11.7兆円介入は失敗なのか?メディアが読めない165円の仮想現実と4.2兆円の利益

本日のテーマ

昨日、財務省から
【外国為替平衡操作の実施状況】
月次ベース(令和8年4月28日~令和8年5月27日)が発表になり、
4月30日~5月6日に行ったと思われる為替介入の総額は、
11兆7,349億円と判明しました。

10兆円予想よりも大きく、過去最大の為替介入となりました。

ドル円は現在も159円台での神経質な高値保ち合いが続いており、
160円の大台を再びうかがいながらも、膠着状態が常態化しています。

この過去最大となる介入総額の発表を受け、
某経済メディアでは
「巨額の資金を投入したのに、結果的にたった1円しか円高に戻っていない」
「円安の根本解決になっていない」と、
介入を「意味のない無駄遣い」であるかのように
批判的に報じる論調が目立ちました。

しかし、プロの視点から見れば、
この評価は基準点(アンカー)を完全に間違えた、典型的な的外れの分析です。
本日は、複数の軸から、
「11.7兆円介入の本当のパフォーマンス」と「相場のリアル」を解き明かします。

上野ひでのり本日の視点

仮想現実(カウンターファクチュアル)とのギャップ

真の介入効果は「直近の高値から何円下がったか」ではなく、
「もし介入がなかったら、現在のレートはどこにいたか」という
仮想現実との差分(デルタ)で測定しなければ意味がありません。

仮にあの時、160円台の絶対防衛線が
ノーガードで突破されていたらどうなっていたか。

先日のPCEデフレーターが明確に示した「インフレの再燃」と、
米金利の高止まりという強烈なマクロ重力を背景に、
HFT(高頻度取引)のアルゴリズムが真空地帯を暴走していたはずです。

今頃、【1ドル=165円〜168円】へと
致命的なオーバーシュートを引き起こしていたかもしれません。

つまり、11.7兆円の実弾は「たった1円しか下げられなかった」のではなく、
「本来なら165円を超えていたかもしれない円暴落を、
物理的に6〜8円分叩き落とし、
159円台というレンジ内に1か月間強制的に釘付けにした」
というのが正しい評価だと私は思います。

暴露された「4.25兆円」の巨大なボーナス

さらに興味深いことに、同じ記事のコメント欄において、
同メディアのベテラン客員編集委員が、
記事本体の「無駄遣い」という論調をひっくり返す、
爆弾を落としていました。

コメントの要旨は下記の通りです。
今回の介入で売却されたドルの買いコストは101円99銭。
ドル売り介入では、1ドルあたり約58円の儲け(利益率36.2%)。
単純計算で「約4.25兆円の実現益(税外収入)」が発生した。
財政には棚から牡丹餅。

一部の専門家は「財政悪化だ、日本売りだ」と騒ぎ立てますが、
政府は介入によって相場の時間を稼ぎながら、新規国債を発行することなく
「4兆円規模の莫大な税外収入(軍資金)」が国庫に還流します。
食料品の消費税ゼロの財源が約5兆円ですから、かなり見合っています。

「おかわり介入への期待」というアナリストの妄想

もう一つ、メディアの分析で致命的にズレているのが、
「個人投資家は『追加介入(おかわり介入)』を期待して、
健気にドル売りのポジションを持ち続けている」という見立てです。

これも実戦を全く知らない人間の妄想としか思えません。
オプション市場のボラティリティが
数年ぶりの低水準まで圧縮されているこの閑散相場で、
現場のトレーダーは、当局が介入してくるとは本気で思っていません。

彼らがドル売り(ショート)にポジションを傾けているのは、
もっと冷徹で合理的な理由です。

160円という分厚い壁がある以上、
ここからドル買い(ロング)で突っ込むのはリスクが高すぎる。

だからこそ、この狭いレンジ相場の中で
「上限(160円)を背にしてショートを仕掛け、サクッと回転させる」のが、
現在の環境において…

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