日銀は、政策金利について-0.1%のマイナス金利を採用しています。
企業向けの貸出しにかかる短期プライムレートや住宅ローンの変動型金利に影響を与えます。異次元緩和の一環なので、当然のこと企業や住宅を購入する人は低金利の恩恵を受けています。
一方、資産家にとっては、普通預金金利が0.001%、直近10年で50%を超える円安効果も手伝って、実質的に資産を減らし続けている状況です。
この不合理を解消するために、日銀の金融正常化は待ったなしの状況です。2024年早期に、マイナス金利を解除でゼロ金利に戻し、その後小刻みな利上げサイクル入りする可能性が高くなってきました。
今回は、10年債利回り(長期金利)に影響するYCC(イールド・カーブ・コントロール)撤廃の件はいったん外して、政策金利にかかる今後のスケジュールと相場に与える影響を考察します。
目次
第1のヤマ場は2023年12月19日の会合
日銀植田総裁は、11月6日の金融経済懇談会(名古屋)で、マイナス金利解除の前提となる物価2%目標の安定的かつ持続的な達成について「確度が少しずつ高まってきている」と踏み込んだ発言を行いました。
2023年最後の日銀金融政策決定会合では、そのトーンが一段と強まる可能性が高いと思います。
相場に与える影響です。利上げを想定すれば株価が下がるのが通常ですが、2024年早期のゼロ金利解除を既に織り込んでいると思われるので、当面は、好調な株価形成の妨げにはならないと思います。
ドル円レートに対する影響も、円安を多少食い止める効果はあるにしても大きなインパクトを与えないでしょう。
第2のヤマ場は2024年1月23日の会合
この会合では、物価見通しを更新します。ここで物価2%目標の達成が確信に変わってくれば、賃金の上昇を見届けてから即利上げ(ゼロ金利解除)のサインとなります。
第3のヤマ場は2024年3月19日の会合
「賃金の上昇を見届けてから」というタイミングですが、2024年も例年と同様に、春闘の集中回答日は3月15日頃になると思われます。その直後の会合なので、ここで利上げをしなければいつするのかという絶好のチャンスです。
より慎重に判断を行うとすれば、4月26日の会合での物価見通し更新とともに利上げということになるでしょう。実際に金融業界ではそういう見方が多いのですが、そんなに遅いスピード感では、再び利上げ催促の円売りが加速してしまう可能性が高いと思います。
したがって、外圧により早期利上げに追い込まれると想定しています。
春闘の行方
2023年は例年にない歴史的な3.60%の賃上げとなりましたが、厚生労働省では2024年も3.70%の高水準の伸びを予想しています。この予測は上振れする可能性が高く、ネガティブな結果になることは、まずないと思います。
【まとめ】2024年3月19日に利上げ(ゼロ金利解除)の可能性が高い
絶好調な春闘の結果を受け、それでも日銀が動かなければ、外国人の日本売り(円売り)が加速することは、まず間違いないところです。
低金利の恩恵を十分過ぎるほど受け続けてきた企業、個人、そして政府(国債利払い予算が低減)も、覚悟を決める時期が迫っています。
しかし、それでも円安が止まるかどうか、企業業績と株価の堅調を保つことができるのか、新しい挑戦の始まりとなります。
私個人的には、株価はいまだ割安で上昇余地があり、1ドル152円台に乗せる円安が進行する可能性は低いと想定しています(金融正常化の第一歩が評価されて、急激な円高になる可能性も低いでしょう)。その予想が外れるとすれば、日銀が期待通りに動かなかった場合に限ると思います。賃上げ(春闘)については、心配していません。