以前、「FedWatch Tool(FEDウォッチツール)」の読み方について解説を行いました。チェックすべきポイントは限られていますので、毎日の日課にしていただくのが良いと思います。
FOMCのFF金利見通しが相場を動かす【FEDウォッチツール】毎日確認しよう!
「VIX(恐怖指数)」や「Fear & Greed Index」のような市場心理を動かすのが、FEDウォッチツールの見通しの変化であると言えます。ともあれ、日々の変化に敏感になれば、相場の方向を大きく見誤ることもなくなるでしょう。
この記事では、前回の記事の読み方に基づいて、現状の米国政策金利の動向を分析してみます。
目次
直近のトレンドを決定づけたパウエル議長のハト派発言
11月1日(水)のFOMC後の記者会見にて、パウエルFRB議長のハト派発言がきっかけで、現状の政策金利5.25-5.50%が事実上、ターミナルレート(利上げの到達点)に決まった見通しです。
ただし、今後の米国消費者物価指数(CPI)およびPCEコアデフレーターで、再び過度なインフレ傾向が確認されないことが絶対条件になります。また、米国雇用統計の平均時給で賃金インフレが最過熱しないことも重要です。
12月13日(水)のFOMC会合の利上げ確率は9.7%
FOMC直前の利上げ確率は20~25%程度ありましたので、かなり後退しました。
会合当日までに、米国消費者物価指数(CPI)の発表が2回、米国雇用統計の発表が1回ありますが、今後1か月で急激に数字が変動することは考えにくいです。
年内の据え置きは、まず間違いないところでしょう。
利下げ確率が50%を超えるのは2024年5月のFOMC会合から
水色の塗りつぶしのセルは、当該会合で最も確率が高いターゲットレートになります。今後3会合は据え置き予想が大勢を占めます。利上げ予想は、2023年12月13日が9.73%、2024年1月31日が16.26%、2024年3月20日が12.37%となり、それ以外はターミナルレートで据え置きあるいは利下げ予想です。
2024年5月1日から利下げ予想が50%を超えてメインストリームになります。53.70%の利下げ確率です。
その後の利下げ確率は、74.33%⇒87.97%⇒94.69%⇒97.21%⇒98.73%と漸増し、2024年後半から徐々に利下げが進行することになります。
日銀のマイナス金利解除⇒利上げおよびYCC廃止は逆トレンド
日銀がマイナス金利を解除する時期は、春闘の結果の大勢が判明しているであろう2024年3月19日(火)の会合になると思われます。2023年12月19日(火)、2024年1月23日(火)に続く、3回目の会合になります。
マイナス金利を解除してゼロ金利に戻すところから、順次利上げを行う流れになるでしょう。
政策金利が利上げされると、短期プライムレートおよび住宅ローンの変動金利がすぐに上昇します。住宅ローンのうち変動金利は68.1%に適用されていますが、返済負担が漸増することになります。
直近の2023年10月31日(火)の会合で決定した「10年債利回りは1%目途に運用を柔軟化する」すなわち1%超えの利回りも場合によっては容認するという政策の延長線上にあるのが、YCC(イールドカーブコントロール)の廃止です。
10年債利回りとは、いわゆる長期金利であり市場原理で決まります。日銀がコントロールするという意味は、ターゲットレートに達したら10年国債を買うこと(買いオペ)により、それ以上の金利上昇を抑えるということです。非伝統的手法であり、長く続けられる金融政策ではありません。2016年9月に黒田日銀が採用しましたが、2024年の第1四半期中に植田日銀が廃止する可能性が高いと思います。
長期金利が市場原理で決まるということになると、しばらくは1%を超え2%程度のレンジの相場になりそうです。2022年以前にはゼロ金利周辺にありましたが、徐々に上昇し、直近のピークは0.978%です。
長期金利上昇に連れて、長期プライムレートおよび住宅ローンの固定金利が毎月引き上げられています。企業の長期借入金について、借り換えのときに負担が大きくなります。住宅ローンを新規にフラット35で組むときには、明確な金利負担の上昇を実感するでしょう。
ドル円レートは2024年初から徐々に低下する
FRBの利下げペースは決して速くはなく、米国長期金利の下落ペースも同様と考えられます。
一方、日銀の利上げおよびYCC廃止は確実に実行されますが、利上げのペースは遅く、長期金利の上昇も限定的と思われます。
したがって、米日金利格差は現状よりも縮小するものの、そのペースは緩やかです。金利というファンダメンタルな環境変化によるドル円の下落ペースはゆっくりが想定されます。投機的なトレンドについて、下落方向に大きなバイアスがかからない限り、2024年のドル円は130円台を目指した緩やかな値動きになりそうです。