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いったん懸念後退⇒緊迫を繰り返す可能性が高い
2月15日(火)のロシア軍一部撤収で一時的に懸念後退
ロシアは、改めて交渉のテーブルにつき、話し合いで解決していこうという姿勢を明確にするために、ロシア軍の一部撤収をアピールした。
対話継続でも成果が出ない場合、プーチンはどうするか?
NATO側がウクライナの加盟を拒否する法的保証を行う可能性は非常に低いため、戦争の危機を完全に払しょくすることはできない。
例えロシア経済の危機を招くとしても、ウクライナ制圧を優先する可能性は残る。
対ロシア経済制裁が本当に抑止力になるか?
ロシアの銀行をSWIFTから排除する案は含まれない
出典:ロイター 2022年2月12日
欧米の対ロ制裁、銀行のSWIFT排除は含まれず=関係筋
欧米はロシアがウクライナを侵攻した場合、ロシアの主要銀行を対象とした制裁措置の策定作業を進めているが、国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの銀行を排除する措置は含まれていないことが関係筋の話で分かった。
制裁措置の策定作業に詳しい複数の関係筋によると、ハイテク機器や兵器向けのロシア製部品に対する貿易規制のほか、特定のロシアのオリガルヒ(新興財閥)に対する制裁措置などが検討されている。
このほか米当局者によると、VTB銀行やズベルバンクなどの大手行を標的とする制裁措置が導入される可能性もある。
ただ複数の関係筋は、世界の銀行間決済システムを運営するSWIFTからロシアの銀行を排除する案については、欧州諸国の反対を受け検討されていないとしている。
欧州諸国が反対するのは、ロシアの銀行を国際金融決済市場から締め出すことは、カウンターパートの欧州諸国の銀行にも大きな打撃になるからだと思われる。
経済制裁の具体的内容が明らかでない
ロシアの銀行をSWIFTから排除というのが最も具体的かつ強力な経済制裁であるが、その他の経済制裁の具体的内容は明らかではない。
G7財務相は14日(月)に共同声明で、ロシアがウクライナに侵攻した場合には「ロシア経済に甚大かつ即時の結果をもたらす経済・金融制裁を共同で科す用意がある」と警告した。
ロシア側は具体的内容を想定しているはずであるが、その不利益を被っても、ウクライナ侵攻の利益が大きければ、決行するのではないか。
欧州側から「ノルドストリーム2」は稼働せずと警告
欧州は天然ガスの供給の4割をロシアに依存しており、エネルギーの確保の生殺与奪の権をロシアに握られている。
ウクライナを経由しない独ロのバルト海底パイプライン「ノルドストリーム2」は既に完成しており、稼働しなければ、ロシアにも痛手になるが、本当は欧州のほうが困るのではないか。
エネルギー大国である米国、英国とは違い、ロシア経済と密接にならざるを得ない弱みが欧州にはある。
ジョージア侵攻、クリミア併合の過去
2008年ジョージア(グルジア)侵攻
北京五輪の開会式の日に始まった5日間戦争で、ロシアの勝利。
ジョージア領内の南オセチアとアブハジアが共和制独立国であることが一部承認された。
2014年クリミア併合
ウクライナに親西側政権が誕生したことに反発し、国際的にはウクライナの領土とみなされているクリミア半島(クリミア共和国とセヴァストポリ連邦市)にロシア軍が侵攻し、ほぼ無血で領土に加えることに成功した。
ウクライナをNATOに渡すのだけは絶対に認めない
どんなに国際的な非難や経済制裁を受けようと、ロシアにとってウクライナが安全保障上の最重要拠点であることから、絶対に譲ることはできない。
しかし、ウクライナの憲法には、NATO加盟を目指す旨明記されており、ゼレンスキー大統領はロシア軍侵攻の危機を迎えても、加盟を目指すスタンスを崩していない。
ロシアは、NATO側がウクライナの加盟を拒否する法的保証を求めている訳だが、筋違いとしてNATO側が抵抗するのも道理と言える。
バイデン大統領の脅しは全く効いていない
プーチン大統領と電話で会談を行ったバイデン大統領は「ロシアが侵攻した場合、厳しい制裁を科す」と警告したが、ほとんど効果はないようだ。
米国はウクライナ侵攻で損をしない
米国製の武器の需要が激増するし、欧州向けの天然ガスも高く売れ、経済的利益は大きい。
ロシア軍が首都キエフを、想定通り侵攻から数日以内に占領しても、ゲリラ戦が長引くようであれば、ロシア経済が疲弊し、中国ロシア連合が弱体化する。
ロシアのウクライナ侵攻はある前提でトレードを行うべき
開戦の時点でリスク資産相場は暴落・円高ドル高ユーロ安
FRBの金融引き締めフェイズ入りで、パンデミックの2年間継続した過剰流動性相場が終焉することになり、資産バブル崩壊の危機の最中にある。
「ロシアがウクライナに侵攻開始」のヘッドライン1本で、リスク資産相場は暴落となることは確実なので、戦争が起こらない前提でトレード戦略を組み立てるのはギャンブルだと考える。
しかし、米国にとって対岸の火事の戦争は経済的利益をもたらす可能性が高く、軍需やエネルギー関連のセクターでは押し目買いが有効になるだろう。
ハイテク・グロースなどは引き続き売り圧力が続く見込みで、資産バブル崩壊は継続するが、戦争による特需が支えになる部分はあるかもしれない。
為替においては、ユーロ暴落、円高とドル高が同時進行となりそうである。
したがって、クロス円は総崩れ、特にユーロ円が暴落となりそうだ。
ECBの年内利上げ観測でユーロの押し目は拾いたいが…
少なくとも、ウクライナ情勢が完全に解決とまではいかなくても、沈静化するまでは、オーバーナイトのユーロ買いは封印したい。
しばらくは戻り売り方針継続で、短期の売り回転で臨みたい。
- 14日(月)「ロシアのラブロフ外相がプーチン大統領に西側との交渉継続を提案した」
- 15日(火)「ロシア軍の一部はベラルーシでの軍事演習を終了し基地に帰還する」
こうした反応は一時的で、絶好の戻り売りチャンスとなるが、売りポジションをキープしていた場合には一気の踏み上げとなるので、売りにもリスクがあることを肝に銘じておきたい。
15日(火)には、その後、露プーチン大統領と独ショルツ首相の会談も行われ、今後の協議継続で一致し、当面の危機が去った思惑からユーロドル急騰となった。
しかし、材料出尽くしなら、再びユーロドルは売られるだろう。