【WTI原油急落】コストプッシュ型インフレ回避でリスクオンの見通しだがイランの動向に要注意

コストプッシュ型インフレの元凶は、ウクライナ戦争がきっかけの原油高・食料品高です。
WTI原油先物は、開戦半月後の2022年3月8日に129.42ドルの高値をつけました。有事のGOLD買いも連動して、同日に史上最高値を更新し2,070ドルという高値を記録しました。

地政学的リスク、主に戦争が始まると、原油高・GOLD高が連動することが多いですね。しかし、イスラエル・ガザ戦争について、原油高は非常に限定的でした。戦闘がイスラエル・ガザ地区に留まっている限り、原油の生産量に全く影響を与えないからです。この見通しは当初からお知らせした通りです。

しかし、有事のGOLD買いだけは、今回も明確に進行しましたね。ただ、ウクライナのときと比べると騰勢は弱く、既に反落トレンド入りしました。

ともあれ、WTI原油先物は80ドルを明確に割り込み、75.27ドルまで急落しました。これは2023年7月20日以来の安値であり、本日のレギュラーガソリン店頭価格は160.8円まで下がっています。このまま60ドル台までじり安が続けば、本格的な暖房シーズン入りでエネルギー価格の高騰に苦しむことにはならない見通しです。

ただし、以前から指摘している通り、イスラエル・ガザ戦争に、レバノンのヒズボラなどの代理勢力を使いイランが間接的に参戦し、戦局が大きく拡大しないことが絶対条件になります。

2023年のWTI原油先物の相場推移


ローソク足がWTI原油先物、黒い太線がGOLD(XAU/USD)の日足です。
画像かテキストリンクをクリックすると、より詳細なチャートが別画面で開きます。

WTI原油先物が9月28日に94.99ドルの高値をつけたのは、サウジアラビアとロシアが加盟するOPECプラスの減産見通しのショックがピークになった時点です。
その後、米国でのガソリン在庫の増加を嫌気して10月6日(木)には81.56ドルまで急落しました。

イスラエルが宣戦布告したのは翌日の10月7日(金)です。週明けは窓開けで5%程度の高値で寄付きましたが、3日後には窓埋め完了となり、反発の騰勢が高まることはありませんでした。戻り高値は89.83ドルに留まります。

11月7日(火)には、80ドルの節目を明確に下抜き、サポートらしきサポートは見当たらないため、7月以来の60ドル台までの下落も想定されます。

2023年のGOLD(XAU/USD)の相場推移

GOLD(XAU/USD)は、上記のチャートで確認できる通り、イスラエル・ガザ戦争が勃発しても、5月4日に記録した史上最高値2,081ドルには届かず、2,009ドルが戻り高値となりました。
1,810ドルの大きな押し目からの急騰は、特筆すべき「有事のGOLD買い」でしたが、ウクライナ戦争と比べると騰勢はかなり弱かったと言えます。

コストプッシュ型インフレの元凶の原油高が一服しCPIも低下傾向か?

米国消費者物価指数(総合CPI)に原油高の影響が色濃く表れます。WTI原油先物の上昇は9月のピークと比べ、10月は沈静化しています。したがって、11月14日(火)に発表される10月の総合CPI(前年同月比)は前回の+3.7%から下落する可能性が高いと思います。

重要なのは、エネルギーと食品を除いたコアCPIのほうですが、総合CPIの注目度も高いため、大きく低下すれば投資家心理は楽観的に振れてリスクオンに傾きます。
直近の米国長期金利の下落を好感した株高がさらに継続する可能性が高くなるでしょう。

【まとめ】イスラエルとイランの直接対決が回避できれば好調な相場が続く見込み


全ての鍵を握るのは、イスラエルの強硬姿勢がどこまで継続するのかです。ガザ地区での戦闘に留まれば、いずれは終息に向かうでしょう。
しかし、レバノンのヒズボラとの戦闘がエスカレートすると、イランとの直接対決ムードが高まります。金融マーケットが最も恐れるのが、そのシナリオなのです。