【ジャクソンホールの罠】9月利上げの亡霊と160円の鉄の天井で待ち構える日米当局

本日のテーマ

週末を前にしたドル円は、
159円前後での神経質な揉み合いに終始しました。

来週後半に控える「ジャクソンホール会議」という巨大イベントに向け、
市場はポジション調整主体の「嵐の前の静けさ」に包まれています。

しかし、表層的な値動きの裏では、正常性バイアスを打ち砕く
「強烈なマグマ」が沸々と煮えたぎっています。

本日は、来週のジャクソンホールで何が起きるのか、
そして大衆が完全に見落としている「FRB内部の反乱」について、
クオンツの視点で深く解き明かします。

上野ひでのり本日の視点

1.あっさりと剥落した「ベッセント効果」の賞味期限

水曜日に炸裂したベッセント米財務長官による
「超長期米国債のバイバック(買い入れ消却)倍増」という奇襲は、
CTAなどの投機筋を焼き尽くし、一時的な金利低下とドル安をもたらしました。

しかし、その効果の賞味期限はわずか1日で切れました。
米10年債利回りは再び4.73%へと上昇し、元の水準へ回帰しています。

これは何を意味するのか。

バイバックという「流動性操作(対症療法)」では、
米国の財政悪化とインフレの高止まりという「構造的な金利上昇圧力」を
根本からねじ伏せることは不可能だという、債券市場からの冷酷な回答です。

2.議事録が暴いた「FRBタカ派の反乱」と9月利上げの亡霊

現在、市場の大衆は「先日の米雇用統計(NFP)がマイナスに沈んだから、
9月のFRBは利下げに転換する(あるいはハト派化する)」
と無邪気に信じ込んでいます。

しかし、水曜日に公表された7月FOMC議事録は、
その前提を根底から覆すファクトを突きつけました。

議事録によれば、
なんと「3名」もの委員が利上げを支持して反対票を投じていたのです。

同一方向への3名の造反は、2016年9月以来という異常事態です。
さらに「複数(several)」の参加者が
25bp(0.25%)の利上げを求めていたことも判明しました。

中東情勢の悪化による原油価格の高騰(前年比35%高)に加え、
AIデータセンターの急増による強烈な電力・インフレ圧力が、
米国の物価を底辺から押し上げています。

ウォラー理事ら投票権を持つタカ派委員が健在な中、
「9月利上げ」のシナリオは決して死んでおらず、
むしろ「Live(予断を許さない状況)」であるというのが、マクロの真実です。

3.ジャクソンホールの焦点:「非・ガイダンス」と日米の挟み撃ち

来週27(木)~29日(土)のジャクソンホール会議では、
ウォーシュFRB議長の講演が最大のハイライトとなります。

ウォーシュ議長は、
市場に安易な安心感を与える「フォワードガイダンス(先行き指針)」に対して
極めて否定的なスタンスを取る人物です。

市場が期待するような「インフレ勝利宣言」や
「ハト派への転換を示唆するリップサービス」が出る可能性は
極めて低いとみるべきでしょう。

もし彼がインフレ警戒を緩めなければ、
債券自警団は「FRBの決意を試す」べく米国債を売り浴びせ、
米金利は再び跳ね上がります。

さらに同日27日には、日銀・氷見野副総裁の講演も控えています。
前回のメルマガで指摘した通り、
日銀は「FIMAレポ活用」という米国の強力な支援を受けた対価として、
継続的な利上げ姿勢を維持することを義務付けられています。

氷見野副総裁がここでハト派に転じることは許されず、
追加利上げに向けた地均し(タカ派発言)を行う公算が大きいと言えます。

つまり来週は、「米国の金利高止まり警戒」と「日銀のタカ派牽制」という、
日米当局によるボラティリティの挟み撃ち(ピンチアタック)
が発生する構造となっているのです。

4.実践的戦術:160円へ向けた「偽りのブレイクアウト」を叩け

ウォーシュ議長のタカ派姿勢によって米金利が跳ねた場合、
アルゴリズムと大衆の順張りマネーがドル円を160円方向へ押し上げる
「瞬間的なスパイク(上振れ)」が起きる可能性が…

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