【ドルの黄昏】原油100ドル突破・米長期金利5%に肉薄・FOMC利上げ確率71.3%でも買われない

本日のテーマ

昨日のNY為替市場では、
米生産者物価指数(PPI)の発表を受けて一時154.667までドル円が買い戻され、
4日ぶりに反発しました。
しかし、今週の高値(156.274円)はおろか、
かつての岩盤であった155.00の節目すら回復できずに失速しています。

目先の材料だけに目を奪われている市場参加者は「金利高・原油高のドル買い」
を期待していますが、
相場の深層では、信じがたいほど強固な「ドルの構造的弱さ」が支配しています。

本日は、あらゆるドル買い材料を呑み込んで進行する歴史的レジームチェンジの真実を、
クオンツの視点から解き明かします。

上野ひでのり本日の視点

1.ドル買い材料「総動員」でも超えられない154円の壁

テクニカルの観点から見ると、ドル円の下落トレンドは完璧に定着しています。
日足ベースで21日移動平均線を大きく下回り、
ボリンジャーバンド-2σ付近を這う下向きのバンドウォークが継続中。
過熱感を測るRSI(14日)は30を下回る「売られすぎ圏」にありながら、
自律反発の力強さは極めて限定的です。

この背景にあるのが、ドルという通貨そのものの地盤沈下です。
ドル指数(DXY)を見ると、6月24日の高値101.800に対し、
昨日の終値は99.092と大台を割り込んだ水準に低迷しています。

中東情勢の緊迫化や米金利上昇にもかかわらず、
世界的な基軸通貨としてのドル買い圧力はすでに息切れしているのです。

2.クオンツの冷徹な検証:なぜ「反転の役満」でドルが買われないのか

先日のメルマガにおいて、私は「現在の強固な円高トレンドが反転する条件」として
いくつかの極端なテールリスクを挙げました。
驚くべきことに、今週の相場ではそれらの条件がほぼ同時に現実化しています。

(1)WTI原油が100ドルを突破:
中東戦闘の再激化とサウジの減産により一時104.44ドルまで急騰。
日本のエネルギー輸入・貿易赤字懸念を直撃。

(2)米10年債利回りが4.965%まで急騰:
トランプ氏による市民1人当たり5000ドルのバラマキ発言や財政懸念を受け、
2007年以来となる「5%の大台」にあと3.5bpまで肉薄。

(3)FOMC利上げ確率が71.3%へ急伸:
PPIを受けて短期金融市場の9月利上げ織り込みが6割から一気に7割超へ跳ね上がる。

通常であれば、ドル円が160円台を軽々と突き破っていてもおかしくない
「最強のドル買い材料」が総動員されました。
にもかかわらず、ドル円は154円台半ばで、あっけなく頭を抑えられています。

「最高の買い材料が出尽くしても上がらない相場は、
構造的に売り手が買い手を完全に圧倒している証拠である」
これが相場の鉄則です。

3.歴史の鏡像:2012年の大転換の再来―「あの時勝った男」が今や胴元

現在起きている現象は、
2012年秋に1ドル=70円台という超円高から
アベノミクス相場へ大転換した局面の「逆再生(鏡像)」です。

当時、野田・安倍会談による解散が決まる直前、
市場は政策転換の気配を察知して先回りし、
その後数年続く巨大な円安トレンドを形成しました。

その時、円ショートで莫大な利益を上げたヘッジファンド運用者こそが、
現在のベッセント米財務長官です。

その彼が今や「私は非対称な情報を持っている。今や私が胴元だ」と公言し、
日銀に利上げを迫り、アベノミクス(リフレ政策)の終焉を主導しています。

相場を動かす巨大なクジラ(生損保・GPIF)やCTA(トレンドフォロー勢)は、
14年前と同じ「歴史の変節点」を察知し、
円売りポジションの完全解消へと舵を切っています。

4.本日21:30発表 米CPI予想値とシナリオ分析

本日発表される8月の米消費者物価指数(CPI)の市場予想は以下の通りです。
総合CPI(前月比) 0.4%(前回0.1%)
総合CPI(前年比) 3.4%(前回3.4%)
コアCPI(前月比) 0.2%(前回0.2%)
コアCPI(前年比) 2.4%(前回2.5%)

【シナリオ分析】…

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