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米国長期金利上昇でも、ドル円の上値が重い原因とは?
世界中の長期金利が急騰している
長期金利は、各国の10年債利回りのことをいう。
2022年2月8日正午時点の直近高値は下記の通り。
- 米国 1.939%
- 英国 1.437%
- ドイツ 0.250%
- フランス 0.705%
- イタリア 1.901%
- スペイン 1.141%
- スイス 0.290%
- 豪州 2.125%
- NZ 2.708%
- カナダ 1.905%
もちろん、NZ、英国、カナダなど、すでに金融引き締め局面に入った各国の金利も上昇中である。
日本の10年債利回りも例外ではない
日本の長期金利は、0.213%まで上昇している。
2016年3月以来、6年ぶりの高水準まで一気に上昇した。
米日金利格差が拡大しなければドル円は上昇しない
もともと日々の日本の長期金利の変動は小さかった。
したがって、米国長期金利に連れ高という直近のトレンドが強まる以前には、米国長期金利の動向がダイレクトにドル円相場の変動要因になっていた。
しかし、足元の相場では、日本の長期金利が急上昇となっているので、その格差の変化を変数として、ドル円相場の方向性が決まることになる。
より正確には、名目金利ではなく期待インフレ率を加味した実質金利での格差が変数になるが、期待インフレ率は名目金利ほど日々大きく変動しないので、名目金利の比較だけで十分であろう。
足元では円高が進行中
4日(金)の米国雇用統計が予想を大きく上回る好結果であったが、ドル円の高値は115.428止まりとなり、7日(月)には115円の大台を割り込み114.913の安値をつけた。
年初来高値116.354には程遠く、FOMCのタカ派な結果を受けた1月28日の高値115.685にも届いていないのは、日本の長期金利が急騰しているから、円高がドル高を相殺しているからである。
日銀の許容変動幅上限の0.25%が目前!
日銀はどんな介入を行うか?
万が一、上限の0.25%を超えても放置することになれば、金利上昇を許容したということで、早期利上げ観測が高まることになるため、必ず介入は行うはずだ。
指値オペが有力
日銀は、上限の0.25%に達する前に、指値オペを行うという観測が有力になっている。
具体的には、10年債利回りが0.22~0.23%のターゲットに入った時点で、10年債を0.25%で買う指値オペを通知するというような手法である。
その他には、臨時オペなどの手法もあるが、いずれにしても、変動幅の上限内にコントロールするはずである。
今後は極端な円安圧力は緩和する見込み
米国10年債利回りも足元の高値目途に迫る
米国10年債利回りも足元の高値目途の2.0%に迫ってきたため、米日金利差がこれ以上、極端に拡大することはないはずで、円安圧力は緩和する見込みである。
WTI原油先物が100ドルに迫っているが、円安圧力がかからなくなった
昨年10月以降のドル円は、WTI原油先物の暴騰によるスタグフレーション懸念の円安で急騰したが、足元の相場では、原油高で顕著な円安傾向を示さなくなった。
ドル円の年初来高値116.354の更新は厳しい見通し
あくまでも足元の相場の環境的には、116.000円の節目での戻り売り圧力が強く、年初来高値116.354を更新する可能性は低いと思われる。
上昇方向へのリスクは、10日(木)の米国消費者物価指数(CPI)の前年同月比予想+7.3%からの上振れで期待できるが、ドル円の上値は限定的であると考える。