11月1日(水)のFOMC終了後の記者会見でのパウエルFRB議長は、あまりにもハト派過ぎて、お調子者のマーケットは勘違いしてしまいました。
ブルームバーグ
パウエルFRB議長、利上げ終了の可能性を示唆-米金融市場は歓迎
こんな記事が出るくらいですからね。「パウエルさんの詰めの甘さが出た」と指摘した通りです。
本来は、こうするべきだったと思います。
【11日1日(水)FOMC利上げ確率0%】パウエル議長のタカ派発言でリスクオフ進行か?
しかし、結果はこうなり
【ハト派FOMCで円安危機に神風】長期金利は米国下落・日本上昇でドル円反落
マーケットの特性として、こんな楽観的ムードが広がり
【マーケットはお調子者】パウエル議長発言で利上げ停止確信+雇用統計の悪化でリスクオン
週明けには、ここまで早期利下げを織り込むに至りました。
【FedWatch Tool】2024年5月1日FOMC会合から利下げ開始を見込む
今後は、11月14日(火)発表の消費者物価指数(CPI)の数字を見極めて、データ次第のスタンスでどういう発言が出てくるか注目しましょう。
目次
FEDウォッチツールの利下げ開始時期は1会合分後ろ倒しに
11月9日(木)のIMFの討論会で、パウエル議長は 「十分な引き締めを行ったと確信していない」「適切となれば、躊躇なく追加利上げを行う」と発言を行いました。
もともと自分で蒔いた種なのですが、マーケットがあまりにも楽観的で調子に乗り過ぎているのを戒めた形です。
現状の見通しでは、2024年6月12日会合から利下げを織り込む確率が64.59%と過半数を超えてきます。前回の記事で掲載したデータでは、5月1日会合での利下げ確率が53.70%でした。
たった1会合分後ずれしただけで、相変わらず楽観的な見通しに変わりありません。
当日の株価は調整安に転じましたが、戻り高値圏での保ち合いのレンジを抜けません。要するにマーケットは、パウエル議長のタカ派発言にあまり衝撃を受けていないということです。
米国10年債利回り(長期金利)も、4.5~4.6%台の保ち合いを上抜けることはありませんでした。
FOMC後のハト派インパクトが強すぎたので、少々のタカ派発言では、マーケットが悲観に傾くには材料不足です。効果は非常に限定的です。
このまま順調に米国景気がソフトランディングに向かえば結果良ければ全て良しです。しかし、金融引き締めの最後の仕上げのいちばん重要な時期にマーケットの警戒感を解いてしまったのは、明確な失敗だったと思います。
米国の緩やかな景気後退入りのデータは揃いつつある
住宅ローンや自動車ローンの金利水準は既に家計を圧迫するに十分なレベルで引き締め効果を発揮しています。
コロナ渦での過剰貯蓄の枯渇、学生ローンの返済再開、クレジットカードの債務残高が過去最高・支払い延滞率が過去10年で最高という景気後退を示すデータも揃いつつあります。
この状態で、14日(火)の消費者物価指数(CPI)が低下し、12月1日(金)の米国雇用統計がさらなる悪化ということになれば、マーケットが期待している通りになるでしょう。ただ、あまり楽観的になり過ぎると、十分にクールダウンできていない状態で、再度景気が過熱する可能性もあり、要注意です。
パウエル議長は日和見的な発言を厳に慎むべし
11月1日(水)のFOMC結果発表時には、米国株は暴落の危険性をはらむテクニカル的に非常に危ない状況でした。
それでもタカ派発言で楽観論を封じ込め、米国経済のソフトランディングを見届けるまでは鬼に徹するスタンスが本来は必要でした。
もともとハト派の議長ですから、急落中の株価の下支えになるリップサービスがつい出てしまった訳ですね。その後の規律の弛んだ値動きに、議長は「しまった」と思ったでしょうが、後の祭りです。
【まとめ】米国経済ソフトランディングの可能性は高いが気は抜けない
CPIが驚くほど上昇することはないでしょうが、前回から高止まりの状況であれば、マーケットは再び警戒するでしょう。
また、米国雇用時計が予想を上回る好結果になってしまうなど、主要データが悪材料になる可能性も否定できません。
上記のような結果にはならない可能性のほうが高いのですが、念のため注意しておきましょう。
再び「君子豹変する」ことになるかもしれませんので。