下記の記事で、神田財務官が「為替の激しい下落時、国は利上げか為替介入で対抗」と記者団に語ったことをお知らせしました。
きな臭い【10/31日銀会合】岸田首相所信表明演説に向け神田財務官が暴走気味
10月23日(月)の岸田首相の所信表明演説における「物価高などに関する総合経済対策」の発表に向けて、地ならし発言であろうと述べました。
支持率回復のため、所得税減税まで踏み込もうと方針転換したのに、円安ドル高の急激な進行となれば台無しだからです。
実際に日銀が政策金利(マイナス0.1%)をゼロに戻して利上げを行うのは、2024年春闘における大幅な賃上げを確認してからになるはずです。
長期金利のほうは、いわゆる「イールドカーブコントロール(YCC)」、日本国債利回り目標の操作を行い誘導します。2023年7月28日の日銀金融政策決定会合で、10年債利回りの上限について、従来の+0.5%を「目途」と変更し、+1.0%程度まで許容する政策に転換しました。
指値オペ(日銀による10年債の買い取り)の水準を+0.5%から+1.0%に変更することで実現します。
上記決定以降、10年債利回り(長期金利)は徐々に上昇し、10月19日(木)の0.864%が年初来高値となっています。近い将来に1.0%に張り付くことは確実と言えます。
長期金利が上昇すると、企業への長期融資における最優遇金利(長期プライムレート)および住宅ローンの固定金利も上昇します。みずほ銀行の長期プライムレートは、3か月連続の引き上げで、10月11日(水)から年1.50%です。住宅ローン(期間31~35年)については年1.76%~となっています。
神田財務官が述べた利上げは、政策金利のマイナス金利解除についてですが、円安を防止する効果はもちろんあります。その反面、国の国債利払い予算が膨らみ、企業への短期融資の最優遇金利(短期プライムレート)および住宅ローン変動金利も上昇します。
目次
国は利払い負担の上昇に耐えられるのか?
日本経済新聞 2023年8月21日
財務省は2024年度予算案の概算要求で、国債の元利払いの想定金利を1.5%とする調整に入った。23年度予算から0.4ポイント引き上げる。日銀の政策修正を受けて長期金利が上昇しているのを踏まえた。概算要求の総額は110兆円を超える見通しだ。
以前述べた通り、2022年の税収は71.1兆円です。3年連続で過去最高を更新中ですが、2023年も歴史的な物価高による消費税収増が貢献し、さらに増加する見込みです。
米国の政策金利は5.25-5.50%なので相当な負担になりますが、日本の財政的にはさほど気にするほどではありません。十分に耐えられるレベルです。
国民のマイホームの夢は実現できるのか?
日本全体の世帯年収の中央値は437万円ですが、新築物件なら3,000万円程度(平均年収倍率6.8倍)まで借りられます。
しかし、今後長期金利が上昇すれば「フラット35」の固定金利も上昇し、物件価格は安く抑えるしかありません。
米国10年債利回りは5.0%に達しました。日本10年債利回りは1.0%上限です。日本の住宅ローン固定金利は史上最低レベルから上昇中です。2024年にYCCを完全廃止となれば、市場原理で長期金利が決まるので、今後ますます厳しくなるでしょう。
もっと厳しいのは変動金利で住宅を購入済の家計
住宅金融支援機構が行っている「民間住宅ローン利用者の実態調査(2021年4月調査)」によると、変動金利を選んだ人は全体の68.1%、対して、全期間固定型は11.2%、 残りの20.7%が固定期間選択型(固定2年、3年、5年など)となっています。
2024年の日銀の利上げ、ゼロ金利解除に伴い、住宅ローン変動金利も徐々に上昇します。マイナス金利の恩恵を受けてきた家計が急速に締め付けられるのは不可避の状況です。
円安物価高に苦しみ、日銀の利上げを待望するのは諸刃の剣
日銀の異次元金融緩和およびマイナス金利のお蔭で、良い住宅を安く買えた家計が多い訳です。中小企業も最低レベルの長短プライムレートが基準となり低金利の融資を受けられました。
しかし、2024年以降は、利払い負担が増加し、お金が借りにくくなります。また借りたお金の利息が増えて返済の負担が重くなります。それでも日銀の利上げを望みますか?日銀が緩和を継続しつつ、円安インフレも沈静化するという都合の良い解決策はないのです。
それでも日銀の金融政策正常化は不可避
金融政策正常化が遅れると、さらなる円安が加速し、日本の国富の流出が止まらなくなります。
資産家の立場から考えたとき、メガバンクの定期預金の金利が0.002%しかない状況はやるせないですよね。100万円を1年間預けても、わずか20円の利息しか受け取れない国に住み続けたいと思うでしょうか?
全ての解決策は賃上げだが…
サントリーHDは、2024年にベースアップを含めて月収ベースで7%程度賃上げ(2023年と同等)する方針を固めたとのことです。
2024年春闘において、政府からのプレッシャーと優遇税制もあり、相当の賃上げが想定されます。しかし恩恵を受けるのは大企業の従業員だけです。中小企業は長期金利の上昇でますます厳しくなりますので、賃上げ余力は限定的です。
労働者の約70%は中小企業に雇用されており、給料はたいして上がらず、物価高が続き、住宅ローンの負担まで重くなるという状況を想定して、早めに対策を打ちたいところです。社会保険料負担はさらに増加し、近い将来の増税も不可避です。
【まとめ】投資家マインドを育てて乗り切ろう!
変動金利主体で住宅を購入したにも関わらず、円安物価高に耐えかねて日銀の利上げを望むというのは、自らの首を絞めてくれというようなものです。
あなたは正確に理解していると思いますが、周りに金融リテラシーが低い方がいらっしゃれば、教えてあげてください。
毎月の限られた可処分所得を消費、貯蓄だけにまわすのではなく、グローバルスタンダードな投資で増やすという「投資家マインド」が必須の時代となりました。
いつでも好きな時間に、欲しいだけのキャッシュをグローバルマーケットから引き出すスキルを習得できる。
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