ディナポリ手法において、MACDは強いトレンドを示すオシレーターとして採用されていることをご存知ですか?
弱いトレンドを示すストキャスティクスとセットで使用します。
世の中のMACDのバリエーションは多く統一されていませんが、ディナポリ式のパラメータでセットアップしましょう!
目次
【ディナポリ式】MT4インジケーター徹底解説・セットアップ講座
ディナポリチャートの完成形のイメージと全5回講座の目的は、下記のページをご参照ください。
参考 世界最高峰チャートの完成形【ディナポリ式】MT4インジケーター徹底解説・セットアップ講座 | 全5回まとめ
全5回講座の構成、セットアップするインジケーターは下記の通りです。
- 3本のDMA
- フィボナッチ・リトレースメント
- フィボナッチ・エクスパンション
- MACD(マックディー)
- ストキャスティクス
MACD(マックディー)
MACD(マックディー)とは?
MACDの正式名称は「Moving Average Convergence/Divergence Trading Method」であり、「移動平均線収束拡散法」と訳されます。
対象時間軸の終値をデータとし、短期と長期のEMA = Exponential Moving Average(指数平滑移動平均線)を計算します。
EMAは、対象期間の単純移動平均(SMA)とは異なり、直近のデータの比重を大きくした移動平均線です。
短期と長期のEMAの差分がMACDです。
差分(MACD)が、「収束と拡散を振り子のように繰り返す=トレンドの変化を表す」というオシレーター指標です。
MT4のデフォルト設定チャート
MACDは、ラインチャートかヒストグラムで示されますが、MT4ではヒストグラムがデフォルト設定になっています。
- 一般には、MACDとシグナルの2本ラインで表示される
(ディナポリ手法では、MACDをファストライン、シグナルをスローラインと呼ぶ) - MT4では、MACDはヒストグラムで、シグナルはラインで表示される
- 短期EMA 12
- 長期EMA 26
- シグナル 9
EMAを使用することにより、MACDの優位性が発揮されます。
シグナルラインは、MACDの9期間の単純移動平均線(SMA)で、MACDの後から追いかけてくるような波形になります。
0.00の中間地点を挟んで、MACDが陽転、陰転するタイミングで、トレンド発生の兆候を認識し、シグナルが遅れて同じ方向に転じたら、トレンド発生と見て良いでしょう。
上昇トレンドを例に取ると、MACDがシグナルを上抜けているのがトレンド発生の初期でトレンドが強い状態、MACDがシグナルを下抜けるのがトレンドが減衰していく過程と言えます。
有名なオシレーター指標のRSIのように、下限0~上限100%の相対表示ではないので、ヒストグラムの長さがトレンドの強さを表すと考えて良いでしょう。
トレンドが弱くなると、ヒストグラムが徐々に短くなって、シグナルを下回っていきます。
トレンドの方向と強さを読み取ることを目的とするならば、ラインチャートではなく、ヒストグラムのほうが圧倒的に分かりやすいと思います。
一般のMACDチャートでは、MACDとシグナルの2本のラインチャートに追加して、「MACDヒストグラム」を表示する仕様のものがあります。
この「MACDヒストグラム」は、MACDとシグナルの差分を示しますが、必須のインジケーターではないと思います。
MT4のヒストグラムはMACDそのものであり、「MACDヒストグラム」とは全く別物なので注意してください。
ジョー・ディナポリの考え方
ディナポリチャートの考案者であるジョー・ディナポリは、MACDについて下記のように述べています。
下記の書籍のP136~137からの引用です。
参考 ディナポリの秘数 フィボナッチ売買法トレーダーズショップ - 日本最大の投資家向け専門店
トレーダーのなかには、市場の値動きの行き過ぎの指標として、あるいはもっとひどいことに、ダイバージェンスのツールとしてMACD(移動平均収束拡散法)を活用している。第5章からお分かりのように、これはうまく考案された極めて有効なトレンドを示すオシレーターであって、買われ過ぎ・売られ過ぎを表すツールではない。
ただし、買われ過ぎ・売られ過ぎの指標として、MACDのスローラインとファストライン間の距離を利用した革新的なテクニック(ジェイク・バーンスタイン著『ショートターム・トレーディング・イン・フューチャーズ』)がある。ただ私はこれを目的とするのであれば、もっといい方法があると考えている。
ディナポリ手法では、もう一つのオシレーター「ディナポリ・ストキャスティクス」(セットアップ講座Vol.5)がありますが、彼は下記のように使用法を定義しています。
- MACDは強いトレンドを示す指標
- ストキャスティクスは弱いトレンドを示す指標
上昇トレンドでのエントリーを考えるとき、セットアップ講座Vol.2で紹介したディナポリ式フィボナッチ・リトレースメントで31.8%の押し目を待つことになりますが、2種類のオシレーターのシグナルの関係にも着目して、エントリー判断の補強材料としています。
MACDが強いトレンド状態にあり買いシグナルを出し続けているとき、上下動が激しいストキャスティクスが売りシグナルを出すときがありますが、そのタイミングが押し目買いのチャンスになるという考え方です。
MACD単体ではシグナルを認識しても売買判断をせず、ストキャスティクスの逆行で押し目買い、戻り売りのタイミングを探すということになります。
MACDは大口のトレーダーが作る長く強いトレンドで、ストキャスティクスは相場が少しでも逆行すると早々に利食いや損切りをする腰の引けたトレーダーの売買による弱いトレンドを示すインジケーターであると捉えます。
ディナポリは、75%を超えたら買われ過ぎ、25%を下回ったら売られ過ぎというオシレーター本来の機能を利用したり、ダイバージェンス(※)を認識したりという使用法を全否定しているところがユニークです。
MACDの「D=Divergence」は拡散という意味ですが、もともとは類似していたものが、徐々に分かれて別のものになっていくさまを表します。
実際のレートとオシレーター指標との関係性において、それぞれ直近の複数の高値(安値)同士の関係に着目します。
上昇トレンドを例にとると、実際のレートが直近の高値を更新しているのに、オシレーター指標は同レベルあるいは逆に下落しているような「相違」が発生することが、よくあります。
これがダイバージェンス現象であり、上昇トレンドのモメンタムが減少している、上昇のエネルギーが減衰していると判断し、さらなる高値更新、上昇トレンドの継続性に疑問符がつくことになります。
彼は、さらに、一般には完璧なオシレータ系指標と考えられるRSIについても、下記のように述べています。
同書P137からの引用です。
RSI(相対力指数)がその答えではない。RSIは、『ワイルダーのテクニカル分析入門』(パンローリング)の著者、ウエルズ・ワイルダーによって考案されたもので、普遍的かつ市場を越えての適用が可能で、買われ過ぎ・売られ過ぎの分析としてはストキャスティックスやMACDよりもずっとましである。ワイルダーがその目標に到達したのは確かだが、もっと高度なトレーダーには何か物足りなかった。RSIは0~100で標準化されており、ストキャスティックスと同様に、相場の強気の動きを押しつぶしてしまうのだ。オシレーターが95で大幅な上昇が続いている場合、上値の余地は4.9999ポイントしかないことになる。(以下略)
上野ひでのりの見解は少し異なる
彼が指摘するように、強烈な上昇トレンドのとき、RSIが100%の天井に張り付いた状態から、しばらく動かないような現象は、オシレーター指標の弱点と言えます。
しかしながら、MT4で1分足から月足までの9周期のマルチタイムフレームで、全ての周期にそれぞれ短期・中期・長期の3本のパラメータでRSIを設置するとします。
そうすれば、どんなに強烈な上昇トレンドが長く継続したとしても、9周期全部で短期・中期・長期の3本全てが天井に張り付いている状態は、絶対にあり得ないので、本来のオシレーターとしての使用法を全否定するのは、妥当ではないと、私は思います。
また、オシレーター指標のダイバージェンスは、副次的な分析として有効なことも多いです。
強烈な上昇トレンドが減衰する過程で、9周期のうちどこかで、ダイバージェンスは確実に現れるからです。
確かに、MACDやストキャスティクスは、オシレーターとして最適ではありませんが、RSIは使用に耐えると思います。
という訳で、私は、3本のRCI(RSIではないが、わりと似ている指標)を9周期全てに設置しています。
MACDは表示していますが、ストキャスティクスは表示していません。
詳細は、次回のセットアップ講座Vol.5で述べます。
最後に、ジョー・ディナポリの意見を尊重した私の見解をまとめます。
- チャート分析をする場合、いちばん重要なのは無加工の現状のレートそのものである
- 現状のレートと移動平均線(3本のDMA)との関係性において、トレンドの強さを認識できる
- MACDとストキャスティクスはトレンド判断に役立つオシレーター指標である
- RSIは、オシレーター指標の本来の使い方(買われ過ぎ・売られ過ぎの判断)で十分に役に立つ
- しかし、天井、底に達したからといって、トレンドが反転すると考えてはいけない
- マルチタイムフレームでRSIのダイバージェンスを観察すれば、トレンドの強さや継続性の判断に役立つ
【結論】オシレーター指標をトレンド転換の判断に使ってはいけない
オシレーター系指標が示すレベルは、マルチタイムで観察して、トレンドの強さの判断に資するものとすることが重要です。
ジョー・ディナポリがトレンド反転のシグナルとして利用している「ダブルレポ」という現象があります。
詳細は下記の記事を参照してください。
【ディナポリ中長期シグナル】ウォッシュ&リンスとダブルレポ
MT4のデフォルトMACDとディナポリMACDの違い
上のチャートがMT4のデフォルト、下のチャートがディナポリ式になります。
それぞれのパラメータ設定は下記の通りです。
- MT4の標準パラメータ設定
短期EMA:12 長期EMA:26 シグナル:9 - ディナポリ式のパラメータ設定
短期EMA:8 長期EMA:17 シグナル:9
短期EMA:8.9396 長期EMA:17.5185 シグナル:9.0503
実は、これが正式なパラメータです。
しかし、MT4の設定において、長期EMAの設定に小数点以下の入力ができない仕様になっているため、全て切り捨てで利用しています。
また、シグナルの移動平均について、DEMA(二重指数移動平均)というかなり特殊な平滑化を行っているのですが、それはMT4の設定の選択肢にないため、デフォルトの単純移動平均を使用しています。
「神は細部に宿る」という格言がありますが、MACDに関しては、そこまでこだわっても見た目の違いがほとんど認識できないため、整数値と単純移動平均で十分役に立つと考えています。
MACDはトレンドを発見するための指標ですから、短期のパラメータ設定にするということは、より早くトレンドを発見することができるということになります。
ディナポリ式のほうに矢印(↑↓)を表示していますが、MACD陰転・陽転のタイミングが標準と比べて早いことが分かります。
その分、当然のことダマシも多くなりますが、トレンド発生の兆候を早く認識することを重視しています。
ダマシを避けるためには、シグナルが陰転・陽転するタイミングまで待つという運用方法で良いでしょう。
さらに、MT4標準のチャートは、黒地の画面に映えないので、ヒストグラムを太めのライムグリーンに、ラインチャートを太めの赤い実線に変更しています。
MT4でのパラメータ変更方法
たった1分で設定完了する5ステップ
MT4の画面の左上にあるプルダウンメニューから「MACD」というインジケーターを挿入します。
「挿入」>「インディケータ」>「オシレーター」>「MACD」
「パラメーター」タブがデフォルトで開きます。
赤枠で囲った部分のみ、数字を変更してくだださい。
「OK」をクリックせずに、隣のタブに移動します。
「メイン」とは、「MACD」のことですが、LimeGreenの2段階目の太い線(ヒストグラム)に変更します。
「シグナル」は、実線で2段階目の太い線に変更します。
「OK」をクリックせずに、隣のタブに移動します。
MACDの陽転・陰転を分かりやすくするために、レベル「0」のみ表示します。
「追加」ボタンをクリックするだけで、レベル「0」が自動で追加されます。
表示を確認したら、「OK」で全てのタブの設定を確定します。
あっという間にディナポリMACDの設定が完了しました。
パラメータの確認や修正が必要な場合
MACDのパラメータ設定画面を閉じてしまった場合、下記の方法で開き、パラメータの確認や修正を行います。
参考 パラメータの修正が必要な場合MT4【ディナポリチャート】セットアップ講座Vol.1 | 3本のDMA 「Moving Average」の例ですが、サブウィンドウの「MACD」に読み替えてください。
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参考 【無料】全65ページのFXトレードマニュアル上野ひでのりプロFXディナポリチャートでは、サブウインドウに置くオシレーターにも緻密な配慮が行き届いており、MACDとストキャスティクスの組み合わせでトレンド発生と押し目(戻り)の判断を行います。
上野ひでのり