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本日のテーマ
米軍によるイラン施設攻撃の報道など中東情勢の緊迫化と原油高を受け、
インフレ再燃懸念から世界的な長期金利の急騰が発生しています。
この動きに追随する形で、ドル円は一時160.268まで上値を伸ばし、
直近の為替介入後の戻り高値を更新しました。
大衆はこの「中東有事のドル買い」や「依然として残る名目金利差」
という表層的なニュースを見て、
「やはり160円台が定着する」「介入の警戒感は薄れた」と安堵しているでしょう。
しかし、その表面的な値動きの裏では、日本の10年債利回りが約30年ぶりに3.0%を突破し、
街のメガバンクが住宅ローンの低金利競争に事実上の幕を下ろすなど、
社会の根本で不可逆的な地殻変動が起きています。
本日は、マクロの深層で生じている「金利と為替の決定的な矛盾」について、
クオンツの視点から解き明かします。
上野ひでのり本日の視点
1.なぜ「国内金利3%」と「極端な円安」の共存はあり得ないのか?
「日本も金利が上がっているが、米国の金利の方が高いのだから円安は止まらない」
という強固な錯覚が蔓延しています。
しかし、金融工学やマクロ経済の真実は異なります。
外貨準備が枯渇した新興国のデフォルト危機(キャピタルフライト)でも起きない限り、
世界最大の対外純資産国である日本において、
「国内長期金利の大幅上昇」と「極端な通貨安(円安)」が
永続的に同時進行することはあり得ません。
為替の長期トレンドを決定づけるのは、名目金利ではなく、
インフレ率を加味した市場の「長期実質金利」です。
現在の10年債で計算してみましょう。
日本: 名目金利3.0% − コアCPI約2.0% = 実質金利 約+1.0%
米国: 名目金利4.7% − PCE約3.7% = 実質金利 約+1.0%
お気づきでしょうか。
市場が取引する長期の実質金利の世界では、
日米の実質金利差はすでに消滅しているのです。
実質金利差が存在しない以上、
これ以上の極端な円安を正当化するファンダメンタルズの根拠はどこにもありません。
2.機関投資家のレジームチェンジ:生損保「円キャリー」の終焉
この実質金利差の消滅は、日本の巨大機関投資家(生損保や年金基金など)の行動様式を
根底から覆します。
国内金利がゼロに沈んでいた過去十数年間、
彼らは利回りを求めて為替リスクを冒し(為替ヘッジなしで)、
米国債などの外債を買い続ける「巨大な円キャリートレード」を強いられてきました。
これが構造的な円安圧力の最大のエンジンでした。
しかし現在、為替リスクが全くない国内債券で「10年3.0%、20年〜30年で4%台」という
十分な利回りが確保できるようになりました。
ボラティリティが高く暴落リスクを孕んだドル(米国債)を、
これ以上無防備に買い増す経済的合理性は完全に消滅しています。
円安を押し上げてきた最大の構造的エンジンはすでに停止しており、
国内回帰(リパトリエーション)の巨大なマグマが水面下で溜まり続けています。
なお、目前に迫る9月末の半期末リバランスにおいて、
生損保が引き起こす「数兆円規模のレパトリの真実」については、
明日のメルマガで詳しく解き明かします。
3.G20の舞台裏:ベッセント長官が日銀利上げを絶賛する真の理由
この「日本の機関投資家の資金シフト」こそが、
米国の政策中枢が最も恐れているシナリオです。
G20の舞台裏で、ベッセント米財務長官は植田日銀総裁と会談し、
「円の過小評価に対し、日本が断固たる金融政策(利上げ)を講じることを強く支持する」
と公表しました。
さらに日本の金利3%突破についても「正しい措置だ」と手放しで称賛しています。
他国の中央銀行の引き締めを、米財務長官がここまで露骨に歓迎するのは異常事態です。
その真の理由は、連邦債務40兆ドル・利払い年1兆ドルに苦しむ米国にとって、
「日本の機関投資家による米国債の投げ売り」を
何としても阻止しなければならないからです。
無秩序な円安が放置されれば、為替変動リスクに耐えきれなくなった日本の資金が…
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