ドイツ長期金利が衝撃のプラ転。「マダムインフレ」ラガルドECB総裁もタカ派に豹変!

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ドイツ長期金利が衝撃のプラ転。「マダムインフレ」ラガルドECB総裁もタカ派に豹変!
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ドイツ10年債の利回りは、その後も伸び続け、2月4日(金)には0.229%の高値をつけました。
2か月間で63.8bp(0.638%)の上昇で、10bpずつ利上げするならば、6.4回分の利上げに相当します。
先週のFOMCのパウエルFRB議長もそうでしたが、声明文と会見の発言(質疑応答)のギャップが大きすぎて、タカ派サプライズが効き過ぎだと思います。

2022年2月3日(木)ECB理事会の結果発表

プレスリリースと議事要旨

日本時間の21:45に結果発表
「Monetary policy decisions(金融政策決定)」プレスリリース公表

22:30からラガルド総裁の記者会見
総裁の記者会見時に議事要旨が公表され、総裁発言を文書で補足した。

ラガルド総裁の記者会見ポイント

  1. 1月のユーロ圏インフレ率が前月に続いて過去最高を更新(+5.1%)したことについて、政策委員会の「全体が懸念している」
  2. 「昨年12月のわれわれの予想に比べ、インフレ見通しに対するリスクは特に短期的に上振れ方向に傾いている」
  3. 「3月の会合とその後の6月の会合が、ECBのフォワードガイダンスの3条件が完全に満たされたかどうかを判断するにおいて極めて重要になる」
  4. 年内利上げの可能性低いとの従来見解述べず、政策姿勢のシフト示唆
政策委員会の協議は非公表であるとして匿名を要請した関係者によると、この日の会合では年内の利上げを排除しないことが賢明だとの判断で一致した。
市場は6月の10bp利上げ、年末までに最大40bpの利上げを想定している。
参考 ラガルド総裁、ECB政策で方針転換-ガイダンス変更も間近か - BloombergBloomberg.com

マイナス金利が一気にプラ転の衝撃でユーロ急騰!

ユーロ圏の中銀預金金利(主要政策金利)は-0.5%

ユーロ圏19か国中、名目GDPが約30%を占めるドイツの10年債利回り(長期金利)は、2021年8月時点で-0.524%であった。
インフレ期待の高まりにより、2021年12月8日時点で-0.409%まで上昇したが、そこから2か月足らずで0.159%(2022年2月4日)まで、実に0.568%も上昇した。
プラ転したのは、2月3日(木)ECB理事会終了後、22:30開始のラガルドECB総裁会見中であった。

ドイツの長期金利が0.159%まで上昇したということは、ユーロ圏の中銀預金金利が近い将来利上げされるという織り込みが進んだということである。

ドイツ10年債利回り(長期金利)日足

画像クリックで、別画面フルHD表示可能

ユーロドルは1.12672⇒1.14514 184.2pipsの暴騰

当日安値の安値は声明文発表直後、高値はラガルドECB総裁会見終了後である。
ドイツの長期金利上昇と連動して、ユーロドルが暴騰した。

ラガルドECB総裁「マダムインフレ」からの豹変

ラガルド総裁は筋金入りのハト派

ラガルドECB総裁は、「マダムインフレ」というニックネームを持つ筋金入りのハト派である。
参考 ラガルドECB総裁は「マダムインフレ」、独大衆紙が痛烈批判ロイター ドイツの大衆紙ビルトは、ラガルド総裁を「マダム・インフレーション」と呼び、ぜいたくなファッションが好きな高給取りだと紹介。一般世帯の苦境は気にしていないようだとし「年金、賃金、貯蓄を目減りさせている」と批判した。

ワイトマン独連銀総裁が抗議の辞任

辞任にいたる公式な理由は下記の通りであるが、事実上、ハト派すぎるラガルド体制に抗議のための辞任だと市場では解釈している。
参考 ワイトマン独連銀総裁、5年以上任期残し年末退任 ECBのタカ派ロイター ドイツ連邦銀行(中央銀行)は10月20日、ワイトマン総裁(53)が12月31日付で退任すると発表した。個人的な理由としている。1期8年の任期は5年以上残っていた。

ワイトマン総裁は欧州中央銀行(ECB)理事会で最もタカ派的なメンバーの一人で、ECBの緩和政策に批判的だった。

10年以上総裁を務め、心機一転を図ることが連銀にとっても自分にとっても好ましいとの結論に至ったと説明した。

独連銀新総裁ナーゲル氏が初めて参加のECB理事会

ワイトマン氏が事実上の抗議辞任をした直後のECB理事会で、タカ派色が強まったのは興味深い。

ラガルドECB総裁が「マダムインフレ」の汚名返上サプライズ

21:45に声明文(プレスリリース)が発表された時点で、ユーロは失望売りにさらされた。
ECBの公式見解は、物価上昇がいずれ緩和するという従来の見通しを踏襲するものだった。

しかし、22:30にラガルド総裁の記者会見が開始されると、インフレに対する危機感を露わにし、年内の利上げ開始も否定しなかった。
今までの態度を180度転換する発言に、世界中が驚嘆し、ドイツの長期金利とユーロが暴騰となった。

【参考】ユーロ相場の今後の見通し(直近の関連記事)

ユーロドル絶好の買い場到来か? 2022/1/28

当日つけた1.11213の安値から5営業日で330pips超の暴騰となった。
押し目買い目標とした1.11250は、ピタリと一致した。
ユーロドル絶好の買い場到来か?FRBのタカ派転換とウクライナ情勢悪化の急落で押し目買い

ECB理事会は、市場の利上げ期待を高めるか? 2022/2/2

声明文では従来のスタンスを踏襲したが、ラガルド総裁の会見中の発言がタカ派に豹変し、利上げ期待を大きく高めることになった。
ECB理事会の声明文はインフレ圧力に関する文言を変え、市場の利上げ期待を高めるか?