と「トレード戦略」Part2

第2次岸田再改造内閣が9月13日(水)に発足しました。
鈴木俊一財務相は留任です。鈴木善幸元首相の長男で70歳です。
2022年9月、10月の為替介入で鮮やかな手腕を発揮したのは神田真人財務官ですが、既に6月に留任しています。

Part1で述べた通り、2022年の為替介入は市場参加者の裏をかいて大成功でした。
Part2では、下記の結論(為替介入の水準と時期、トレード戦略)を導く、3つの理由について分かりやすくお伝えします。

3回連載記事の結論

1.ドル円150円以下での為替介入の可能性は低い。
2.2022年高値151.946を意識して、150円台乗せで初回の為替介入の可能性は高い。
3.155円に達した場合には、99%の確率で為替介入を行う。
⇒ 日銀金融政策と同期しない為替介入では、5円下落目途でドル円の押し目買いチャンス!

為替介入は財務省の権限において行い、日銀が実務を代行する

為替介入の正式名称は「外国為替平衡操作」ですが、財務省の代理で日銀が実務を遂行しています。
日銀の金融政策次第で、為替レートがドラスティックに動くことは確かですが、ドル円のレートを望ましい水準に誘導するという視点は(建前上)ありませんし、為替操作は国際的に禁止されています。

財務省が為替介入に踏み切る場合、「輸入インフレから国民生活を守ることや、実体経済や国民生活への影響を抑えること」が大義名分になります。また「為替の特定の水準や方向を嫌っているわけではなく、一方的で行き過ぎた変動を戒めるのが目的」というのが建前です。

口先介入警戒度【7段階のバロメーター】

何日間で何パーセント円安ドル高になったら「一方的で行き過ぎた変動」という明確な基準はありません。
ドル円の147円台が、2022年9月22日の為替介入の145.902のレベルよりも高いので警戒感を強めているという側面は否定できません。
つまり、実際は「特定の水準」を念頭に置いているはずです。

9月6日(水)にドル円が147.819に達し年初来高値を更新したところで、すかさず神田財務官から「政府としてはあらゆる選択肢を排除せずに適切に対応していきたい」「高い緊張感をもって注視している」と口先介入がありました。
鈴木財務相も8日(金)の閣議後の記者会見で「過度な変動に対してはあらゆる選択肢を排除せず適切な対応をとりたい」と語りました。

これらの発言は、口先介入警戒度【7段階のバロメーター】では、警戒度が2番目に高い「為替介入への警告」と市場参加者は受け止めています。
最も高い「為替介入の可能性」を示すコメントは「過剰な動きに対抗するためのあらゆる選択肢(手段)を排除するつもりはない」などの表現に変化します。
1番目と2番目の区別がつきにくいですが、足元の相場の変動を「投機的」「過剰」「行き過ぎ」「一方的」などの現状認識を強くにじませてくると、「最後通告」と考えて良いでしょう。

結論を導く第1の理由

為替介入は財務相の権限において行いますが、政府(閣議)の了解を取り付けることは必須です。
それ以上に、「ドル売り円買い」の相手国となる米国の意向を無視して行う訳にはいかず、「容認」「黙認」の言質を取る必要があります。そうしなければ単なる「為替操作」になってしまいます。

連載Part1で述べたファンダメンタルズが円安の原因なのですから、それに投機筋が悪乗りしてきたとしても、よほど急激な円安でなければ、為替介入はできないのです。
そういう意味では、147円台は中途半端です。150円の節目を超えてようやく可能性が出てくると思います。

2022年10月21日(金)の為替介入は、151.946の高値のおよそ2時間後から始まりました。
実際は、150円突破が介入のターゲットだったと思いますが、150円の壁はストップを巻き込んで一気に突破してしまいましたので、2円弱はオーバーシュート分と考えられます。

財務省(日銀)が介入の指値とするレートは、テクニカル分析も十分行い効果的なチャートポイントですから、今回のターゲットは151.946アラウンドでダブルトップからの急落を狙うと思います
150円より下から介入を行う場合、テクニカル的にも、投機筋の意欲的にも、押し目から再度買い上げる絶好の機会提供にしかならないと思います。
ずばり最初の為替介入のターゲットは、150~151.946のゾーンになると思います。

結論を導く第2の理由

Part1で170円説を紹介しましたが、本当に放っておいたら、そこまでエスカレートする可能性も否定はできません。

しかし、発足したばかりの第2次岸田再改造内閣の支持率の低さを考えると、170円まで放置することは非常に考えにくいです。
1.2022年の高値151.946レベルで抑え込む
2.失敗したら、155円が死守防衛ラインである
このように考えている可能性が高く、米国の大手投資銀行のドル円の高値予想も155円に集中しています。

結論を導く第3の理由

私たちがFXトレーダーとして、どんなトレードをすべきかという観点で述べます。

2022年は9月22日(木)に2.9兆円、10月21日(金)に5.6兆円、24日(月)に0.7兆円、計9.2兆円の未曾有の規模の為替介入となりました。
驚いたのは、10月21日(金)24時頃から始まった大規模介入です。週末を挟んで24日(月)の早朝まで、計6.3兆円を費やすのは、規模的にも、実施時間帯としても異例中の異例でした。こんな時間に介入はあり得ないと、初動では誰も介入と信じませんでした。
22日(土)に神田財務官はインタビューで「コメントしない」と述べています。見事な覆面介入でした。

過去の為替介入は主に「円売りドル買い介入」だったので予算の心配はない訳ですが、「ドル売り円買い介入」は日本の外貨準備高の範囲に限られます
当時の外貨準備高は1.29兆ドル(194兆円)なので十分余力がある訳ですが、現金比率は10%(19兆円)くらいでした。

投機筋に19兆円の余力と悟られたら、しつこく狙い撃ちされるリスクがありましたが、介入資金の出どころはなんと「外国証券の売却」だったと月末に判明したのです。
「資金は潤沢」「米国債の売却も可能」「米国との連携は密」と投機筋に思い知らせ、「円売り祭りの終焉」となった訳です。
神田財務官(鈴木財務相)の手腕は完璧ですよね。投機筋を完璧に手玉にとった見事な介入でした。高値151.946⇒安値145.534で6円41銭(641.2pips)の押し下げ効果がありました。
今後も財務省が本気になった場合、5円程度の押し下げを想定しておけば良いでしょう。

しかしながら、投機筋は、しつこく次の円売り祭り継続のチャンスを狙っていました。
この動きを完全に封じ込んだのは、12月20日(火)の日銀会合で、日本10年債利回りの変動幅を±0.25%から±0.50%に拡大する政策を決定したことです。「日銀がサプライズ利上げ」と勘違いされたあの出来事です。

Part1で述べた通り、2023年9月は財務省の口先介入の直後に、植田日銀総裁のタカ派発言がフォローしています。
投機筋が本当に怖いのは財務省より日銀です。日銀さえ動かなければ円は安心して売れるということですが、植田日銀は黒田日銀とは明らかに違うということです。

為替介入時のトレード戦略概要(詳細はPart3で)

これから年末まで展開される「2023年円売り祭り」がどんな終焉を迎えるのかは神のみぞ知るですが
1.仮に150円未満で介入があればドル円の押し目を安心して買えば良いでしょう。
2.150~151円で介入があれば、これも押し目を買えば良いでしょう。
3.155円に達した介入では、財務省が全力で叩きにくると思われ、押し目買いは短期で利益確定すべきでしょう。

そして、いずれの場合にも、植田日銀のタカ派政策がセットになってやってきたら、安易な押し目買いは厳禁ということになりますね。中銀の政策に逆らってはいけません。
私はデイトレの売りに徹すると思います。

Part2はかなり長文になってしまい申し訳ありません。
Part3では私が想定する為替介入の水準と時期、トレード戦略をもう一段掘り下げて、あなたのドル円トレードのお役に立てる内容にしますね。