【イラン情勢悪化でリスクオフ】米利上げ確率が再び急騰も一時的現象か

本日のテーマ

昨日から本日朝方にかけて、
世界のマクロ経済と金融市場は再び「中東戦火の再燃」という
巨大な地政学リスクの濁流に呑み込まれました。

トランプ大統領による衝撃的な停戦打ち切り発言と
米軍による2日連続のイラン追加空爆を受け、
WTI原油先物は76.08ドルまで急騰。

これに連動して米10年債利回りも4.597%まで上昇し、
昨夜のNY為替市場でドル円は一時162.703まで上値を拡張しました。

しかし、明けて本日の東京タイムがスタートすると、
市場はマクロの教科書通りには動かない、
極めて興味深い「ねじれ現象」を演じています。

本日は、激変した中東の最新ファクトと昨日公表された6月FOMC議事録の深層、
そして本日の東京タイムに出現した新たな相場の歪みについて冷徹に解剖します。

上野ひでのり本日の視点

1.トランプ「停戦は時間の無駄」:原油76ドル突破が火をつけたインフレ懸念

市場の楽観シナリオを破壊したのは、トランプ大統領の生々しい激白でした。
NATO首脳会議が開催されているトルコのアンカラでの記者会見、
および自身のSNSにおいて、
大統領はイランとの暫定的な停戦について次のように断言しました。

「私としては、もう終わったと思っている。時間の無駄に過ぎない」
「恐らく今夜もイランを激しく攻撃するだろう」

米中央軍はイランが商船を攻撃した責任を問うとして、
2日連続となる激しい追加空爆を断行。
これに対しイラン側も「倍返し」の報復とホルムズ海峡の完全封鎖を示唆し、
攻撃の応酬となっています。

トランプ氏は
「商船攻撃には10倍の力で反撃する」
「戦闘はあっという間に終わる」と強気の姿勢を崩していません。

最終合意への交渉が決裂したことで、WTI原油は76ドル台へ急騰。
エネルギー価格の上昇によるインフレ再燃懸念が、
一瞬にして市場の最前面へと引きずり出される形となりました。

2.6月FOMC議事録が明かした、AIインフレへの恐怖とウォーシュの沈密

この緊迫したタイミングで公表されたのが、
ウォーシュ新FRBB議長下での初陣となった6月会合のFOMC議事要旨です。

中身を解剖すると、
当時の政策担当者間で高インフレへの懸念が極めて強かった実態が
浮き彫りになりました。

結果自体は政策金利3.50~3.75%への据え置きで全会一致だったものの、
「数人の参加者」がその時点で即時利上げの根拠を主張していたほか、
「大半の参加者」が人工知能(AI)インフレ、
すなわちAIインフラ整備に伴う巨額の需要が物価を高止まりさせるリスクを
指摘していたのです。

これを受けて、FedWatch Toolの年内利上げ確率は86.8%まで再上昇。
市場はなんと2027年前半の「追加利上げ」までをも織り込み始めるという、
タカ派な先高観がぶり返しています。

しかし、ここでも注目すべきはウォーシュ議長の動きです。
彼は今後の政策決定の声明文を極限まで簡潔化し、
先行きを示唆する文言を削除する提案を主導しました。

学者委員たちが過去のトラウマやAI需要に怯えて利上げを大合唱する中、
ウォーシュ氏は特定のシナリオへのコミットを完全に拒否し、
中央銀行の圧倒的な「裁量権(手の内を隠す密室化)」を着々と構築しています。

3.東京タイムの歪み:「株高・円高」が示す下落バイアスの胎動

昨夜のNYタイムでは上記のマクロ材料からドル高が支配したものの、
東京タイムに入ると相場は一転して下落バイアスを強める展開となっています。

特筆すべきは、資産価格の奇妙な相関(ディストーション)です。
昨日の日経225先物は一時65,000円台まで急落し、
本日の現物市場は大幅安が警戒されていましたが、
蓋を開けてみれば日経平均株価の現物はむしろ反発し、
68,000円台での底堅い値動きを維持しています。

通常の「リスクオフの円買い(日本株安)」でもなければ、
「株高に伴う為替ヘッジの円売り」でもない。

株価が非常に底堅く推移しているにもかかわらず、
為替市場だけが単独でドル安・円高方向にバイアスがかかるという、
極めて興味深い需給の逆回転が起きているのです。

本日10時時点のドル円の本日の値幅は25銭。
上値の重さが嫌気される中、
意識されていた162.50の節目は比較的あっさり下抜けました。
ここから下、162.25の節目については、
海外勢の押し目買い意欲と相まって、
底値のサポートとしてかなり強力に機能しそうな気配を見せています。

4.結論:過熱した幻影の賞味期限と、目先の防衛ライン

イラン情勢の悪化を受けて利上げ確率が86.8%まで再上昇したことで…

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