リスクオフでもなぜか強い豪ドル米ドル。RBAが利上げ否定でも着々と織り込み進む

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リスクオフでもなぜか強い豪ドル米ドル。RBAが利上げ否定でも着々と織り込み進む
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米国10年債利回りと豪州10年債利回り

米国10年債利回り推移 日足

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  • 1.127% 2021年8月04日
  • 2.061% 2022年2月11日
6か月で0.934%上昇した。

豪州10年債利回り推移 日足

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  • 1.053% 2021年8月23日
  • 2.258% 2022年2月15日
6か月で1.205%上昇した。

直近6か月のパフォーマンスは豪州が上回る

今年3月から利上げを始める米国(FRB)よりも、利上げは早くて2023年とする豪州(RBA)の長期金利のほうが上昇のペースが速い。
6か月前の状態から逆転している。

RBAは早期利上げを否定するが、金利先物市場では今年の利上げを確実視しているため、豪州10年債利回りが、3月からの利上げが確定している米国10年債利回りに連れ高するのである。

豪ドル米ドル日足

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  • 0.71064 2021年08月20日
  • 0.75555 2021年10月28日 高値
  • 0.69676 2022年01月28日 安値
  • 0.72486 2022年02月10日
豪州と米国の金利格差だけが為替に反映されるのであれば、1月28日の安値は売られ過ぎであり、2月10日に0.72486まで反発したのは自然な流れであろう。
2月10日は米国消費者物価指数(CPI)が発表になった日であり、40年ぶりの高いインフレ率に米国長期金利は急騰したが、豪州長期金利も少し遅れて急騰し、戻り高値をつけたのである。

戻り高値をつけた直後に、ブラード・セントルイス連銀総裁のタカ派発言があり、豪ドル米ドルは反落した。
続いてウクライナ問題の緊迫化を受け、米国株価急落で、豪ドル米ドルは連れ安している。

ここで比較しているのは名目金利であるが、本来は実質金利(期待インフレ率を考慮)を用いるのが正確である。
しかし、期待インフレ率は豪州より米国のほうが高いので、実質金利で比較した豪州と米国の金利格差のほうが広がってしまい、豪ドル米ドルの上昇余地が大きいということになる。

RBA(豪州中銀)のスタンスに変化なし

4月に発表される第1四半期CPIの結果次第

詳細は下記の記事にて
【RBA(豪州中銀)結果速報】インフレ率2.6%でも一時的で利上げは時期尚早。豪ドル失望売り

「インフレ率は今後数四半期で約3.25%まで上昇」と布石を打ち、賃金上昇が伴わなければ利上げを行わないと述べているので、少なくともあと3か月は、利上げ議論を封印したことになる。

金融先物市場では0.10%⇒0.75%の利上げを見込む

現状の政策金利は過去最低の0.1%
2022年末までに小幅利上げを計3回実施し、0.75%までの利上げを見込む。
5月までに0.15%の最初の利上げを、ほぼ100%の確率で織り込んでいる。

株価暴落のリスクオフで豪ドル売りの方程式は正しいか?

初動としてそうなるのは慣例として正しい

直近のウクライナ情勢の悪化で、豪ドル米ドルは米国株価(先物)の急落と連動して売り込まれているが、反発はユーロドルより速く、ポンドドルと争って急反発し、結局往ってこいになっている。

リスクオフの瞬間に豪ドル米ドルを売るのは正しいが、すぐに値を戻すので売りっぱなしにはできない。

株価暴落が続いた場合に「豪ドル円」の売りは有望

これは、本質的には、持続的な円高に賭けるポジションであり、クロス円であれば程度問題であるが同じ効果がある。
ウクライナ戦争が勃発すればユーロ円売りが最も適しており、米国の金融引き締め主因の暴落であれば豪ドル円売りで良いだろう。

しかし、豪ドル米ドルの力関係は、前述の通り長期金利の格差で言えば豪ドル優勢であるため、豪ドル円の下落に歯止めがかかるのも早いだろう。