昨日配信のメルマガを書き上げた後に、日銀植田総裁からタカ派発言が出て、驚いた海外勢が円の買い戻しを加速させました。
12月19日(火)の日銀金融政策決定会合に向けて、財務省と示し合わせた円安対策、口先介入に近いものだと思います。
黒田前総裁とは違い、植田総裁には日銀の責務である「物価の安定」につき、輸入物価の上昇によるコストプッシュ型インフレを抑え込むために、円安を食い止めたいという強い思いがあります。
会合の2週間ほど前からタカ派なコメントを並べて、円の買い戻しを誘う手法を今回も使ってきました。しかし、あまりにも効き過ぎたと思います。
会合当日には失望で、再び円売り加速が確定するのが確実です。着地点として147~148円程度に落ち着けば大成功と言えるでしょう。
目次
2020年3月以来、3年9か月ぶりのフラッシュクラッシュ
今回は、モデル系ヘッジファンドのアルゴリズム売買によるフラッシュクラッシュ(高値144.318⇒安値141.626/値幅269.2pips)まで発生し、当日高値147.332⇒安値141.626の5円70銭(570.6pips)もの値幅となりました。
2022年10月21日(金)~24日(月)の為替介入では、高値151.946⇒安値145.534で6円41銭(641.2pips)の押し下げでした。これに次ぐドル円大暴落となりました。
フラッシュクラッシュの値幅としては、コロナ禍発生時の2020年3月9日(月)の高値104.598⇒安値101.592/値幅300.6pips以来でした。
年末から来年「一段とチャレンジング」
12月7日(木)の参議院財政金融委員会で、植田日銀総裁は今後の政策運営への抱負を問われ「チャレンジングな状況が続いているが、年末から来年にかけ一段とチャレンジングになるというようにも思っている」と述べました。その上で、情報管理を徹底しつつ、丁寧な説明、適切な政策運営に努めていくとしました。
この発言には伏線があります。
前日の6日(水)に日銀氷見野副総裁が、大分市内で開いた金融経済懇談会で「日銀が金融正常化に踏み切った際の経済への悪影響は比較的少ない」との見方を示し、「状況をよく見極めて出口のタイミングや進め方を適切に判断する」と述べました。
実質的には植田日銀総裁の口先介入
植田総裁は英語に堪能なので、「Challenging」という語感が欧米人に強い衝撃を与えることを計算の上での発言であろうと思います。
そして、最後の仕上げが、「チャレンジング」発言後の植田日銀総裁と岸田首相との会談です。早期のマイナス金利解除の権威付け効果は満点となりました。
外貨準備高を一切吐き出すことなく、神田財務官と連携したと思われる口先介入だけで、6円近くのドル円の水準調整に成功したのですから、なかなかの策士ですね。
【まとめ】実態は何も変わっていない。会合後は急激な円安の可能性高い
昨日のメルマガで書いた通りです。
マイナス金利の解除は、早くとも2024年3月19日(火)の会合での決定になりそうです。
あるいは、2024年1月に再び150円に迫る急激な円安が進行した場合には、1月23日(火)の会合で「経済・物価情勢の展望(基本的見解)」レポートの公開と同時のマイナス金利解除が行われる可能性もあります。
ともあれ、12月19日(火)の会合でのマイナス金利の解除は99%あり得ないと思われるため、今回も円安イベントになると想定しています。