今回のヘッドラインについて、個人投資家である私たちが中東戦争に対し無関心であって良いという意味では全くありません。単に、現在の相場では材料視されていないという事実を指摘しています。
戦況の急激な悪化リスクは警戒した上で、足元では楽観シナリオが支配的であるという意味です。
2023年10月19日8:00時点でのレギュラーガソリン実売価格は160.6円まで低下しました。直近1か月で最低、7月以来の安値です。
参考:e燃費
政府の補助金が効いていることもありますが、イスラエル戦争下でのWTI原油について、先週末の暴騰分が反映されていないからです。16日(月)以降の値動きが懸念されましたが、上昇のモメンタムは急速に低下しています。中東情勢に変化がなければ、じり安から急落となる可能性が高いと見ています。
WTI原油が100ドルを超える極端なリスクオフにならなければ、概ね順調に決算発表をこなしている米国株が暴落するリスクは低いでしょう。ただし、11月17日(金)の暫定予算の期限切れによって政府機関一部閉鎖となれば、相場の大きな重しとなりそうです。残り1か月で米議会が完全合意に至る可能性は低く、徐々に中東情勢よりも重みを増してくると思います。
今回は、米議会の予算協議が再びメインテーマになる前の中東情勢の相場への影響を掘り下げます。
結論としては、相場への影響力は徐々に減衰していくと思います。現状でも相場に大きな影響を与えていないからです。
目次
地政学的リスクに関する相場の反応パターン
イスラエル戦争に対する感応度に関して、下記の5つの相場をチェックすると良いと思います。中東情勢が大幅に悪化するリスクオフで、どのような反応になるのかも記載しました。
- WTI原油先物 上昇
- 米国10年債利回り 下落
- ドル相場(ドルインデックス) 上昇
- 円相場(円インデックス) 上昇
- GOLD相場 上昇
- WTI原油は87~88ドル台に高止まりでボラティリティ減少
- 安全資産である米国10年債が売られて利回り上昇
- 米国債利回り上昇によりドルインデックス上昇
- 安全資産の円買いは一時的で、円安トレンドが継続
- ドル相場と逆相関にあるGOLD相場が上昇継続
ドル円の今後の値動きについては、下記の記事を参照してください。
きな臭い【10/31の日銀会合】岸田首相所信表明演説に向け神田財務官が暴走気味
WTI原油と米国10年債利回り
日足のローソク足がWTI原油先物、黒い太線が米国10年債利回りです。
画像かテキストリンクをクリックすると、より詳細なチャートが別画面で開きます。
前述のように、地政学的リスクによりリスクオフになれば、WTI原油は暴騰、米国10年債利回りは急落となります。米国債利回りが急落という現象は、安全資産の代表選手である米国債が買われる(リスクを避けた資金が移動する)ことで示現します。
しかし、現状では安全資産である米国債が売られ、利回りが上昇中です。特に10年債利回りは、13年ぶりの年初来高値を再更新し、4.956%まで急騰しています。
一方、WTI原油先物は需給改善による急落からの戻りが弱く、9月28日の高値94.99ドルにも届かず、89.83ドルの戻り高値から失速し、ボラティリティは低下、じり安地合いに収束しつつあります。今後、中東情勢の悪化がなければ急落リスクもあります。
という訳で、この2つの金融商品の対照的な状況から、イスラエル戦争の関心が急速低下していることは明らかです。
GOLDとドル相場との関係
日足のローソク足がGOLD(XAU/USD)、黒い太線がドルインデックス(DXY)です。
画像かテキストリンクをクリックすると、より詳細なチャートが別画面で開きます。
GOLDのトレードの仕組みについては、下記の記事をご参照ください。
FXと全く同じ仕組み【GOLDのCFDトレードのすすめ】ドル円より分かりやすい
理解の妨げになる可能性があるので、上記記事にはあえて書いていないことがあります。
それは、「GOLDと米ドルは逆相関する」ということです(例外として、地政学的リスクが高まると、どちらも上昇する)。米ドル主体で考えれば、米国債利回りが上昇して米ドルが全面高になり、GOLDは下落するという関係です。
上記チャートにおいても、ローソク足(GOLD)と黒い太線(ドルインデックス)の値動きが真逆になっていることが、明らかですね。
上記のチャートのドルインデックス(DXY)は、米ドルの相対的な強さを示す指標ですが、相手通貨の構成比率について1位のユーロが57.6%、2位の円が13.6%、以下ポンド、カナダドル、スウェーデンクローナ、スイスフランとなり、オセアニア通貨や新興国通貨は含まれていません。
ユーロドルの重みが60%近くあるので、ユーロドルが上昇すれば、GOLDも上昇するという相関性も高いと言えます。
前の章で、「米国10年債利回りが13年ぶりの高値を更新した」と述べましたが、ドルインデックスも上昇という関係になります。確かにその通りの値動きですが、ドルインデックスは、まだ年初来高値更新には至っていません。
ここで注目していただきたいのが、イスラエル戦争が始まってから、一貫してGOLDの価格が上昇していることです。2月の年初来安値1804ドルに対して、10月6日(金)に1810ドルの安値をつけたので、「ダブルボトムからの急反発」とテクニカル分析で説明は可能です。
加えて、年初来安値に面合わせしたタイミングと同期してハマスの攻撃が開始されたことにより、「有事のGOLD買い」も手伝って上昇が続いているのです。
【まとめ】GOLDの戻り売りチャンスが継続中
上記の【GOLDのCFDトレードのすすめ】記事において、1,900~1,950ドル手前が戻り売りターゲットと述べています。今ちょうど、そのレベルで揉み合っています。
米国10年債利回りが年初来高値をつけるということは、有事の米国債買いには全くなっていない訳で、有事のGOLD買いだけ継続することは、まずあり得ません。
テクニカル的に反発しやすい地合いだったことが主因だと考えますので、戻り売りの最大のチャンスと言えるでしょう。相場では、このような理論的に説明がつかない不整合が起こることが珍しくありません。理論値に収まるまでの期間のサヤを抜く「サヤ取り」と考えれば良いでしょう。
GOLDのCFDトレードに興味が出てきたあなたは、下記のページで詳細を確認してください。
【上野ひでのりCFDトレーディングアカデミー】