米国雇用統計が株価暴落のトリガー引くか?政府閉鎖回避でもタイトロープ続く

米連邦議会では10月1日(日)から始まった新会計年度の予算案を巡って協議が難航していましたが、9月30日(土)夜に上下院でつなぎ予算案が可決され、土壇場で米政府閉鎖が回避されました。しかしながら、合意は45日間の予算執行を認める内容にすぎず、財政運営をめぐる政治的な対立が根本的に解消されたわけではありません。

仮に米政府機関が一部閉鎖されていたとすれば、民間請負会社の売上損失は1日19億ドル(約2,800億円)とか、実質GDP(年率)を1週間あたり0.2%ずつ押し下げるなどの試算もありました。2018年の35日間閉鎖の再来ともなれば、米国経済に大打撃を与えるところでした。
2日(月)に株価大暴落のシナリオも想定していました。それだけ危うい瀬戸際、タイトロープな状況に追い込まれていることを再確認しておきましょう。

米政策金利は2001年以来22年ぶりの高水準が続く


現状の米政策金利は現在5.25-5.50%ですが、チャート上では中間地点の5.33%と表示されています。
9月20日(水)のFOMCの結果発表により、高金利が長期継続される見通しが濃厚となり、米国債利回り上昇とドル独歩高を招きました。これがきっかけで米国株などリスク資産マーケットに大きな下落圧力がかかっています。

利上げフェイズの完了すなわちターミナルレートは5.50-5.75%が想定され、11月1日のFOMCで0.25%の利上げが実行される可能性が高いと思われます。
その後10か月程度はターミナルレートの水準が続き、ようやく利下げフェイズに入るという想定です(9月20日発表のFOMC経済見通しによる)。

ウォール街の現役トレーダーは、これほどの高金利が継続するという厳しい環境を経験したことがなく、米国株を中心とするリスク資産をこのまま買い続けて良いのか、立ち止まって考え込んでいるところです。

投資家心理が急速に悪化している




1番目のチャートは、S&P500指数の日足とVIX(恐怖指数)の推移です。
VIXはS&P500指数のボラティリティを指数化したものですが、さほど危険な水準にある訳ではありません。しかし、株価のほうはヘッド&ショルダーズのネックラインをいったん割り込んでおり、9月29日(金)の期末のリバランスで買い戻されたものの、いつ急落してもおかしくないというテクニカル分析結果となります。

2番目のチャートはCNNの「Fear&Greed Index」ですが、近年の投資家心理分析ではVIXより精度が高いと重用されています。市場のモメンタム・株価の強さ・株価の値幅・プットオプション・コールオプションなどの平均からの偏差など、7つの異なる指標に基づいた総合判断です。
ここで、「28」という数字が示されていますが、前日は「29」、前週は「34」ということで急速に悪化しており、「EXTREME FEAR」に極めて近い「FEAR」であり、テクニカル分析と合わせて考えれば、急落の可能性が極めて高くなっています

2008年のグレート・リセッション入り前に酷似している

米銀大手JPモルガンのストラテジストが、先週下記のように指摘しました。

「現在、株式市場や米景気について言われていることは、グレート・リセッション(2008年の金融危機をきっかけとする景気後退)前に言われていたことと薄気味悪いほど似ている」
「2007年、危機に突入しようとしていた頃に、投資家たちはまさに今と同じようなことを議論していた。FRBの利上げ停止、個人消費の回復力、ソフトランディング、雇用市場の強さなどだ」

FRBを始め市場関係者が米国経済のソフトランディングを想定している(願っている)中での不吉な予言です。
投資家心理が急激に悪化、株価は重要なサポートを割り込んでいる状況下で政府閉鎖が重なれば、暴落の可能性が非常に高かったのですが、最悪のシナリオだけは回避されました。

今週は、6日(金)21:30に予定通り米国雇用統計が発表されることになりました。急激な雇用市場の悪化が確認されると、利上げの見送り期待でリスクオンに傾くより、米国経済のハードランディング懸念でリスクオフが加速する可能性が高いと想定しています。

今後しばらくは、シートベルトをしっかり締め、リスクコントロールを徹底し、どんな暴落がやってきても耐えられるような対策が必要になるでしょう。

私自身は長期投資用の株式とビットコイン以外は全て現金化し、為替(ドル円・ユーロドル)・GOLD・WTI原油・米国株指数などを対象にCFDの証拠金取引で、リスク資産の売り回転をイメージして準備中です。

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