【米CPIは好結果】GPIFの国内シフトが円高の呼び水になる可能性も

本日のテーマ

為替・債券市場は今、日米双方から押し寄せる巨大な地殻変動の渦中にあります。

昨夜発表された米国の6月消費者物価指数(CPI)は、
市場の過熱した利上げ期待に冷や水を浴びせる劇的なディスインフレを示しました。

一方で、ドメスティックな日本市場では、
世界最大のクジラである「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」
のポートフォリオ見直しを巡る思惑から、
国債市場が歴史的な大活況(金利急低下・債券高)を迎えています。

本日は、「米国の利上げ期待=ドル高の賞味期限」と
「日本側の債券高・円高への構造転換」という2本の軸から、
今後のドル円の方向感についてシンプルに論点を整理します。

上野ひでのり本日の視点

1.【米利上げ期待の行方】劇的なディスインフレとドル相場の粘り

まずは昨夜、市場にサプライズを与えた米6月CPIの結果です。

【6月 米消費者物価指数(CPI)】
・総合(前年同月比):3.5% (予想:3.8% / 前回:4.2%)
・コア(前年同月比):2.6% (予想:2.8% / 前回:2.9%)

・総合(前月比):-0.4% (予想:-0.1% / 前回:0.5%)
・コア(前月比):0.0% (予想:0.2% / 前回:0.2%)

結果は、総合・コアともに事前予想および前回実績を大幅に下回る
ディスインフレとなりました。

特にコアの前月比「0.0%」、前年比「2.6%」への急減速は、
金利市場に衝撃を与えました。

これを受けてFedWatch Toolでは、
前日まで43.3%へ急騰していた7月の追加利上げ確率は16.6%へと急降下。
年内2回の利上げ期待は消滅しました。

ウォーシュFRB議長が下院の議会証言で「インフレ阻止に注力する」と
従来のタカ派姿勢を強調したものの、
これは想定の範囲内であり市場の反応は限定的でした。

トランプ大統領がホルムズ海峡の「通航料20%要求」を事実上撤回し、
湾岸諸国との協定で代替する方針に切り替えたことも、
中東の最悪期脱出を示唆しています。

しかし、これほどの好結果(ドル安材料)が出たにもかかわらず、
ドル円の下落は当日の高値162.463から161.600への一時的な突っ込みに留まり、
後半は根強い押し目買いに押され、162.20台へ戻して引けました。
ドル指数(DXY)も101を割り込んだものの100台で高止まりし、
ドル高傾向は継続しています。

なぜドルはこれほど頑強なのか。

理由は、イラン情勢の不透明感から
WTI原油先物が79ドル台の高値で推移していることに加え、
先物市場で「年内1回の利上げ確率」が依然として78.4%(前日90.2%)
という高い残像を維持しているからです。

この利上げ期待がデータで完全にへし折られるまでは、
ドル高の賞味期限はもうしばらく粘って長期化することになるでしょう。

2.【円高・債券高の可能性】官製「クジラ相場」の覚醒とオルカンシフトへの楔

一方で、これまでの一方通行の円安トレンドを根底から引っくり返す
「本物の需給変化」が、日本の債券市場で産声を上げています。

14日(火)、日本の20年物国債入札において、歴史的な事件が起きました。
需要の強弱を測る「テール(平均落札価格と最低落札価格の差)」が、
2010年5月以来、実に16年ぶりとなる「ゼロ」を記録したのです。

さらに落札会社が判明しない「不明玉」が5,623億円(前回2,959億円)へと急増。
これは2025年から国債入札に直接参加している世界最大のクジラ「GPIF」が、
利回りを無視して巨額の応札を敢行した可能性を意識させるファクトです。

この背景には、
片山財務相や上野厚労相による「想定した環境が変われば、
GPIFの基本ポートフォリオは適時適切に見直す」
「日本資産への投資を後押しする」という一連の踏み込んだ口先介入があります。

これを受けて流通市場では20年債利回りが一時3.565%(前日比-0.165%)へ急低下し、
長期金利(10年債利回り)も2.705%へと軒並み急低下(債券価格は急上昇)しました。

今回の片山大臣によるアプローチがこれまでの「投機筋への抽象的な威嚇」
と一線を画すのは、
ドル円の需給構造そのものに楔(くさび)を打ち込んできた点にあります。

2006年度時点で17%に過ぎなかった年金運用の外貨比率は、
2020年度の均等配分化(国内外の株式・債券に各25%)によって
巨額の「構造的円安の土台」を作りました。

政権はこの国内外の比率見直し(国内回帰)に本気で着手し始めています。
さらにこれは、新NISA経由で人気の「オルカン(全世界株式)」一辺倒となっている
個人の海外投資フローに対し、
国内金利の上昇を背景とした「日本国債関連商品」
へのシフトを促す明確な警告でもあります。

クジラ(GPIF)が動き、
生保などの民間機関投資家や個人マネーが国内債券へ回帰すれば、
それは一時的な為替介入とは比較にならない「本物の需給反転」を引き起こします。

3.【結論】ドル円の方向感

現在のドル円相場は、米国のインフレ鈍化による…

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