つい1週間前までは、ドル円相場が年初来高値を更新し、為替介入も時間の問題という緊迫した状況にありました。
しかし、二度目の神風が吹いてすっかり様変わりです。加えて、欧米の大手金融機関のトレーダーの店じまいも思ったより早く進み、2023年中に150円台復帰は難しく、為替介入の想定レベル152円到達の可能性は極めて低くなりました。
【円安危機に2度目の神風】米国CPIが有意に低下で利上げ終了観測高まる
目次
円安危機に対する二度の神風を確認しよう
画像かテキストリンクをクリックすると、より詳細なチャートが別画面で開きます。
これは、【上野式プロFXオリジナルMT4チャートセット】の1時間足です。XMトレーディングのリアル口座が動いています。
ワンブロック24本の1時間足が日足を構成します。白い水平線が当日の高値、赤い水平線が当日の安値です。
このチャートは2023年10月30日(月)から始まっています。
「円安危機が二度の神風に救われた」と述べました。
10月31日(火)の日銀金融政策決定会合がきっかけで、30日(月)の安値148.793から一気に151.701の年初来高値まで達しました。為替介入警戒感からいったん押し目を形成したものの、翌11月1日(火)のFOMC終了後のパウエルFRB議長の会見が想定以上のハト派で急落です。
これが一度目の神風ですが、安値は149.177であり、いったん底入れしました。
円安トレンド(強い円売り意欲)は継続中であり、11月13日(月)まで6営業日続伸。高値は151.898で、年初来高値を再び更新しました。
そして翌日、14日(火)の米国消費者物価指数(CPI)の有意な低下で、インフレ懸念が大幅後退、FRBの利上げ打ち止めが確定的になりました。
これが二度目の神風です。
急落後には押し目買い意欲も依然旺盛でした。しかし、11月23日(木)から欧米の大手金融機関のトレーダーが感謝祭休暇に入る直前で、2023年の大きなテーマである円売りはいったん巻き直し(リバランス)となった訳です。
ドル円1時間足の読み方
11月13日(月)の年初来高値151.898(他のブローカーでは151.911)の翌日から、一部の例外を除いて、5営業日連続で、前日の高値および安値を更新しています。これはダウ理論でいう下落トレンド継続中(下げダウ)となります。
よほどしっかりした底入れ反転のシグナルが出るまでは、このトレンドが継続します。
10月30日(月)の安値148.793アラウンド、148.75の節目を若干下抜き、148.680の安値をつけましたが、ここが正念場です。
このレベルを明確に下抜くと、下落トレンドは継続となります。
ここでは表示していない日足では、一目均衡表の雲の上限でサポートされており、さらなる急落は辛うじて免れている状況です。
米国10年債利回りと日本10年債利回り格差
ローソク足が米国10年債利回り、黒い太線が日本10年債利回りの日足です。
画像かテキストリンクをクリックすると、より詳細なチャートが別画面で開きます。
米日金利格差という観点で言えば、米国債利回りの低下が顕著なので、ドル円急落のファンダメンタルな裏付けになっています。
日本国債利回りもピークからの反落ではありますが、もともと利回りが低いため、ドル円レートには大きな影響を与えません。米国債利回りの急落が、ダイレクトにドル円相場に響くメカニズムです。
【まとめ】今後のドル円相場の見通し
円安危機、為替介入の可能性は大きく後退したことは事実です。150円台の大台に達すれば、強力な戻り売り圧力にさらされるでしょう。
前回の為替介入は151.937の高値をつけた2022年10月21日(金)深夜から翌24日(月)早朝にかけて行われました。このときも、その直後に米国10年債利回りの急落がきっかけでドル円は暴落し、2023年1月16日(月)に127.214の安値をつけました。実に24.723円(16.3%)もの円高が進行したことになります。
ファンダメンタル的裏付けとしては、米国10年債利回りが4.335%から3.404%まで急落した相場と相関しています。
今回も、米国10年債の利回り動向に大きな影響を受けると考えるのが妥当でしょう。
12月19日(火)の日銀金融政策決定会合について、前回の為替介入寸前の円安危機とは全く違った状況で迎えるでしょう。欧米の大手金融機関のトレーダーはクリスマス休暇中であり、苦し紛れのタカ派政策もどきをアピールする必要もなく、現状維持であっても円売りがエスカレートする可能性は低いと思います。
という訳で、欧米の大手金融機関のトレーダーが戻ってくる2024年の新年から、「どのようなテーマで為替相場に取り組むのか?」という方向性(シナリオ)で、その後の相場が決まってくると思います。
それまでは、緩やかに145円レベルを目指す流れを想定しています。昨年と同様に米国10年債利回りが急落すれば、それと比例的に145円を下抜く円高が進行する可能性もあります。