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ユーロドル(EUR/USD)が昨年来安値を更新
2021年安値は1.11861
1月26日(水)のFOMC通過後のドル全面高で、ドル買いのいちばんの受け皿になったのがユーロで、ユーロドルは昨年来安値1.11861のラインをストップを巻き込んで一気に下抜き、1.11313の安値をつけた。
原因1 FRBのタカ派転換による米国短期金利上昇
FOMC後のパウエルFRB議長の記者会見のコメントで、FRBが強いタカ派スタンスに転換したことが明確になり、米国債利回り(米国金利)が、短期2年債を中心に急騰した。
原因2 ウクライナ情勢の悪化
同時期に、ウクライナ国境におよそ10万人のロシア軍部隊が集結し緊張感が増していることから、隣接するユーロ圏の地政学的リスクが高まっている。
ユーロはリスクオフで売られる通貨ではない
ウクライナの地政学的リスクによるリスクオフでは売られるが、世界同時株安などのリスクオフで売られるのはポンドや資源国通貨、新興国通貨である。
円やスイスフランと同様にマイナス金利の資金調達通貨
ユーロは、マイナス金利の通貨で資金調達し、高金利国で運用するキャリートレードの対象とされる。
世界的な株安が進行しても下がりにくい
株安リスクオフで円やスイスフランが買われるのと同様、ユーロが買われる傾向が強い。
ECB(欧州中央銀行)のテーパリング、利上げ期待は高まる
ラガルド総裁は否定するが・・・
2月3日(木)に今年初めてのECB理事会が開催され、金融政策が発表になるが、政策金利はもちろんのこと、量的緩和姿勢にも変化がないと想定される。
ラガルドECB総裁は、昨年秋までのパウエルFRB議長と同様、「インフレは一時的であり、量的緩和は継続、利上げの予定は当面なし」とのスタンスを貫いているが、そろそろ方針転換が迫られていると思われる。
今後の経済見通しなどの表現を変更してくれば、金融引き締め開始のサインと受け止められる可能性がある。
ユーロ圏の景気動向はドイツの製造業が大きく影響する
ドイツの名目GDPはユーロ圏全体の約3割を占めているため、ドイツ経済がユーロ圏全体に与える影響は非常に大きい。
特に製造業の指標が重要である。
ドイツで足元のインフレ率が上昇
1月6日(木)発表のドイツ消費者物価指数(CPI)速報値は前年同月比+5.3%(予想+5.1%、前回+5.2%)で、1992年6月以来、約30年ぶりの上昇率となった。
米国のCPIは+7.0%で39年ぶり高水準で金融引き締めフェイズに入るが、ドイツでもインフレは深刻な問題となっている。
ドイツ製造業PMIの好結果
マークイット社が集計する景気指数であり、企業購買担当者にアンケート調査を行い、景況感の改善と悪化の分岐点を50として指数化したものである。
1月24日(月)に発表された製造業PMIは、60.5(予想57.0、前回57.4)の強い数字になった。
サービス業PMIも、オミクロン株による行動制限にも関わらず、52.2(予想48.0、前回48.7)の強い数字になった。
ドイツIFO景況感指数の好結果
約9000社のドイツ企業を対象に、ドイツ経済の現況と今後6カ月の先行きについてアンケート調査を実施し、2015年を100として指数化したものである。
1月25日(火)に発表になったIFO景況感指数は、95.7(予想93.0、前回94.8)の強い数字になった。
シカゴ投機筋のポジションでユーロが買い越しに転じた
シカゴ投機筋 最新IMMポジション 2022/1/18時点
ヘッジファンドなどの短期筋の売買動向は中長期トレンドを推測するのに役立たないしデータ自体がない。
歴史の長いシカゴ投機筋の通貨先物ポジションの傾きは中長期のトレンドを示していると考えられるが、2022年に入って、ユーロが対ドルで買い越しに転じている。
ユーロドルの押し目買いゾーンは?
シカゴ投機筋と同様に、中長期でユーロドルのロングポジションを考えるのであれば、下記のゾーンで押し目買いを推奨する。
日足テクニカル分析(フィボナッチ)
フィボナッチ・エクスパンションのOP(メインの安値目標)1.13064を下抜いたが、XOP(拡張された安値目標)1.09341にまで達するケースは稀である。
1.11250~1.10000の125pipsゾーンがテッパン
- イエローラインの1.11250の節目が当面の下落目途である。
- ウクライナで戦闘が始まったりすれば、レッドラインの1.10000の強力なサポートラインに達する可能性がある。
- イエローラインとレッドラインのあいだ125pipsゾーンが押し目買いの最適レベルであろう。
- しかし、その手前で反発する可能性も十分ありえる。