【米雇用統計NFPマイナス転落】利上げ観測剥落とドル円の200日線割れ

本日のテーマ

昨日のメルマガで「雇用統計の罠」として警告した直後、
市場の前提を根底から覆す「NFPマイナス転落」という
劇的なショックが金融市場を襲いました。

昨晩21:30に発表された7月米雇用統計は、
非農業部門雇用者数(NFP)が予想(+8.8万人)に反し、
まさかの「-2.3万人」へと沈み込むネガティブ・サプライズとなりました。

過去2か月分も、計10万人超の大幅下方修正となり、
平均時給の伸びも前月比+0.1%へと急減速しています。

これを受け、ドル円は一時156.666まで急降下。
大引けにかけて押し目買いが入ったものの157.782でのクローズとなり、
中長期トレンドの分水嶺である「200日移動平均線(158.00の節目近辺)」
の下へ、再び叩き落とされました。

本日は、表面的な数字の裏に潜む米国経済のパラドックスと、
FRBのジレンマ、そして来週の米CPIに向けた戦略について解説します。

上野ひでのり本日の視点

1.マクロ解析:失業率低下の「罠」と消費失速の予兆

今回の統計で大衆を惑わせているのが、
「雇用者数が減ったにもかかわらず、失業率は4.2%から4.1%へ低下した」
というパラドックスです。

クオンツ的な視点で紐解けば、これは決して雇用環境の改善ではありません。

トランプ政権による移民制限や、ベビーブーマー世代の退職によって、
職探しをする人自体が減少し、
労働参加率が61.4%(2021年2月以来の低水準)へと落ち込んだことで、
計算上の分母が縮小したに過ぎないのです。

市場が直視すべき【本質的リスク】は、
賃金の伸び(前年同月比3.2%)がインフレ率を下回り、
「実質賃金の目減り」が起きているという事実です。

個人の貯蓄率も2.7%と限界水準まで低下しており、
これまで米国経済を牽引してきた
「個人消費」の失速リスクが急速に高まっています。

2.FRBのジレンマと「9月利上げ観測」の逆転

この雇用指標の変調は、
米金融政策の行方に決定的な地殻変動をもたらしました。

ウォーシュFRB議長や一部のタカ派委員が目論んでいた
「インフレ再燃を理由とした9月利上げ」のハシゴは、
今回のNFPマイナス転落によって見事に外されました。

短期金融市場(FedWatch Tool)では、
指標発表前まで55%程度あった9月利上げ確率が44.4%へと急低下し、
「金利据え置き」がメインシナリオへと逆転しています。

インフレ圧力自体は残存しているものの、
労働市場失速のリアルな数字を突きつけられたFRBは身動きが取れなくなり、
ドル(米長期金利)が自律的に上値を追うための推進力は、
大きく削がれました。

3.地政学リスク:ベッセント「ユーロ円介入」の代償

大衆がドル円の値動きだけに一喜一憂する中、
巨額資金を動かすプロが密かに警戒しているのが、
先日の日米協調介入で米国が強行した
「ユーロ円でのユーロ売り・円買い」に対する欧州側の反発です。

米大手資産運用会社が指摘するように、
米国が「自国の米国債市場を守るため」に、
欧州当局への事前通告なしにユーロを売り叩いた事実は、
各国間の協調に亀裂を生じさせ、地政学リスクを高めています。

なりふり構わぬ米国の「自国第一主義(リアリズム)」が、
今後の為替市場に予期せぬ政治的ノイズをもたらす可能性を、
私たちは頭の片隅に置いておく必要があります。

4.実践的戦術:12日「米CPI」に向けた戦略

弱い雇用統計によって、
今回は当局が実弾(為替介入)の引き金を引くまでもなく、
相場は自律的に「200日線(158円)」の下へ押し戻されました。

下値での押し目買い意欲は依然として根強いものの、
「158円のレジスタンス(上値抵抗)としての強固さ」が
改めて証明された形です。

来週12日(水)には、
インフレ動向を占う7月の米消費者物価指数(CPI)の発表を控えています。
FRBがインフレと雇用の板挟みに苦しむ中…

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