こんばんは、上野ひでのりです。
下記の記事で言及した要因で、株価暴落の危機から急反発で回復しました。
【ハト派FOMCで円安危機に神風】長期金利は米国下落・日本上昇でドル円反落
【米国雇用統計】悪い結果が株価底入れのきっかけになるのはなぜか?
ダウ平均株価は10月27日(金)の安値32,327ドルを押し目の底として、今週は5日連続陽線で、FOMC通過後は窓開けで高値を更新していきました。10月17日(火)の戻り高値34,147ドルに対し、11月3日(金)の高値は34,163ドルでした。さすがに強烈なレジスタンスの戻り売りに押され、34,061ドルで週末の大引けとなりました。
1週間前の総悲観状態から、5営業日で1,836ドル(5.7%)も値を戻したのです。「Fear & Greed Index」は、ニュートラルに限りなく近い42の「FEAR」レンジまで回復しています。
イスラエル・ガザ戦争では、イスラエルの信条である「10倍・20倍・100倍返し」の戦闘態勢継続です。米国のブリンケン国務長官が緊急でイスラエルを訪問しましたが、全く聞く耳持たずの対応でした。コントロール不能です。
にも関わらず、地政学的リスクは相場にほとんど影響を与えていません。これは当初から想定されたことで、本メルマガでもお伝えしてきました。ただ、GOLD相場の高止まりだけが有事の兆候を残しています。
イランの動きを最も警戒すべき状況は変わりません。イランが動けば、相場は一気にリスクオフに傾くでしょう。
このメルマガでは、起こり得る最大のリスクを想定し、ヘッジをかけたり、すぐに逃げられる状況を作ったり、ポジションの転換の準備をしたりということに役立てていただきたく、ネガティブな情報をあえて声高にお伝えしています。
オオカミ少年になるつもりも、相場の予想屋になるつもりもありません。最悪のシナリオも想定しておくということだけです。
地政学的リスクに落としどころが見つかり、米国景気のソフトランディングが確認でき、極端な円安からも脱出という状況になれば、リスク資産投資の環境がより安定的になります。
マーケットはお調子者なので、すぐに楽観的になってしまうのですが、想定外のリスクの出現で総悲観状態になるのも早いです。
このまま良い相場環境が続くことを期待しますが、現状考えられるリスクを列挙しますので、今後の動向には注意してくださいね。
目次
イランの代理勢力ヒズボラとの戦線拡大
CNNは11月2日(木)、「シリアのアサド大統領がレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラにロシア製のミサイル防衛システムを提供すると決めた」と報じました。
ウォール・ストリート・ジャーナルは「米政権はロシアの民間軍事会社ワグネルもヒズボラに防空システムを引き渡す可能性があるとみている」との記事を掲載しました。
ハマスを支援するルートは絶たれているのでガザは死に体ですが、イスラエルはハマスの地下トンネルの破壊でせん滅を目指す方針です。このような戦闘を続ける限り、イランを始めとするイスラム勢の怒りは沸騰し、ヒズボラへの支援がさらに活発化するでしょう。
今後の主な戦闘は、ガザからレバノン国境に移っていく可能性が高いと思います。
イスラエルの死者数は1,400人を超えましたが、ほぼ横ばいで推移しています。ヒズボラとの戦闘で死者数が増加すれば、イランとの直接対決の最悪のシナリオが待っています。
イランを巻き込んだ戦局悪化懸念が高まると、さすがに地政学的リスクを強く意識せざるを得ません。
WTI原油高騰、GOLD続騰、基軸通貨のドル高、避難通貨のスイスフラン・日本円高、株価急落のリスクオフに転じるでしょう。
賃金インフレの継続
11月3日(金)に発表になった米国雇用時計の結果です。雇用者数は減少、失業率は上昇(3.8%⇒3.9%)、平均時給は減少(前年比4.2%⇒4.1%)ということで、労働市場の悪化を示しました。
前述の通り、「悪い結果がリスク資産相場にとってポジティブ」ということで、米国長期金利の下落、ドル安、株高のリスクオン反応になりました。
しかし、平均時給については予想を0.1ポイント上回る結果であり、引き続き高止まりの傾向が顕著です。賃金インフレは消費者物価指数(CPI)の高止まりの原因にもなります。FRBによる高金利政策が長引く(Higher for Longer)思惑が広がると、タームプレミアム拡大による米10年債利回りの上昇を招き、ドル高、株安に逆戻りの可能性もあります。
米国債需給悪化・長期金利高が継続
最後の買い手であるFRBが量的引き締め(QT)に伴い、月間600億ドルずつ持ち高を減らしています。バランスシートの縮小はフルサイズで継続される見込みで、終了時期が見えません。
最近は中国が人民元安を食い止めるために米国債を売っているようです。日本の為替介入の原資も米国債売りになり、需給を悪化させる原因です。しかし、しばらく為替介入の必要はなさそうです。
直近の米国債利回り上昇による利払い負担の増加により、米国財務省は2023年11月~2024年1月の四半期について、国債増発を公表しています。
需給面について、依然厳しい環境が続く中、パウエル議長のハト派発言によるタームプレミアム縮小による米国債利回り(長期金利)の下落の効果が、どの程度継続するかに注目です。
長期金利低下により米国景気が再過熱
お調子者のマーケットが楽観的になり過ぎ、これから始まるブラックフライデーからクリスマス商戦も絶好調という流れで、再び米国景気が過熱しインフレ率上昇となる可能性もあります。
しかし、住宅ローンや自動車ローンの金利水準は既に家計を圧迫するに十分です。コロナ渦での過剰貯蓄の枯渇、学生ローンの返済再開、クレジットカードの債務残高が過去最高・支払い延滞率が過去10年で最高という景気後退を示す環境が整ってきました。
したがって、米国景気が再過熱する可能性は低いと思いますが、米国消費の底堅さは異常なので、念のため警戒しておきましょう。